俺の直感は、けっこう当たる。兄貴が死んだときもそうだった。 周りの大人も家族も気づかなかった、兄貴の微妙な変化を俺だけが感じ取っていた。 だけど、俺の直感はうまく言葉にできない。 なんでそう思うのか、自分でもうまく説明できないからだ。 今も、ひとりだけ気になるやつがいる。 悠真や澪は観察力は凄いけど、本当の感情を見せられたとき、その奥まで見るのは苦手だ。 でもな——本当の感情を見せてるからって、言ってることが本当とは限らない。 今、その名前を出したら、きっとふたりを混乱させる。だから言わない。 俺にできるのは、言語化できる違和感があれば、それを伝えることだけだ。 澪がそれを分析して、悠真がそこから導き出してくれる。 俺はふたりを信じてる。 だから今日も、いつも通りでいい。 ふたりが玄関に姿を見せたのを見て、俺は自然と笑って声をかけた。「おーい、おはよー」*** 木曜日、朝の校門をくぐると、風が制服の裾を揺らした。 昇降口の前で立ち止まっていたのは、澪だった。 互いに声をかけるでもなく、ただ目が合った瞬間、軽くうなずき合う。いつもの、無言の挨拶。 澪は俺の少し右側を歩きながら、何も言わずに昇降口へと向かっていく。話題を探すでもなく、沈黙を気まずいとも思わない。そんな関係が、気づけば自然になっていた。──そのときだった。「……っ」 不意に脇腹を小突かれ、思わず小さく息を呑んで澪を見ると、彼女は視線を逸らしたまま、何事もなかったような顔をしていた。まっすぐ前を向いて、無言のまま歩き続けている。ほんの少しだけ、口元が動いたように見えた気もするが……気のせいかもしれない。 こういうときの澪は、決まって何も言わない。昔からそうだった。何か不満があると、理由も説明もせずにこうしてくる。怒っているわけではないが、機嫌がいいとも言えない。「察しろ」と言わんばかりの、無言の抗議。たが、それ以上何か言ってくる様子もないから、俺も黙っていた。 彼女との距離感は、いつもこんなふうに少しだけ難しい。 靴箱で上履きに履き替えていると、後ろから声がかかった。「おーい、おはよー」 振り向くと、相変わらず朝からテンションが高く。眩しいくらいの笑顔で陸が手を振っていた。「おいーす……って、あれ? なんか空気、重
Last Updated : 2026-06-04 Read more