「ぼくの身元を調べた時点で、面倒な事態なら予測できていたはずです。それなのにどうして、ぼくを遠ざけるどころか、総和会と深く関わらせたのですか?」「面倒であると同時に、貴重だったからだ。あんたの血筋も境遇も含めた存在が。わしも総和会も、最初はあんたに深入りするつもりはなかった。賢吾や千尋が、あんたと一時の火遊びを楽しむつもりなら、と。しかし現実は、あの二人はあんたをオンナにして、長嶺組に迎え入れた。そこでわしは考えを改めた。長嶺の男たちの総意として、あんたは必要な存在だと」 多くの言葉を費やす守光だが、和彦の質問への返答としては、あまりに曖昧だ。 面倒だとわかっていながら和彦を長嶺組だけではなく、総和会にも深入りさせた挙げ句、結果として俊哉と接触を持つことになったというのに、守光はそれを憂いている様子はない。 俊哉を警戒はしているが、強い危機感を抱くまでには至らないと、守光の態度がそう和彦には思えて仕方なかった。「何も心配せず、あんたは長嶺の男たちに大事にされていればいい。いや、あんたの場合、それ以外の男たちにも――……」 話はこれで終わりだという空気を感じ取り、もっと核心をつく質問をしたかった和彦だが、思考が空回りして何も言えない。結局、頭を下げて立ち上がる。 部屋を出ると、疲労感がどっと押し寄せてくる。クリニックで勤務しているより、わずかな時間、守光と向き合って話すことのほうが気疲れをする。昨日の今頃は、俊哉を相手にやはり緊張していた。 和彦が堪え切れずため息をついたところで、待機していた吾川が静かに声をかけてきた。「お疲れ様です、佐伯先生。夕食はどうされますか? すぐに準備できますが」「いえ……、会長にお時間を取っていただいただけで十分です。ぼくはこれで失礼します」 力なく笑みを向けた和彦に、承知しましたと頷いた吾川が一度ダイニングへと向かい、すぐに預けていたコートとアタッシェケースを手に戻ってきた。 玄関でコートを羽織っていた和彦だが、ふと気になって、声を潜めて吾川に話しかけた。「……今日、ここに長嶺組長が見えられてい
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