「明成バイオとの提携を視野に入れて、事前に調査しただけだ」「提携?」陸は眉を上げた。彼は大袈裟に手を叩いた。「思い出したぞ。この前、部下が言ってたんだが明成がお前を断ったってのはまさか、彼女が原因か?」陸はチッと舌打ちをし、面白がるような口調で続けた。「まあ、そりゃそうか。彰人が沙彩さんをあれだけ可愛がってるのは周知の事実だ。朝霧静奈の立場なら、腹に一物も二物も抱えてるだろ。この機に彰人に一泡吹かせて、ついでに、お前みたいな彰人のダチにも、意地悪してやろうって魂胆かもな」「考えすぎだ」湊は資料をブリーフケースに仕舞い、平坦な声で言った。「明成が提携を断ったのは神崎グループのニーズと彼らのニーズが合致しなかったからだ。私怨は関係ない」「だったら、なんでそんなに必死に調査なんかしてるんだよ」陸は明らかに信じていない。「彰人に口利きでも頼んだらどうだ?いくら何でも、まだ夫婦なんだ。彰人の顔を立てないわけにはいかないだろ」「必要ない」湊の口調は淡々としていた。「ビジネスパートナーシップは条件が合うかどうかだ。人情で決めるものじゃない。もし、彰人の口添えがなければ成立しないような提携なら、こっちから願い下げだ」二人が話していると、再び個室のドアが開いた。彰人が沙彩を抱きかかえるようにして入ってきた。沙彩はシャンパンゴールドのキャミソールドレスを身に纏い、手首にはダイヤモンドのブレスレットが巻かれていた。それは数日前に猫に引っ掻かれた傷跡をちょうど隠す位置にあった。彼女は満面の笑みで挨拶した。「道が少し混んでいて。待たせたかしら?」陸の視線が沙彩の上をぐるりと回り、彼は笑いながらからかった。「正直、ちょっと待ちくたびれたぜ。だがまあ、沙彩さんがこんなに綺麗に着飾ってるってことは彰人が下で、喜んで待たされてたってことだろ。俺たちが待つくらい、どうってことねえよな」沙彩はそう言われて頬を微かに赤らめた。彼女はさりげなく話題を変えた。「さっき、お仕事のお話をされていた?」湊が口を開く前に、陸が割り込んだ。「そうなんだよ。湊が例の明成バイオとの提携の件で、まだ頭を悩ませてたところさ」彰人はジャケットを脱いでスタッフに渡しながら、湊に向ける視線に、探るような色を浮かべた。「
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