「写真ですって?」沙彩は怒りでわなわなと震えた。「あの大奥様がどんな方か分かってるの?どれほどの修羅場を潜り抜けてきたと思ってるのよ。あんな、証拠にもならないような写真数枚で、あの人が信じるとでも?パパもママも、どうして、物事の後先を考えないの!大奥様、元々私のことがお嫌いだった。こんなことをすれば、かえって私が焦って、長谷川夫人の地位欲しさに彰人さんに近づいたと、そう思われるに決まってるじゃない!私があなたたちを焚きつけたと誤解されて、もっと嫌われるに決まってる!」美咲と良平は娘にそこまで言われ、ぐうの音も出なかった。しばらくして、ようやくか細い声で言った。「そ、それじゃあ……これから、どうすればいいんだね?」沙彩は苛立たしげだった。だがこの状況では無理やりにでも、自分を冷静に保たせるしかなかった。「どうするもこうするもないわ。私が彰人さんに直接謝りに行くしかない!彼が大奥様の前で、少しくらい私のために弁護してくれることを祈るしかないわ」夜。沙彩は上品なベージュのワンピースを纏い、薄化粧を施すと、会社の近くにある彰人の高級マンションへと向かった。呼び鈴を鳴らすと、ドアはすぐに開いた。彰人は濃色のルームウェアを身につけ、その眉間には疲労の色が浮かんでいた。本邸から戻ったばかりなのは明らかだった。「彰人さん」沙彩は声を限りに、優しく囁いた。「中でお話ししても、いいかしら?」彰人は黙って体をずらし、彼女を招き入れた。ドアを閉めると、そのままソファへと向かい、腰を下ろした。沙彩は彼がまだ怒っているのを察し、自ら彼に歩み寄った。「彰人さん、まだ、お食事じゃなかったんでしょう?夜食、持ってきたの。全部私の手作りよ……」彰人は彼女を見上げ、平坦な口調で言った。「お前の両親が今日、本邸で騒ぎを起こした」沙彩の心臓が冷たく沈んだ。彼女はすぐに俯いた。「ごめんなさい、彰人さん。私、本当にあの二人がそんなことをするなんて、知らなくて。家に帰ってから、初めて聞いて、二人には厳しく言っておいたわ」彼女はそのまま、彼の隣に腰を下ろした。その声は罪悪感に満ちていた。「二人もただ、焦っていただけなの。私たちが早く一緒になれるようにって、そればっかり考えて、あんな馬鹿なことを……おばあさんを
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