Tous les chapitres de : Chapitre 61 - Chapitre 70

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61.音信不通

颯side璃子は、何を言われて何を騙されていたのか?そして電話の主は誰なのか。ぐるぐると疑問が頭の中を渦巻いていた。俺は、璃子と玲央がお互いを想い合っていて、その上で家系の事情で俺との結婚を言い渡されているのなら、俺から婚約破棄を伝えてもいいと思っていた。もし会社にいられなくなったら、その時はその時だ。自分の気持ちに誠実に生きることで、璃子や玲央も報われる。そして、佐奈の人生にもう一度入り込みたいと思っていた。しかし、璃子が知った「騙されていた事実」というのが、結婚に関わることなら話が変わってくる。俺が婚約破棄しても、誰も報われない可能性だって出てくるのだ。この璃子との結婚は、いつの間にか複雑な闇を抱えてしまっていた。頭の中で考えるだけでなく、今回こそはちゃんと璃子に寄り添って話を聞こうと決めて、リビングのソファで待っていたが、璃子は帰ってこない。時計は二十三時半を回っていて、いつもならとっくに帰ってきている時間だった。二時間前に送ったメールも既読にすらなっていなかった。「璃子は一体どこで誰と会っているんだ?まさか俺や玲央のほかにも他の男性がいて、そいつが本命だったとでも言うのか?」スマホで時間を潰しているが、嫌な予感ばかりが頭の中に浮かんでは消えていく。他の男の存在を疑う不安や、気持ちが分からずに悶々とした苛立ち。佐奈と付き合っていた頃には、決して感じたこと
last updateDernière mise à jour : 2025-11-17
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62.朝帰り

颯side朝になってベッドサイドに置いているスマホのアラームが鳴り響き、止めると新着メッセージの通知があった。身体を起こして、通知を開くと朝五時二十分に璃子からメールが入っていた。璃子:連絡くれたのにごめんなさい。時間が遅くなったので実家に泊まりました。朝、着替えるために今から帰ります。「実家に泊まった?友人と会って、そのあと実家に行っていたと言うのか?都内で会っていたなら実家よりここの方が近いだろう?」璃子の言うこと全てがどこか嘘っぽくて信用できない。第一、実家に泊まるなら分かった時点で連絡をすればいい。こんな朝起きてから送ってくるなんて確信犯としか思えなかった。(璃子は誰かと一夜を過ごしたとでも言うのか?それで着替えがないから、家に戻ってくる?散々、俺に自分は婚約者とか言っておきながら朝帰りって何なんだよ、ふざけるな)俺の怒りは頂点に達していたが、冷静さを保つ努力をした。璃子を問い詰めるためには、感情的になってはいけない。自分の支度をしながらも、璃子が帰ってきたらしっかり話を聞こうと静かに待っていた。時刻は六時四十分になっても璃子は帰宅せず、メッセージを送った時間に出たとするならばいくらなんでも遅すぎる。(メッセージから一時間二十分も経っているんだぞ?俺に会いたく
last updateDernière mise à jour : 2025-11-18
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64.主導権

颯side「会話を聞いていた?盗み聞きしていたの?」「そうじゃない。璃子の声が大きいだけだ。」璃子は、俺の言葉に激しく息を吐いた。全てがバレたことへの怒りよりも秘密が露呈した焦りの方が勝っているようだった。「はあ……聞かれていたのか。昨日、電話していたのは母親よ。私の実の母。友人に会ったというのも嘘。本当か確かめたくて仕事が終わって実家に行ったの」投げやりな口調だが、今まで一緒にいた中で一番璃子が本当のことを話しているという実感を持てた瞬間だった。俺の目の前には、甘ったるい声で媚びを売るような以前の璃子の姿はなく、髪を無造作にかき分けて苛立った表情の一人の女性が座っていた。「母親って、嘘とか騙されたって穏やかな会話じゃないけれど、何があったんだ?」そう尋ねたが、璃子は口を閉ざし、それ以上語ろうとしない。そのうち、唇を尖らせてムスッとした表情をすると静かに涙が頬を伝った。その涙は、計算されたものではない、純粋な混乱と苦悩の涙だと感じさせる。「私もまだ分からない。お母さんが本当のことを言っているのか、それとも言わされているのか分からないの」「だから、それは何についてなんだ?そこを話してもらえないと俺は何も分からない」
last updateDernière mise à jour : 2025-11-19
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65.再出発

佐奈side私は二回目の転職をして、この春から新しいオフィスで働くことになった。この会社には長く勤める予定で、初日の朝、メイクをいつもより丁寧に行い、服もしっかりとアイロンをかけて乱れがないか念入りにチェックした。「髪型も服装もよし、大丈夫。問題ない。」(初日の第一印象が大切。長く働く場所になるからこそ、社内に敵を作るようなことだけは避けなくちゃ……)鏡の前で自己紹介と笑顔の練習をしてから、鞄を持って玄関へ向かうとリビングから出てきた父と鉢合わせた。「ああ、佐奈。支度できたか?」「うん、大丈夫。もう家を出るところだよ」「そうか、気を付けて。あとで会社でな」「はい、分かりました。今日からよろしくお願いします、木村社長―――――」父に挨拶すると、小さく手を挙げて微笑んでから、迎えに来た運転手の車に乗って会社へと向かっていった。そう、次の会社は父が経営する会社で、私は次期後継者として入社するのだ。入社して数年後には役職がつき、女性初の幹部として将来は経営に携わっていく予定だった。二社目の会社は、経営管理に携わる時に知識を学び直すことと、他社のやり方を学ぶためにも父が戦略的に送り込ん
last updateDernière mise à jour : 2025-11-19
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66.後継者

佐奈side「佐奈、入社おめでとう」シャンパングラスを持って傾けたので、私も少し傾けて乾杯の仕草をした。入社の挨拶が終わった週末、蓮とディナーに出掛けていた。蓮とは、変わらず連絡を取っていて、今回の入社のことも話をしている。自分の素性を隠している中で、家族以外で近況を知る唯一の人物だった。そんな蓮も、この春より役職が上がり部長職へと昇格し、親の会社を継ぐために一つ階段を上ったのだ。蓮の話は、将来の自分の仕事と重ね合わせている部分もあり、希望と気づきを教えてくれる。誰にでも話せることではないからこそ、蓮の存在が特別になっていた。「どう?緊張した?」「ありがとう。緊張したよ。やっぱり初めての場所って家を出る時はワクワクするんだけど、着くと異様に緊張するね」「今回は今までの就職とはまた違うもんね。でも、佐奈なら大丈夫だよ、困ったことがあったら相談に乗るから何でも話して」「ありがとう。蓮がいてくれて頼もしい」「俺は、仕事以外でも佐奈に頼って欲しいと思っているけど?」蓮のストレートな言葉が甘くて全身をくすぐってくる。蓮との未来を考え始めて、今日その返事をしようと思っていたのに、何だか先
last updateDernière mise à jour : 2025-11-20
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69.実感

颯sideこの日、俺は璃子と経営者が集まるパーティーへと参加していた。玲央が参加することは事前に本人から聞いており、この前の騒ぎがトラウマになっていただけに、少し安心することが出来た。あれから社長に言われてパーティーや会合にも参加する機会が増えて、顔馴染みが出来て最初の頃に比べるとだいぶ緊張せずに過ごせるようになっている。「璃子――――」玲央が、璃子に気がついて声を掛けると、璃子は俺を気にしているのか玲央に対して素っ気ない態度を取っている。しかし、先週二人がこっそり会っていることを玲央から聞いて知っていた。璃子が俺に隠れて玲央と会っていることは、玲央の報告で常に把握している。「そう言えば、前にパーティーで会った女性に挨拶されたよ。ほら、璃子と同じ会社だった木村佐奈さん。」玲央の言葉に、璃子の素っ気ない態度が一変した。「え、今日もここに来ているの?」「うん、さっき会ったんだ」玲央の声が俺のところまで聞こえてきて、佐奈の話題に身体が硬直した。佐奈がこの場に来ていると分かったら、居ても立ってもいられなかった。二人が話をしているのを遮るように俺は璃子に声を掛けた。
last updateDernière mise à jour : 2025-11-21
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