Tous les chapitres de : Chapitre 131 - Chapitre 140

142

131.父との再会

美月sideアメリカでの生活が半年を過ぎた頃、父が、現地の化学メーカーとの視察を兼ねてサンフランシスコへやって来た。空港のロビーに現れた父は、私の顔を見るなり少し驚いた表情をしていた。「美月……元気そうで良かった。そんな顔で笑うようになったんだな」サンフランシスコの眩しい太陽と世羅の温かい眼差しが、私の背筋を真っ直ぐに伸ばしてくれているのかもしれない。その日の夜、世羅も交えて三人で食事をすると、父は、慣れない手つきで現地の料理を口にしながらポツリポツリと語り始めた。「美月、遠藤さんとの婚約の事、本当に済まなかった……。遠藤陸の横暴さを感じていながらも、会社の存続のために、私はお前にあんな不当な婚約をお願いしてしまった。全くもってひどい父親だった」父は人目を憚らず涙を流して私に謝罪した。その震える肩を見て、私はそっと父の手に自分の手を重ねた。「お父さん、もういいの。あの経験があったから、私は柳さんと出会うことができたし、会社のことも自分の将来についても真剣に考えることができた。だからもう自分を責めるのはやめて」「頭を上げてください。僕もあの時、美月さんに出会えたことに感謝をしているんです。あのことがなければ僕たちは出逢うことすらなかった」
last updateDernière mise à jour : 2025-12-25
Read More

132.遠藤陸のその後

美月side父は、しばらくして少し落ち着くと母や会社のことなど近況を教えてくれた。母も自分の時間を楽しむと社交ダンスの教室に通い始めたそうだ。「え?ダンス?お母さんが?お母さんが運動するイメージ全くないんだけれど」「ああ、私もだ。母さんは吹奏楽とか楽器は好きだったが、ダンスをやるとはな。でも楽しいみたいで練習の日は心なしかウキウキしているよ」会社の方も、世羅が紹介してきてくれた企業といい関係を築けているそうで新たな主要取引先になったそうだ。「あとな、遠藤製薬の方から取引再開のお願いをされたんだ。考えた末に引き受けることにしたよ」「え…?遠藤製薬?取引なんてして大丈夫なの?」私が即座に反論するように言うと、父は小さく微笑んでから話を続けた。「ああ、もう大丈夫だ。遠藤だが……強引な拡大路線と独裁的な経営が社内で反発を招いたそうで内部告発されたそうだ。そこから不祥事が発覚し、彼は全ての役職を解任されて第一線を退いたよ。名古屋からも離れて今は遠藤製薬とは完全に距離を置いたそうだ。弁護士に契約書を作成してもらって従来より好条件にして締結したよ。」私がいなくなった後も、陸は今までの態度を改めることはせずに自分の地位や権力で思う通りに人を支
last updateDernière mise à jour : 2025-12-26
Read More

133.求めていた答え

美月side二年後―――――「美月、聞いてくれ。ついに、ついにずっと研究し続けていたことの答えが分かったんだ!」夕方、柔らかな日差しが差し込むオーガニック食材が並ぶスーパーマーケット。瑞々しいケールや真っ赤なトマトをカゴに入れていると、世羅から電話がかかってきた。受話器越しでも伝わるほどの高揚した声。彼がこれほどまでに感情を爆発させるのは珍しかった。「え、本当に? ずっと探し続けてきた研究の答えが解明されたのね!」「そうだ。ああ、なんて今日は素晴らしい日なんだ」アメリカに来て三年。世羅は日本では決して見せることのなかった一面を、私の前でさらけ出してくれるようになった。研究が思うように進まずに眉間に皺を寄せて考え込む姿も、美味しいベーグルを見つけて子供のように喜ぶ姿も。かつての彼が纏っていた「柳グループの御曹司」という堅苦しい鎧は、この広大なアメリカの地で少しずつ剥がれ落ち一人の情熱的な人間として今ここにいる。「今日は、家でお祝いをしましょう。何が食べたい? ちょうど買い物に来ていたの。何でも作るわ」「ありがとう。でも、ここまでやってこれたのは美月のおかげでもあるんだ。だからお祝いするなら、僕だけでなく美月もだよ。たまには外で食べよう。とびっきりオシャレをしてきてくれ」
last updateDernière mise à jour : 2025-12-26
Read More

134.プロポーズ

美月side日本での研究成果を携えて渡米した世羅は、内容を評価され、今では大規模な研究プロジェクトの責任者としてチームを指揮している。経営にも携わりながら、自らも現場で手を動かす彼の姿は、多くの研究員たちから尊敬を集めていた。シャンパンが運ばれてきてグラスを傾けて乾杯する。「今日、長年探し求めていた結果が出て本当に嬉しいよ。……美月、研究の成果が出たら、君に話そうと思っていたことがあるんだ」メインディッシュが下げられた後、世羅が改まった表情で口を開いた。彼の瞳には、かつてないほどの真剣な光が宿っている。「話そうと思っていたこと?」世羅は、ジャケットのポケットから小さな箱を取り出した。高級感のある赤い手のひらサイズのベルベットの箱。その存在を目にした瞬間、私の鼓動は一気に速まりドクドクと音が鳴り始めた。「三年前、あのまま日本にいたら、僕はきっと自分の希望を諦めて今も日本で生活していたと思う。でも、美月が自分自身の人生を切り拓こうとする姿を見て、僕も勇気をもらったんだ。君がいなかったら、この成果はあり得なかった」世羅は箱をゆっくりと開いた。「美月、これからも僕の側にいてほしい。……僕と結婚してくれないか?」
last updateDernière mise à jour : 2025-12-27
Read More

135.プロポーズ②

美月side「これからは研究の成果をまとめて論文にして、世界へと発信をしたいと思う」 プロポーズの余韻が残る中、世羅は少し照れくさそうに未来を語った。 「世羅のやってきたことを世界中の人たちが知る機会ができるのね。世界中の人たちが『柳世羅』の名前を知る日が来るかもしれないってこと?」 「ああ、でもそんな簡単なことじゃないよ。世界中と言っても一部の学者のみだ。それに評価されなければ、他の膨大な論文の中に埋もれていってしまう」 「難しいことは分からないけれど、三年間、あなたがどれだけ熱意を注いできたか一番近くで見てきたもの。きっと世界も分かってくれるわ。世羅の研究が認められて、世界中で名前の知られる研究者になって、将来の柳グループを牽引していく姿が、私にははっきりと見えるの」 「美月は大袈裟だよ。……だけど、そうなれるように頑張るね」 「大袈裟でも何でもないわ。私は世羅のことを信じているし、その努力を知っているから言えるのよ」 私の言葉に世羅はふっと表情を和らげ、テーブルの上で私の手をそっと包み込んだ。 「美月がそうやっていつも信じてくれるから僕は前を向けるんだ。美月は、自らが困難を切り拓いて
last updateDernière mise à jour : 2025-12-27
Read More

138.世界のSera Yanagi

美月side「きゃー! やったよ、未来! パパよ! パパがノーベル賞を獲ったのよ! パパの研究が、世界中の人たちに認められたんだよ!!」私は思わず未来を高く抱き上げ、涙で視界が滲むのをそのままにした。 歓喜に沸く会場でマイクの前に立った世羅は、一呼吸おいてカメラの向こうにいる私たちを見据えたように小さく微笑んでから、力強い声でスピーチを始めた。「この賞を頂けたことは、私個人の力ではなく、多くの人の支えがあってのことです。未知の領域に挑み続けたチーム全員の情熱が認められた結果でもあります。挫折を味わいながらも、諦めずに支えてくれた研究メンバー、そして……僕自身の可能性を信じて隣にいてくれた最愛の妻に、心からの感謝を捧げます」世羅の声が、少しだけ潤んでいるように聞こえた。 「彼女がいなければ、私は自分の信念を貫き通すことはできなかったでしょう。美月、君が僕の光だった。心から、ありがとう」この日、世羅の存在は瞬く間に世界中へと知れ渡ることとなった。 初めて会った日、胸ポケットに入っていた『Yanagi』の彫刻入りのボールペンと、彼が静かに自分の名前を名乗ったことで、私は彼が「柳世羅」だと知ることができた。あの時は、少し陰のある佇まいで巨大なグループの御曹司だなんて思いもしなかった。
last updateDernière mise à jour : 2025-12-29
Read More

139.10年後

美月side月日は流れ、未来は十歳になった――――――。世羅は相変わらず研究も行っているが、最近では経営にも本格的に携わるようになっていった。自分の研究結果を世の中に広めるまでが自分の使命だと話し、企業との製品化に向けた話にも積極的に取り組んでいる。一方で、世界各国にいる柳グループの他の研究者たちが研究だけに専念できるような環境の構築した。かつて世羅が広告塔としてスポンサー探しや講演会に追われることは、人脈こそ広がるが研究の成果には直結しない。広告や営業の専門部門を強化し、各自が自分の強みを最大限に生かせる組織へと柳グループを内側から変革させていったのだ。「ただいまー、マム!」未来が元気よく玄関を開けて学校から帰ってきた。おやつを食べて宿題を終わらせたら遊びに行きたくてウズウズしている様子がこちらにも伝わってくる。アメリカで生まれ育った未来は、日本語と英語を器用に使い分け、学校ではリーダーシップを発揮する活発で明るく真っ直ぐな少女に育った。最近はチアリーディングを習い始めて、地域のイベントでも練習の成果を披露している。「ママ! パパの論文がね、また新しい教科書に載っていたよ。写真の下に小さくパパの名前が書いてあったんだけど、先生が授業中に私のパパだって紹介したら、みんなに『未来のパパ、かっこいい!』って言われたの! すっごく嬉しかったな。パパって本当に凄い人な
last updateDernière mise à jour : 2025-12-30
Read More
Dernier
1
...
101112131415
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status