颯side「本郷さん、私が璃子と婚約した経緯を話しますので、本郷さんと璃子のことを教えてもらえませんか?お互いに聞いている話にズレがあると思うんです。」「そうですね……。分かりました。」俺たちは、璃子だけの話しか聞いてこなかった。そのことで、璃子は常に被害者で、周囲の人間は悪役にされている節があることに、本郷玲央と話をしてようやく気づくことができたのだった。玲央は目の前にあるウイスキーのロックグラスを見つめながら、遠い目をして静かに語りだした。その声には、怒りよりも深く傷つけられた諦念が混ざっているようだった。「私の父と璃子の母親が大学時代の友人だということは以前、話をしましたよね。二人は同じサークルで、卒業してから十年以上経った今も交流があるそうです。それで、僕たちが大学に入学した年の春、お互いの親も交えて、初めて璃子に会いました―――――」小さく微笑んだ玲央は、初めて会ったときの事を思い出しているようで、璃子への真っ直ぐな気持ちが痛いほどに伝わってくる。それは、俺が佐奈に抱いていた気持ちと似た、純粋な愛情だった。「璃子の美人で清楚な雰囲気に見惚れていましたが、話をするとよく笑って、感動して泣いて、感情豊かな内面にも惹かれていって、大学一年の夏に告白をしたんです。だけど、断られて二年くらい知り合いのままでした。たまに連絡が来て迎えに行ったり、ご飯を食べたりいい雰囲気になるけれど、そのうち新しい彼氏が出来て、僕は次の彼氏が出
Terakhir Diperbarui : 2025-11-06 Baca selengkapnya