再び沈黙が落ち、誰もが、言葉を探しあぐねていた。 「……嘘、……優衣がそんなこと……。あんなに真剣に、事件を追ってるように見えたのに……」 澪がかすれるように呟く。 「追ってたように見せてたんだ、最初からな」 そう言うと、俺は如月先輩に視線を向ける。 「如月先輩。さきほど――あのメモの文字は『美月の字じゃない』って言っていましたよね?」 その言葉に、澪と陸もはっとしたように如月先輩へ視線を向けた。 如月先輩は、少し戸惑ったように瞬きを繰り返しながら、小さくうなずいた。 「……あ、うん。そう。たぶん、違うと思う。似てるけど……私が見てきた美月の文字とは、やっぱり違う気がする」 その声には、自信というより、感情の整理が追いつかないまま、それでも口にしようとする真剣さがあった。 「特に『し』とか『る』の終わり方。美月の字って、ちょっとだけ左に流れる癖があったの。でも……あのメモには、それがない」 如月先輩は、どこか戸惑いを残した声でそう言った。その目元には迷いが浮かんでいる。それでも、彼女は目を逸らさずに続けた。 「……はっきり言い切れる自信はない。でも……あたしがずっと隣で見てきたから、なんとなく感じるの。違う、って。あの文字は、美月のじゃない」 彼女はカバンの中から、丁寧に一冊の台本を取り出す。それは、以前読ませてもらった、演劇部でやる予定だった――『サロメ』の台本だった。 「あたし、手直しするときに何度も読み返したから……。間違ってたらごめん。でも、そう思った」 俺は差し出された台本と、暗号の文字を並べて見比べるが、違いはすぐにはわからなかった。 「……全然、わかんねぇ……」 陸が頭をかきながら呟き、澪も無言でじっと見比べていたが、やがてため息を吐いた。 「こうして比べて、ようやく違うかもって感じる程度だね。言われなきゃ、気づかない」 如月先輩は小さく息を呑み、少しだけ声を落として言う。 「……普通はわかんないと思う。文字としては、すごく似てるし。でも……ほんの少しだけ、違う。さっき言ったこともそうだし、線の揺れ方とか、筆圧の抜け方とかも……そういうの。多分、ずっとそばにいたあたしだから、気づけたんだと思う。誰にでも気づけるものじゃない」 彼女の声は弱々しいが、言葉の芯には確かさがあった。戸惑いながら
Last Updated : 2026-06-14 Read more