「何がしたいんだ、里見さん……」「君が気にしていることを、知ってもらいたくて。おれと英俊くんの関係がどういったものなのか、気になっているだろう?」「そんなことっ――」「君はずいぶん、感情が表に出るようになった。……今日会ってから、おれに対してずっと、物言いたげな顔をしてたよ。それに、おれを責めるような目も」 していないとは言い切れなかった。和彦が目を伏せると、里見も部屋に入ってきてベッドに腰掛ける。「前に君が電話をくれたとき、おれはこの部屋にいた。……もう察してるんだろう? あのとき訪問者がいて、それが英俊くんだったということは」「それなのに、連れてきたんだ」「……君と別れてからのおれは、本当に何もない人間だった。仕事だけだ。うわべだけの人間関係を上手く構築して、なんとなくいい人だと思われて、それなりに満足しているつもりだった。だけど、ときどきふと考えるんだ。君が側にいてくれたら、この店で美味しいものを食べさせてあげたいとか、あそこに旅行に連れて行ってあげたいとか。時間が経てば記憶が薄れて、いつかは思い出すこともなくなるだろうと考えていた」 知的な顔に浮かぶ苦悩の翳りは、里見が本心を語っていると思うには十分だ。だからこそ和彦は、焦りにも似た気持ちから息が苦しくなってくる。 いまさらそんなことを聞かさないでほしいと、叫びたかった。「情けないが、君が通う大学の近くを車で走ったこともある。偶然という形で、君の姿を見たかった。見るだけだ。顔を合わせて話そうなんて考えなかった」「勝手だよ、里見さん……」 発した声は震えを帯びていた。「もう会うのはやめようと言ったのは里見さんだ。ぼくには新しい生活と出会いがあるから、その妨げになりたくないって、立派な大人らしいことを言った。ぼくはしっかりと覚えてる」「そう思ったんだ。あのときは。どんなに苦しくても、君と会うつもりはなかった。実際おれたちは、十年以上もそうしてきた。きっかけさえなければ、この先何年も――。いや、一生会わなか
Last Updated : 2026-08-25 Read more