All Chapters of やり直せますか?冷戦3年越しの愛に謝罪: Chapter 341 - Chapter 350

433 Chapters

第341話

特に宗也にキスされて腫れた彼女の唇を見て、真琳たちはさらに軽蔑したように嘲笑した。「耳の聞こえない子、どうしたら自分でそんなに腫れるまでやれるのよ?」「羨ましいなら、あなたたちもやってみれば?」音は冷たくそう言い捨て、怒りで顔色を変える彼女たちを無視して、奥の控室へと入っていった。コンテストはすでに始まっていた。出場者たちが順番に自分の作品を身に纏って披露し始めている。音は大型スクリーンの生中継の映像を確認した。美佳に後ほどのウォーキングのルートと立ち位置を伝えようと口を開きかけた時、彼女が片手で腹を押さえ、苦しそうにテーブルに突っ伏しているのに気づいた。額から流れ落ちる冷や汗で、メイクはすでに崩れてしまっている。音の心臓がドクンと跳ね、慌てて尋ねた。「美佳さん、どうしたんですか?」美佳は苦痛で小さな顔をしかめ、声まで震えていた。「ごめんなさい、音さん。急にお腹が痛くなって……ステージには上がれないかもしれないわ……」音の心はさらに沈んだ。もうすぐ出番だというのに、ステージに上がれない?「どうして急にお腹が痛くなったんですか?さっきまで何ともなかったじゃないですか?」「私にも分からないわ。急に痛くなり出して……」「何か悪いものでも食べたんですか?」美佳は少し考え、首を横に振った。「さっきジュースを半分飲んだだけで、他には何も食べてないわ」「ジュース……」音は本能的に、テーブルの上に残された半分のジュースに目をやった。そしてそれを手に取って見つめる。「誰がそのジュースを?」「外にいた、あの中島さんっていう人よ」音の頭の中で何かが爆発したように、一瞬ですべてを理解した。真琳が自信満々で賭けを提案してきたのは、最初からこんな悪巧みをしていたからなのだ。どうしよう?こんな直前になって、どこでモデルを探せばいいの?もし普通のモデルなら、他の人から借りるか、いっそ自分自身でステージに立つこともできた。だが、彼女のドレスに必要なのは、ぽっちゃりとした体型の女の子なのだ。焦りで途方に暮れていたその時、美佳が突然椅子から立ち上がった。「駄目、洗面所に行かせて。お願い、ドレスを脱がせて」「美佳さん、もう少しだけ頑張れませんか?あと三十分で私たちの出番なんですよ」
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第342話

女たちの心無い言葉が、一言一句、音の耳に突き刺さる。 彼女は打ちひしがれ、怒りに震えた。 だが、様々な感情が渦巻く中で、少しずつ冷静さを取り戻していった。 顔を上げた時、薄らと涙を浮かべていた瞳には、次第に確固たる決意が宿っていた。 「まだ負けと決まったわけじゃないわ」 彼女は自分のドレスを抱きしめ、気力を振り絞って床から立ち上がった。 「コンテストはまだ終わってないわ。今から勝負を決めるのは、早すぎるんじゃない?」 真琳は鼻で嗤った。 「モデルもいないのに、どうやって勝負するの?」 「そうよ」 もう一人の女が口元を隠して嗤った。「一階にいる清掃のおばさん、結構太ってたわよ。少し背は低いけど、音さん、彼女を連れてきて無理やり着せたら?」 「出ていって!」 音は怒りに任せて彼女たちを控室から押し出した。 女たちは顔を見合わせ、得意げに笑い声を上げた。 音は少しの間呆然としていたが、我に返るとスマホを取り出し、心彩に電話をかけた。 心彩は客席でコンテストを見ていたが、電話を受けるとすぐに控室へと駆けつけてきた。 音は手短に事情を説明した。心彩は怒って、あの女たちに文句を言ってやると息巻いた。 「心彩ちゃん」 音は彼女を引き戻し、両手でその肩を掴むと、真剣な表情で言った。「今はあいつらに文句を言ってる場合じゃないの。あなたに手伝ってほしいことがあるの」 「言って、音お姉さん。私、全力で頑張るから」 「後で、心彩ちゃんにステージに上がってほしいの」 「えっ?」 心彩は呆気に取られた。 卒業パーティーでさえステージに上がる勇気がなかった彼女に、ドレスを着てランウェイを歩けと言うのか? 彼女はすぐさま首を横に振り、両手をぶんぶんと振りながら後ずさりした。 「音お姉さん、無理だよ。私、こんなに太ってるし、どんくさいし……モデルウォーキングなんて習ったこともないもん。絶対台無しにしちゃうよ」 ドアの外にいる女たちがどっと笑い声を上げた。 心彩はさらに萎縮してしまい、深く頭を垂れた。 音は両手で彼女の顔を包み込むように持ち上げ、真剣な眼差しで見つめた。「心彩ちゃん、前に私が言ったこと覚えてる?太っているのは欠点じゃないし、あなたもどんくさくなんかない。誰にでもそ
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第343話

「分かった、音お姉さん」 心彩は力強く頷いた。 緊張してはいたが、彼女も一生懸命頑張るつもりだった。 音の期待を裏切らないために…… 隣の控室。 真琳は清華に電話をかけ、満面の笑みで媚びを売った。「神崎様、ご安心ください。すべてお言いつけ通りに手配いたしました」 電話の向こうで、清華はソファに座ってフルーツを食べていた。 叔父に青浜へと追い返されはした。だからといって、あの耳の聞こえない女を破滅させる手立てがないわけではない。 「あいつがステージに上がれないって、確かなのね?」 宗也があの女をコンテストに参加させるせいで、自分は叔父からひどく叱られる羽目になったのだ。 この屈辱を、どうして黙って呑み込めるだろうか。 絶対に参加なんてさせてやらない。 手段を選ばず、ステージの下で惨めにどん底へ突き落としてやる。 「確実です」 真琳は自信満々に答えた。「たとえあいつのドレスがステージに上がれたとしても、入賞なんて絶対に無理ですから」 「よくやったわ」 清華は生中継の画面に一瞬映った宗也の端正な顔を見つめた。 彼を見るたびに、心の中の恨みもいくらか薄れていく気がした。 彼の隣で、音が恥をかく姿を見られないのが少し残念なくらいだ。 彼女は真琳に、宗也と音の関係を教えてはいなかった。 知れば真琳が恐れをなして、手を下せなくなるかもしれないからだ。 今の今まで、彼女は一言も漏らさなかった。ただ真琳を使って音を陥れ、二度と這い上がれないようにするつもりだった。 真琳は当然、そんな裏事情など知る由もない。彼女はまだ、音をまんまと罠に嵌められたことに一人で悦に入っていた。 コンテストは熱気に包まれて進行していた。 ついに真琳の出番が回ってきた。 彼女がモデルを連れてステージに登場した時、そこには彼女が予想していたような賛美の声はなく、ただまばらな拍手が起こっただけだった。 彼女は内心、少し面白くなかった。 胸を張り、周囲をぐるりと見渡す。最前列に座る宗也と目が合った瞬間、心臓がドクンと激しく跳ねた。 憧れの男性に認められたくない女などいるだろうか。 当然、彼女もそう願っていた。 宗也のあの口元の薄い笑みは、無意識のうちに彼女の背中を押していた。 彼女は自
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第344話

音は目の前に広がる真っ白な光の海を見渡した。黒いスーツに身を包んだ宗也が、光の輪の中でひときわ目を引く存在として座っており、彼女に向かって励ますような微笑みを投げかけていた。音はそこでようやく我に返った。静かに息を吸い込み、ステージ右側のマイクへと歩み寄った。会場が静寂に包まれた後、音の心地よい声が響き渡った。「皆様、こんにちは。新人デザイナーの藤堂音です。本日私が皆様にお届けする作品は、『星芒』と申します。すべての女の子は、それぞれが唯一無二の星であり、人生という夜空で自分だけの光を放っています。背が高いか低いか、太っているか痩せているかにかかわらず……」バックステージにいる真琳は、本来、音のデザインコンセプトなど鼻で笑っていた。だが、客席の宗也が深い愛情のこもった瞳で音を見つめ、ことあるごとに率先して拍手を送っているのを見て、彼女の心に不快感が込み上げてきた。彼女は苛立たしげに吐き捨てた。「藤堂社長はどうしてずっとあの耳の聞こえない子に向かって笑いかけてるのよ?」仲間の女もそれに気づいてはいたが、それでも彼女を宥めた。「藤堂社長は誰にでも微笑みかける習慣があるんじゃない?さっきだって、あなたに向かって笑ってくれたじゃない」「違うわ!」宗也が自分に向けたあの笑顔は、全く目が笑っていなかった。音を見つめる時のように、あんなにも愛情深く、称賛に満ちたものではなかったのだ。「本当に下品ね。ステージの上でまで男に色目を使うのを忘れないなんて。でも、真琳、安心して。藤堂社長が障害者なんかを好きになるわけないわ」真琳は仲間のその言葉を聞いて。ようやく少しだけ胸のすく思いがした。音は語るにつれて自信を深め、その声もますます安定していった。デザインコンセプトが終盤に差し掛かった時、心彩が流れるようなチュールのドレスを身に纏い、暗がりの中からゆっくりと歩み出てきた。スポットライトが彼女を包み込んだ瞬間。会場から次々と感嘆のどよめきが沸き起こった。「なんて綺麗なの!」心彩が身に纏うドレスは、スポットライトに照らされて夢のように美しかった。ぽっちゃりとした体型に、ほんのりと赤みを帯びた丸い顔。シンプルなメイクでありながら、自信に満ちた輝きを放っていた。音が心彩のメイクとスタイリングを
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第345話

音の活躍に驚かされていたのは、亜美も同じだった。 騙されていたことには腹を立てていたものの、内心では音にコンテストで勝ってほしいと願っていたのだ。 だからコンテストが始まってからずっと、生中継の画面に張り付いていた。 翔太はここ最近、しきりに音に謝って仲直りしろと迫ってきていた。 亜美はどうしても素直になれなかった。 翔太は生中継の画面越しに、宗也と音がふとした瞬間に目を合わせ、愛情に満ちた視線を交わすのを見て、羨望の念に駆られていた。 彼はわざとらしく咳払いをして、亜美の隣に腰を下ろした。 「亜美、あの二人を見ろよ。俺たちが一生かかっても手が届かない人脈だぞ。プライドなんて捨てて、音さんに謝ってくれないか?」 亜美は我に返り、振り向いて冷たく彼を見つめる。「何度も言ったでしょ。私は謝らないわ。謝りたいなら、あなたが行けば?」 「俺が謝って効果があるなら、とっくに行ってるさ。こうしてお前に頼んでるわけがないだろ」 翔太は苛立ちを抑え、なだめるように言った。 亜美は顔を背けた。「とにかく私は行かないわ」 「行かないんだな?じゃあ、すぐに別れよう」 翔太は下手に出ても通じないとなると、強硬な態度に出た。 ソファから立ち上がり、凄みを利かせて言った。「亜美、もう一度聞くぞ。音さんにメッセージを送って謝るのか、謝らないのか?謝らないなら、婚約指輪を返してもらう」 「あなたって……」 亜美は怒りで言葉を詰まらせた。 指にはめた指輪を軽く撫でながら、口調を和らげた。「翔太、もう少し意地を見せられないの?どうしてわざわざ向こうに媚びへつらいに行かなきゃいけないの? 音が私を友達だと思ってるなら、とっくにメッセージを送ってきてるはずよ。でも何も来ないってことは、私のことなんて友達だと思ってないってことでしょ。私から連絡したら、向こうにどう思われるか」 「どう思われるかなんて大事か?大事なのは、自分の生活をワンランク上げることだろ」 翔太は鼻で嗤った。「無駄にプライドが高いんだな。上司にボロクソに怒鳴られても、結局ペコペコ頭を下げてあのクソみたいな仕事に戻ってるじゃないか」 「それとこれとは違うわ」 「もういい、ごちゃごちゃ言うのはやめだ。とにかく今すぐメッセージを送って謝れ」
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第346話

音のスタジオはまだ名が知られておらず、個人のブランドと呼べるほどの規模ではなかったが。 今回のコンテストを経て、これからはきっと軌道に乗っていくはずだ。 音は自分の未来に期待を膨らませていた。 彼女は周囲の人々に感謝の意を伝え、バックステージへと戻った。 心彩はすでに待ちきれない様子で彼女に飛びついてきた。「音お姉さん、私うまくできたかな?客席からたくさんの拍手が聞こえたんだけど、私の気のせいじゃないかって……」 音は笑って彼女を抱きしめた。 「気のせいなんかじゃないわ。客席の拍手は本物よ」 「本当?」 「本当よ。心彩ちゃん、すごくよかった、最高だったわ!」 音は感極まって彼女の頭を撫でた。「ありがとう、心彩ちゃん。あなたのおかげで大成功よ」 一位になれるかどうかは、もう重要ではなかった。 重要なのは、彼女が大きな一歩を踏み出し、知名度を上げたということだ。 彼女は成功したのだ! 「音お姉さん、私の方こそお礼を言わなきゃ。私にステージに上がる機会をくれてありがとう。こんな大きなステージに立ったの、初めてだもん」 「ううん、お姉さんこそあなたに感謝しなきゃ。私にインスピレーションをくれて、美佳さんにトラブルがあった時、勇気を出して代役を引き受けてくれてありがとう」 音は真面目な顔をして言った。「ありがとうって言うより、私たちはお互いを輝かせたって言った方がいいかもしれないわね」 「うん、お互いを輝かせたんだね!」 心彩はドレスの裾をつまんで、嬉しそうにくるりと一回転した。 「音お姉さん、このドレス、本当に私がもらっていいの?」 「当然よ。元々あなたのためにデザインしたものだもの」 「やったー!」 心彩はやはりまだ子供っぽいところがある。興奮して一回転した後、飛びついて音に抱きついた。「私、音お姉さんのこと大好き、愛してる!」 「このドレスが好きなの?それとも私が好きなの?」 音は笑って尋ねた。 心彩は真剣に答えた。「どっちも好き。もう大好き!」 二人が抱き合って喜ぶ光景は、真琳たちの目には極めて目障りに映った。 真琳は鼻で嗤った。 「順位もまだ出てないのに、喜ぶのは少し早すぎるんじゃない?」 心彩は振り返り、彼女を値踏みするように見て言っ
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第347話

「どうした?俺が音先生の恥になるとでも言うのか?」 「馬鹿なこと言わないで」 音は今、気分が良かったので、彼と言い争う気にはなれなかった。 「ただ、あなたの仕事の邪魔をしたくないだけよ」 実のところ、彼女は周囲から反感を買いたくなかったのだ。 宗也のあの女を惹きつける容姿のせいで。 今日すでにたくさんの女狐どもを引き寄せているというのに、これ以上全員の共通の敵になるのだけは御免だった。 宗也は今夜、確かに重要なクライアントと会う約束があった。 もし音が自分を必要とするならキャンセルするつもりだったが。 結局のところ、彼女はそれを全く必要としていなかった。 「じゃあ、俺は先に行く。何かあれば電話しろ」 「ええ」 妻の音にここまで邪険に扱われ、宗也の胸の内には少なからず鬱憤が溜まっていた。 しかも音は、彼の口調に滲む不機嫌さに全く気づいていない。 まあいい、夜家に帰ってからたっぷりとお仕置きしてやろう。 宗也はエレベーターへと歩きながらそう考えた。 背後から突然、甘ったるい声が聞こえてきた。「藤堂社長……」 彼は足を止めた。 振り返り、自分の方へ擦り寄ってくる女を見る。 「何か用か?」 宗也は片眉を上げた。 真琳は彼の、どこか冷ややかさを帯びた端正な顔を見つめ、心臓をドクン、ドクンと激しく高鳴らせた。 「私……」 彼女は勇気を振り絞って言った。「藤堂社長、お食事をご一緒させていただけませんか?」 「笑わせるな」 宗也は彼女を冷ややかに一瞥した。「あんな薄っぺらい服をデザインしておいて、自分にそんな資格があると思っているのか?」 「……」 真琳は顔をカッと熱くし、瞬時に耳の先まで真っ赤に染まった。 「藤堂社長、私……これからもっと頑張ります。今夜は私……」 「あいにくだが、お前が今夜を無事にやり過ごせると思うなよ」 宗也はそう言い捨てると、きびすを返してエレベーターの中へと足を踏み入れた。 真琳は一瞬呆然とした。 彼の言葉の意味が理解できなかった。 宗也はスマホを取り出して運転手に電話をかけ、手短に指示を出した。「ホテルに残って音を待っていろ。俺はタクシーでクライアントのところへ向かう」 「承知いたしました、社長」 運
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第348話

音はドアの鍵が壊れたのだと思い、しばらく格闘したが、どうしても開けることができなかった。 電話で助けを呼ぼうとしたが、ポケットを探って、スマホをバックステージのテーブルに置いたままにしてきたことを思い出した。 スマホがない。 彼女は仕方なく、ドアを叩きながら外に向かって助けを求めた。「誰かいますか?外に誰かいませんか?」 外は静まり返っていた。 会場にいた人々は、帰宅したか、一階のレストランでの祝賀会に向かったかのどちらかだ。 しかも、ここは廊下の突き当たりである。 人影など全くない。 音は焦りを感じ始め、助けを呼ぶ声を大きくした。 しばらく叫び続けたが、助けに来る者は誰もいない。それどころか、頭上から突然、バケツ一杯の汚水が勢いよく浴びせかけられた。 彼女はそれをまともに被ってしまった。 汚水が頭から流れ落ち、むせて激しく咳き込む。 全身ずぶ濡れになり、あまりの冷たさに体がガタガタと震え出した。 「この泥棒猫!その中でたっぷり味わうといいわ!」 ドアの外から、憎しみに満ちた、歯噛みするような声が聞こえてきた。 真琳だ! 彼女の成績では打ち上げに参加する資格はないはずで、とっくに帰っているべきだった。 だが、彼女は帰っていなかった。 それどころか、わざと音を洗面所の個室の中に閉じ込めたのだ。 「中島さん!開けて!」 音は手でドアを叩きながら叫んだ。「わざと閉じ込めるなんて、立派な犯罪なんだから!」 「たとえ犯罪だろうと、警察に捕まろうと、今日はあんたを徹底的に痛い目に遭わせてやるわ。分かった?この、聞こえない女が!」 音は呆然とした。 しばらくして、顔にかかった汚水を拭いながら尋ねた。「どうして?中島さんに恨まれるような覚えはないのに。どうして何度も何度も私を傷つけようとするの?」 「どうしてですって?」 真琳は憎々しげに言い放った。「あんたが卑しくて、男に色目を使うのが好きだからよ。あんたのせいで藤堂社長は私に見向きもしなくなり、神崎様からは業界を干されそうになってる。これで十分な理由でしょ?」 音にはよく理解できなかった。 だが、真琳が最初から自分を目の敵にしていたことは知っているし、自分が優勝した今、彼女の心の中にはさらに強い憎しみが渦巻
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第349話

宗也は少し考え、主催者側の責任者に電話をかけ、単刀直入に切り出した。 「一体どんな祝賀会だ?こんな時間まで飲み食いする必要があるのか?」 相手は一瞬戸惑った。 怪訝そうに問い返す。「藤堂社長、何をおっしゃっているのですか?私どもの祝賀会は、九時にはお開きになりましたが」 「何だと?」 相手は恐る恐る尋ねた。「祝賀会は九時に終了して解散いたしました。藤堂社長、何か問題でもございましたか?」 「音はなぜまだ出てこないんだ?」 「音さんですか?」 相手はハッとした。「ああ、音さんは家に用事があるからと、祝賀会には参加せずにお帰りになりましたよ。私どもも残念に思っていたところです」 「参加していないと言うのか?」 宗也は眉をひそめた。「よく思い出せ。彼女は本当に参加しなかったのか?」 彼が最後に音に電話をかけた時、彼女はちょうど食事会へ向かおうとしていた。 彼女が自分に嘘をつく必要などない。 「間違いありません、藤堂社長。音さんは今夜の主役ですから、私どもも誰よりも参加していただきたかったのです。彼女が来たか来なかったか、把握していないはずがありません。 おそらく、音さんは同業者に煩わされるのを嫌って、食事会への参加を辞退されたのではないかと……藤堂社長……」 「防犯カメラ映像を調べろ」 宗也は淡々と彼の言葉を遮った。 「えっ?」 「防犯カメラ映像を確認しろ。音が確実にホテルを出たことを証明したほうがいいぞ。さもなければ、何かあった時、お前たちでは責任を取りきれないからな」 宗也は少し間を置き、付け加えた。「それから、中島真琳という女のデザイナーの行方も調べろ」 宗也は音に、運転手が外で待っていると伝えていた。 もし彼女が帰るなら、運転手に連絡するはずだ。 だが、運転手は彼女がずっとホテルから出てきていないと言っている。 そうなると、音はまだホテルの中にいるということになる。 常に音を敵視していた真琳のことを思い出し、宗也の心に瞬時に嫌な予感がよぎった。 彼は椅子から勢いよく立ち上がり、コートをひっつかんで一階へと降りた。 移動しながら思考を巡らせ、彼は再び亮に電話をかけた。 「始末しろと命じたあの女、もう片付けたか?」 「まだです、社長。あの
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第350話

真琳はわざと足元の何かにつまずいたふりをして、その体を直接宗也の胸へと投げ出した。 宗也は片手をポケットに突っ込んだまま、彼女が自らボロを出すのを冷ややかに待ち構えていた。 彼女の体が彼に触れようとしたその瞬間、彼はそっと横へ一歩避けた。 真琳は勢い余って空を切り、そのまま床に倒れ込んだ。 彼女は一瞬呆然とした。 振り返り、宗也に向かって甘えたような恨めしい声を出す。「藤堂社長、意地悪ですね……」 宗也は冷ややかな目線で彼女を見下ろし、氷のように冷え切った口調で言った。「中島さん、今夜何も悪巧みをしていないといいがな。さもなければ、過去のツケも含めて、まとめて清算させてもらうからな」 真琳は彼の瞳の奥にある底知れぬ冷酷さに、心臓をビクッと跳ねさせた。 彼女は恐る恐る聞いた。「藤堂社長、何をおっしゃっているのですか?私には全く訳が分かりません」 ちょうどその時、ホテルの支配人がこちらへ小走りで歩み寄ってきた。「藤堂社長、防犯カメラを確認いたしましたが、音さんは確かにホテルを出ておりません。現在、従業員を総動員してホテルの隅々まで徹底的に捜索させております」 ホテルの支配人はそう言い終えると、床にいる真琳をちらりと見た。 「中島さんはとっくにお帰りになったはずでは?なぜまだホテルにいますか?」 「私……」 真琳は言葉に詰まった。 彼女が帰らなかったのは、裏口付近で音の「見張り」をするためだった。誰かが洗面所の方へ向かおうとすれば、適当な理由をつけて引き返させていたのだ。 音の助けを呼ぶ声が、誰の耳にも届かないように。 洗面所の中から全く物音がしなくなり、音がとうとう力尽きたのだろうと見計らって、ようやくホテルを後にして帰路につこうとしていたところだったのだ。 目の前の藤堂社長はどういうつもりだ? あの聞こえない子を探しに来たというのか? 「あなたが音さんに何かしたのではないでしょうね?」 支配人は真琳を睨みつけて問い詰めた。 真琳は後ろめたさに生唾を飲み込み、首を横に振った。「していませんよ。私が彼女に何をするって言うんですか?」 彼女の瞳に一瞬だけよぎった動揺。それは支配人の目は誤魔化せても、宗也の鋭い眼光から逃れることはできなかった。 ただ一目見ただけで、
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