「それはブルーベリーの木だそうだ。それなりに育ってるものを地植えしたから、意外に早く実がつくかもな。そして、こっちはヤマモモだ。他にも何か植えたと言っていたが、名前は忘れた」 なぜ美味しそうな実が生る木ばかり。そんな疑問を口にする前に、南郷が答えた。「実が生ると、それを啄みに鳥がやってくるらしい」「そういうものなんですか」「そして、鳥に誘われてあんたがやってくる」 なんと応じていいかわからず黙り込むと、鼻先で笑った南郷に促されて寮に入る。スリッパに履き替えていると、今日は南郷が言うところの〈若い連中〉がいるらしく、微かに人の話し声が聞こえてくる。小野寺もいるのだろうかと気にはなりつつ、廊下を左に進む。 南郷の自室に向かう途中にある白い回廊の壁には、前回はなかった写真パネル三枚が間隔を空けて飾られていた。青空の下で陽射しを反射してきらめく明るい海と、夕日でオレンジ色に照らされる海。そして、夜の闇に沈む暗い海だ。「この写真は……」「ここに飾るのはなんでもよかった。たまたま安かったから、三枚まとめて買った。――長嶺組長とあんたの連名で贈られたものは、部屋のほうに飾ってある」 実は和彦は、その連名で贈ることになったものについてまったく把握していない。いつの間にか賢吾は画廊で選んだようで、届けさせたと事後報告があっただけなのだ。 賢吾は何を贈ったのかと、ドキドキしながら部屋に入る。さすがに段ボールはすべて片付いており、書棚にはぎっしりの本が詰め込まれ、オーディオセットの配線も済ませてある。きちんと生活感があった。 開け放っている窓から心地よい風が吹き込んでくる。すっかり様変わりした外の景色に目を細めたのは、庭の様子に心惹かれるものがあったからだ。これは確かに、庭に植えた草木を眺めて過ごすのは楽しそうだ。「先生、紅茶でいいか? ティーバッグだが」「あっ、はい」 客用のイスは相変わらずないようなので、和彦は自分でエグゼクティブチェアを移動させて腰掛ける。そこでぎょっとした。ちょうど座った場所の正面の壁に、こちらを睨むように見据えている純白の狼がいた。最初は写真かと思ったが、よく目を
Last Updated : 2026-10-04 Read more