私はこの国が好きだ。宮殿の中からその光景を見つめながら、そう思った。空からは三日月が顔を出し、黒い海を照らしている。現実離れした空間の中に沢山の想いが隠れている。私は瞼を閉じ、自然の音に耳を傾けながら、全ての感覚を楽しみ続けた。 2つの視線が同じ光景を見続けている。それは運命が引き起こす小さな物語だったのかもしれない。ミハエルは白い制服に身を包み、敵国の中に隠れている。2つの国は手を取り合い、彼らの想いを組んでいく。裏で動いている共鳴に気付く事なく、真っ直ぐと見つめている。 その先にいる私に言葉を投げかけるようにーー 第一話 出会い バタバタと走る私は父から呼び出されて、周囲の瞳にどんなふうに見られているかを忘れてドアを突き破っていく。怒号にも似た音はその場にいた人達の興味を攫い、思った以上に目立つ結果となっていく。 「ラビリンス……お客人が来ているのだぞ? あれほど落ち着けと……」 私を呼ぶ父はいつもよりも緊張感を纏っている。いつもの父ならここまで怒る事はないのだが、今日に限っては違っていた。客人が来ていると言った父の顔色は真っ青になっている。もしかしてとんでもないタイミングで激突してしまったのかもしれない。 父は普段とは違い余所行きの服に着替えていた。小さな国と言っても一刻の王である。この国は西洋と呼ばれている文化が発達している。私達の中でその名称は全ての歴史を繋ぎ、未来を作る光の名称ーー貴族達は自分の存在価値を示すように、自分の立ち位置と作法を熟知していた。そんな周囲と比べると私は逆の方向性を突き進んでいる。最初は異国のサムライに憧れて剣を振り回したり、沢山の行動で父は頭を抱える結果となってきた。 私の父であり、国王でもあるゲリア・メルゲル。長い髪を一括りにしているがその風貌は力強さと優しさを併せ持っている。その父がここまで顔色を変えるなんて、相当の人物が来訪しているのだろう。ヒョコッと興味本位で父の後ろに姿を隠した来客に視線を注いでいくーー 私が揺れると反対方向に揺れる人物は「くくくっ」と笑いを堪えながら楽しんでいる様子。十回くらい繰り返している私達に気づいた父は、ため息を吐いた。 「ラリア王子……私の娘をからかうのは止めていただきたい」 「ああ。悪い、悪い。このお転婆姫が面白くて、つい」 王子と呼ばれる
Huling Na-update : 2025-10-15 Magbasa pa