「……ぼくは、そこまで思い切れません。長嶺の男たちに庇護されて、賢吾さんの作った檻の中で、いろんな男たちと情を交わしていただけで……。御堂さんに軽蔑されるかもしれませんが、ぼくには大層な覚悟なんてなかった。ただ、力のある男たちに身を委ねて、自分が必要とされる感覚に満足できていたんです」「軽蔑なんてしない。まっとうな人生を奪われても、君はしたたかに生きている。流されているだけだと言うかもしれないが、まったく無縁だった物騒な世界に放り込まれても、自分を保っているんだ。誇れとは言わないが、少なくとも卑下はしないでくれ」 御堂が腰を浮かせ、空になったグラスをナイトテーブルに置く。このとき、灰色がかった髪がさらりと揺れ、視線が吸い寄せられる。触れてみたいなと、ふと和彦は思い、そんな自分に戸惑った。 座り直した御堂がこちらを見て、首を傾げる。その姿は、総和会という巨大な組織の中にいて、屈強な男たちの一団を率いているようには見えない。痩せてはいるが決してひ弱そうではないし、触れるのをためらわせる冷たさをときおり覗かせる。こんな御堂を守りたいと思う男は、きっと一人や二人ではないだろう。 驕っているわけではないが、和彦にも、自分を守ろうとしてくれる男たちがいる。和彦が打ちのめされるのは、そんな男たちの足手まといになりかねない己という存在に対してだ。 なんとかしたいのに、足掻くことすらできない――。 御堂が驚いたように目を丸くする。「頼むから、泣かないでくれ。あとで、賢吾がこのことを知ったら、わたしが責められる」「いえ……、泣いてないです。悔しいのか悲しいのか、よくわからなくなっただけで……。本当に、いろいろ、あって――」 感情の高ぶりで熱くなった自分の頬を軽く叩くと、御堂にその手を取られる。間近に顔を寄せられ、和彦は目が逸らせなくなった。「あの……?」「前にわたしは、君は自分に執着していないと言ったが、少し変わったかもしれないね。男たちが大事にしてくれる自分自身を惜しむ気持ちが出てきたというか…&
Last Updated : 2026-08-19 Read more