All Chapters of 夜明けと共に忘れるはずの恋だった: Chapter 111 - Chapter 120

142 Chapters

111.陸の想い~身勝手な純愛~

陸side「美月のやつ、いい気になりやがって……俺の気持ちがなんで分からない」俺は、会場のテラスに出て、夜景を見下ろしながら憤りを抑えきれずにいた。グラスに残ったウイスキーを一気に飲み干す。二年ぶりに見た美月は、相変わらず綺麗だった。それどころか、以前よりもどこか洗練され輝きを増しているようにも見えた。名古屋に戻ってきて、またいつでも会えることが出来ると思い声を掛けると、美月は怪訝そうな顔をしていた。『もうあなたの都合のいい玩具ではない』睨みつけるような冷たい瞳で俺の元を去って行く美月は、まるで別人のようで俺は大きな衝撃を受けた。婚約破棄する直前は揉めたが、それまでの美月は俺に歯向かったりすることのない従順な女だったからだ。「そもそも都合のいい玩具って何だよ。俺がどれだけ美月のために尽くしてきたと思っているんだ」―――――初めて美月を見た時、そのあまりの美しさに俺は一気に心を奪われた。大学のミスコンでグランプリを取ったこともある美月は、誰もが振り返る美人で、美月の父親と話をしている際にお茶を出してくれてニコリと微笑んだ姿を見て、その日から美月の笑顔をしばらく忘れられなかった。あんなにも心臓が高鳴ったのは初めてだった。思い切って婚約して欲しい
last updateLast Updated : 2025-12-15
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112.陸の想い~身勝手な純愛2~

陸side婚約者には金で話をつけて納得してもらった上で婚約をした。返事が遅かったことで取引量を多少操作したことはあったが、それは美月が幸せになるためのルートを選択するために、俺が背中を押すつもりでやったまでのことだ。(今は一時的に悲しむこともあるかもしれないが、俺の側にいることで美月は幸せになれる。そのために多少の犠牲は仕方のないことだ。あんな庶民的な男は美月にふさわしくない。金を渡せば納得するなんて本当に美月のことを思っているとは考えられないな)初めての食事では、名古屋で一番高級なホテルのレストランでディナーをして、その後スイートルームに宿泊をした。あの日、たった一夜のデートで二十万円以上のお金を支払ったのだ。『俺といればこんな豪華な食事や綺麗な景色を見せてやることが出来る』それは、俺なりの美月に示した誠意だ。その後も、美月を理想の女性にするために、彼女の全てを指導し管理した。品位ある所作や行動を身に着けるためにマナー講師を雇い、エステや歩き方などの所作など徹底的に叩き込んだ。全ては、彼女の価値を高めるための俺なりの『愛の形』で、俺は美月といる間、誠意と愛を与えてきた。それにも関わらず美月は、俺の優しさも真意も理解せず、ただ『支配』されたとしか思っていない。今、柳という胡散臭い御曹司に俺の美月が汚されようとしている。美月は、俺の愛を分かっていない。それに柳の
last updateLast Updated : 2025-12-15
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113.陸の想い~身勝手な純愛3~

陸side俺は、マナーや所作を覚えさせるだけでなく様々な仕事も美月にやらせた。与えた業務を覚えることにより、美月は美貌と品位だけでなく、知性も兼ね備えたより魅力的な女性になると信じていた。そのための教育プログラムとして様々な課題を言い渡した。(今は無茶な要求だと思い反感を買うことになってもそれでいい。数年後には俺の考えがわかり、美月はきっと感謝するだろう)時が経ち、美月が俺の意図に気がついて感謝をして、勢いよく抱き着いて愛を囁いてくる姿を想像していた。幸せな未来が待っているはずだった。しかしその想像は、突然、俺たちの前に現れた柳世羅という一人の男のせいで関係は大きく崩れていくこととなった。美月は、柳に興味を持ち心酔するようになっていた。パーティーでも俺の目をかいくぐって柳に話しかけに行き、その後も俺に内緒で柳が単独で出る講演会にチケットを払ってまで行こうとしていた。(俺という婚約者がいるのに、なんで美月は俺を見ない!? 相手は俺を侮辱した男だぞ?なんでこんなに美月のことを思っているのに、俺の想いが通じないんだ)美月の心が離れていくことに俺は傷心し、裏切られたような怒りを感じていた。(俺の常日頃から与えている愛を、なぜ美月は『贈り物』として受け取れないんだ。ここまで俺が育ててきてやったのに
last updateLast Updated : 2025-12-16
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114.陸の想い~身勝手な純愛4~

陸side俺が声をかけると一瞬怪訝そうな顔をしたが、周りの目もあるのですぐに笑顔を作りにこやかに対応をした。さすがは柳と関係があっただけのことはある。公の場での立ち振る舞いは心得ているようだ。「ありがとうございます。しかし今、他の方とお話をしている最中ですので、終わりましたらこちらから伺いますわ」断り文句ではなく、彼女の目には柳への並々ならぬ想いがはっきりと見て取れた。柳に冷たく突き放されたことに対する屈辱で、内側から煮えたぎっているはずだ。そして、俺と同じように柳の隣にいる美月という存在が気に入らないだろう。俺は、ニヤリと口角を上げてから踵を返し、背中を見せてからひらひらと手を振りその場を後にした。(あの女は必ず俺の元にやってくる。あの女の目的は柳で、きっと俺たちの思惑は合致しているはずだ)あの女は美月を取り戻すための最高の駒になる。お互いが結ばれるべきパートナーと一緒になるために利用しない手はない。バーカウンターでウイスキーのおかわりを頼み、会場の奥の人気の少ない落ち着いた場所を陣取った。壁に背を預け、グラスを揺らしながら、俺は舞が来るのを静かに待っていた。二つの共通点がある。一つは、柳世羅への執着。もう一つは、美月という女への嫉妬。
last updateLast Updated : 2025-12-16
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116.渡米

美月sideパーティーが終わり、舞がスポンサー契約を結べたかまでは分からないが、舞や楽団にイベントのオファーが来たり演奏会の奏者として招待を受けたようだ。地元のTV局でもたまに舞や楽団が取り上げられていることもあり、少しずつだが露出も増えている。舞たちは、世羅の開いたパーティーの恩恵を受けたようで、このことをきっかけに婚約破棄の問題に終止符が打てることを願った。―――――七月上手くいけば今頃渡米するはずだった世羅は今も日本にいる。舞の問題で少し時期がずれたが、遅くなるが年明けからアメリカ行きが確実視されていて、十月には準備も兼ねて出発の予定だ。私も世羅に返事をする時が近付いていた。しっかりと返事はしていなかったが、世羅に話をされたときから、私の心は決まっていたと思う。この期間で英語を学び直していた。そして、もう一つ……。『酒井美月殿 登録日本語教員に認定する』この日、教員免許と賞状が届き、私は晴れて日本語を教える教員となった。教育への道は高校生の頃に目指していた夢だったが、父の会社を継ぐ可能性もあったので、大学は教育学部ではなく教員免許もとれる学部を選択した。在学中に会社のことが気になり教員への夢は諦めたが、理恵と話をしているうちに興味が湧いてきた。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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117.与える愛

美月side世羅に連絡をすると、週末に名古屋まで来てくれて一緒に過ごすことになった。新幹線の改札前にある大きな丸時計の下で待っていると、世羅が気がついてこちらに近付いてくる。普段から連絡は取っているけれど、直接会えた喜びを二人で微笑みあいながら噛みしめていた。連日続く猛暑日で、アスファルトは太陽の日差しを浴びて足元からの熱気を感じる。世羅の隣を歩いていると、後ろから大声で私の名前を叫ぶ声が聞こえてきた。「おい、美月!こんなところでお前、何をやっているんだ。やっぱりそいつと出来ているんじゃないか!」振り向くと、陸が鬼のような形相で猛スピードでこちらに駆け寄ってきて、私の両肩を強く掴んできた。「もう言い訳出来ないぞ。お前は、こいつとの関係がありながら俺を騙していたんだろ?今すぐ俺のところに戻ってこい。お前は俺の女だ」「言いがかりは止めてください。すべてあなたの妄想で勘違いです」世羅が陸の手を掴んで咎めたが、怒りが収まらない陸は世羅の手を振り払うと私に詰め寄ってきた。「お前は黙っていろ。俺は今、美月と話をしているんだ」血走った目で睨みつけてくる陸の腕を手で払い、大きなため息をつく。長年溜め込んでいた怒りと屈辱をぶつけるように、私も陸を睨み返し冷たい声で吐き捨てた。「私はあなたと話すことなんてないわ。『俺の女?戻ってこい?』嫌よ、あんな地獄みたいな生活に戻るわけないじゃない。お願いされてもお断りよ」「な、何を言っているんだ。俺がどれだけお前のことを思って与えてやったと思っているんだ!お前に教養やマナーを学ばせてやって、社会人としての経験もやらせてやった。周りにも紹介してやってお前は、遠藤製薬の次期社長夫人として振る舞えて、これ以上何の不満あがあるんというんだ?」「与えてやった?物は言いようだよね。あなたは私を自分の都合のいいように扱っていただけよ。私の事なんて考えたことないじゃない。あなたが与えてくれたのは『愛』じゃないわ。私はもうあなたの顔色を窺って生きる人形じゃない」私の言葉に、陸は本気で困惑しているようだった。彼にとっては、馬鹿にしたように罵倒して私をなじるのも、時間など関係なく私を呼び出して婚約者だと紹介するのも、すべて「愛」であり、私はそれを喜んで受け取るべきだったのだ。その傲慢さが、今の私には滑稽ですらあった。
last updateLast Updated : 2025-12-18
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118.与える愛②

美月side「違う、俺はお前のことを思っていた。結納金も初めての食事も、一体お前にいくら使ったと思っているんだ?」「……いくら使った? あなたのそういうところよ。あなたはお金で何でも自分の思い通りにしようとする。お金さえ払えばいいと、人を駒にしか思っていない。そういうところが心底嫌なのよ。柳さん、お見苦しいところをお見せしてすみません。行きましょう」私は世羅の腕を掴み、陸の顔を見ずにその場を去ろうとした。しかし、陸は納得がいかないのか、私の手首を強く掴んで離さない。「待て、まだ話は終わってないぞ!」陸の叫びは、もはや愛ではなく執着とプライドの崩壊からくる断末魔のように聞こえた。その時、隣にいた世羅が、冷静だが逃げ場のないほどの強い威圧感を纏って私と陸の間に割って入った。「遠藤さん、彼女が嫌がっています。これ以上付きまとうなら警備員を呼びますよ。ここは公共の場です。ご自分の醜態をこれ以上晒さない方がいい」世羅の冷徹な一言に陸の指先から力が抜け、私の手首が解放される。私はすぐさま世羅の背中に寄り添い、その場を離れた。背後で陸が何かを叫んでいたが、その声は駅の喧騒にかき消されていく。振り返る必要はなかった。最後に陸の悔しそうな顔を最後に見た時、私の心の奥底に溜まっていたどす黒い感情が一気に浄化されていくのを感じた。
last updateLast Updated : 2025-12-19
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120.出発

美月side両親に渡米の件を伝えると、二人とも一瞬言葉を失うほど驚いていた。「そんな遠いところへ一人で行くの?言葉だって通じないのよ」母は顔を曇らせと心配して色々と尋ねてきたが、隣に座る父がそれを静かに制した。「母さん、もういい。美月には、今まで会社のことで色々と苦労や迷惑をかけた。これからは美月の好きなように、自分の人生を歩めばいいんだ。それに、美月ももう立派な大人だ。困った時にだけ私たちが手を差し伸べるようにして、あれこれ口を挟むのはもうやめよう」父の言葉には、かつての陸との政略結婚への深い後悔と謝罪の念が滲んでいた。母もその言葉に深く頷いて、私は快く送り出してもらうことができた。それからの日々は、瞬く間に過ぎていった。新居の準備は世羅に任せ、向こうに持っていく荷物をまとめ、パスポートの更新も済ませた。アメリカでの日本語教師の仕事先もエージェントを通じていくつか候補が挙がっている。出発まであと一か月に迫り、期待と少しの不安が入り混じった高揚感の中にいたある日、私のスマホに父の会社の事務員である佐藤さんから電話が入った。「あ、美月さん? はぁー、電話に出てくれて良かった。今、大変なことが起きていて……」普段はどんな時も丁寧な対応を崩さない
last updateLast Updated : 2025-12-20
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