宗也は茹でた海老を一つ、悠人の器に入れた。そして顔を上げ、美咲の手にあるスマホへ視線を向ける。画面に映る見出しと写真を見た瞬間、彼の表情が、はっきりと強張った。「……これは、どこから出てきた?」「さあ。私も、さっき見かけたばかりなの」美咲はスマホを引き寄せ、もう一度画面を確認するふりをした。「官製メディアみたいよ。それなりに信憑性があるんじゃないかしら。それに……」わざとらしく微笑む。「音さんに、あんなに色っぽい一面があったなんて。私は、あんな格好の彼女、見たことなかったわ」宗也は、複雑な表情のまま、しばし沈黙した。やがて、美咲に短く言う。「スマホを片づけろ。悠人に見せるな」そう言うと、自分のスマホを取り出し、ある番号に電話をかけた。声は、氷のように冷たい。「広報部は何をしている。ネットの騒ぎが目に入らないのか」電話の向こうで、亮が思わず息を呑む気配がした。「も、申し訳ありません、社長。私たちも、つい先ほど把握したところでして……すでに対応は始めていますが、拡散が早すぎて……」「それが言い訳になると思っているのか?」「……っ」亮は、言葉を失った。「……彼女は今どこにいる。探し出せ。伝えておけ。人の忍耐にも、限度があるとな」「……承知しました、社長」音のスマホは、電源が入ったままだった。亮が彼女に連絡を取るのは、難しいことではない。そして、宗也の言葉を、そのまま伝えた。伝言を終えたあと、亮は力なくため息をついた。「……奥様。これ以上、社長を刺激しないでください。このままだと、奥様より先に、私のほうが死にます」「ごめんなさい。私も、どうしてこんな記事が出たのか分からないの」「社長が、どんな立場の人か……プライベートを狙っている連中が多いのは、当然です」「じゃあ」音は、冷ややかに言った。「彼が美咲を婚家に連れ込み、一緒に暮らしているという話は?どうして、誰も書かないの?」亮は、言葉に詰まる。「それは……」慌てて取り繕う。「夏川さんは、坊ちゃんの家庭教師です。坊ちゃんが青葉の邸宅に慣れるまで、付き添いで数日滞在しているだけで……」家庭教師を名目にして、実際に何をしているのか。音は、それ以上、指摘する気にもならなかった。亮はしばらく待っても返事がない
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