颯side璃子は、何を言われて何を騙されていたのか?そして電話の主は誰なのか。ぐるぐると疑問が頭の中を渦巻いていた。俺は、璃子と玲央がお互いを想い合っていて、その上で家系の事情で俺との結婚を言い渡されているのなら、俺から婚約破棄を伝えてもいいと思っていた。もし会社にいられなくなったら、その時はその時だ。自分の気持ちに誠実に生きることで、璃子や玲央も報われる。そして、佐奈の人生にもう一度入り込みたいと思っていた。しかし、璃子が知った「騙されていた事実」というのが、結婚に関わることなら話が変わってくる。俺が婚約破棄しても、誰も報われない可能性だって出てくるのだ。この璃子との結婚は、いつの間にか複雑な闇を抱えてしまっていた。頭の中で考えるだけでなく、今回こそはちゃんと璃子に寄り添って話を聞こうと決めて、リビングのソファで待っていたが、璃子は帰ってこない。時計は二十三時半を回っていて、いつもならとっくに帰ってきている時間だった。二時間前に送ったメールも既読にすらなっていなかった。「璃子は一体どこで誰と会っているんだ?まさか俺や玲央のほかにも他の男性がいて、そいつが本命だったとでも言うのか?」スマホで時間を潰しているが、嫌な予感ばかりが頭の中に浮かんでは消えていく。他の男の存在を疑う不安や、気持ちが分からずに悶々とした苛立ち。佐奈と付き合っていた頃には、決して感じたこと
Dernière mise à jour : 2025-11-17 Read More