บททั้งหมดของ 私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした: บทที่ 51 - บทที่ 60

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第七章 許されないワルイコト 5

明日からまた炯さんが長期出張に出るその日、夕食後は彼のお膝の上で甘えていた。「凛音、篠宮家の桜子が帰ってこないそうなんだが、なにか知ってるか?」眉間に少し皺を寄せて炯さんが聞いてくる。「え、桜子さんがですか?」桜子さんとは昔、通っていたお茶の教室で一緒だった。「そうだ。昨日、友人のところへ行ってくると家を出たっきり、帰ってきていないそうだ」「そうですか……。私は心当たりがありませんが、心配ですね」桜子さんもかなり裕福な家庭のお嬢様で、出かけるときにひとりで公共の交通機関をつかって、なんてことはないはずだ。なのに帰ってきていないとは心配になる。まさか、誘拐とかないよね……?「そうだな。家出とかならいいんだが……」炯さんもかなり、心配そうだ。よくある……とは言ってはいけないが、反抗期のようなもので家出などというのは珍しくない。私だってあの日、炯さんの誘いがあったからとはいえ父の追跡を振り切り、街に遊びに出た。だいたい気が済めば家に帰るし、もしくは連れ戻されるのでそれはさほど心配する必要はない。「事件に巻き込まれてないといいんですけど」何度も言うが、私が誘拐されそうになったのは一度や二度ではない。桜子さんだって同じく、そういう危険があるというわけだ。「だよな。凛音も気をつけろよ?腕時計は常に着けておくこと」確認するように彼が、私の左手首を取る。そこには炯さんの元に来た日、もらった腕時計が嵌まっていた。私の危険を察知し、居場所を教える時計。今のところお世話になるような目には遭っていないが、これからもそうでありたい。「はい」炯さんの唇が私の額に触れる。私が誘拐されたりすれば、彼はこれ以上ないほど心配するだろう。そうならないように、気をつけなきゃ。翌日、炯さんは出張に出ていった。またしばらく、ひとりなのは淋しいな。ううん、彼は仕事でいないんだから、私がしっかり家を守らなきゃ。それに。仕事の帰り、ミドリさんに近くの神社へ連れていってもらう。「立派な神社……」境内は綺麗に掃き清められ、お守り授与所も開いている。〝小規模な祭り〟とスミさんは言っていたが、これならそこそこの規模のお祭りなのでは……?「えっと……」お賽銭箱の前に立って、悩む。お賽銭っていくら入れたらいいんだろ
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第七章 許されないワルイコト 6

炯さんがいない日を、いつもどおり過ごす。きっぱりと気持ちには応えられないと伝えたのに、相変わらずちょっかい出してくるベーデガー教授には苦笑いしかできない。あと、最近は仕事帰りにときどき、カラオケやゲームセンターに寄るようになった。ミドリさんはゲームの達人で、やっているのを見ているだけでも楽しい。おかげでこの頃、大きなぬいぐるみが増えているんだけれど……大丈夫だよね?「うそっ、嬉しい」その日も仕事から帰り、まったりお茶を飲みながら携帯のチェックをしていたら、炯さんからメッセジーが入っていた。明日、出張から帰ってくる予定だが、お昼頃には着くしそのあとは休みにしたから、待ち合わせてデートしようとのことだった。「待ち合わせてデート」それだけで嬉しくて、むにむに唇が動いてしまう。なに着ようかな。でも、私は仕事だし、出勤着になってしまうけれど。それでもできるだけお洒落したいな。翌日、仕事が終わり、待ち合わせの場所に向かう車の中で、うきうきとしながら携帯をチェックする。「あ……」しかし、そこに入っていたメッセージを見て、気分は一気に失速していった。【わるい、ちょっと遅れる。お茶でも飲んで待っててくれ】お仕事なら仕方ないよね……。さいわい、なのか映画は当日に行って決めようという話になっていたので、時間を気にする必要はない。ミドリさんは一緒に待っていると言ってくれたが、コーヒーショップから出ないし、お守りの時計もあるから大丈夫だと帰ってもらった。今日は帰って残務処理をしたらもうあがってもらうようになっているし、彼女の時間を無駄に使うのは申し訳ない。それでもミドリさんは、知らない人には絶対に着いていかないようにと何度も私に言い含めて帰っていった。炯さんといい、ミドリさんといい、私を子供かなんかと間違っていないかな?コーヒーショップに入り、期間限定桃のフラッペを頼む。このチェーンにはもう何度かひとり……正確にはミドリさんとふたりで来たので、慣れたものだ。受け取ったカップを手に、窓際のカウンター席に座る。待っているあいだに、どの映画を観ようかと携帯でレビューなんかをチェックした。がっつり恋愛ものも気になるけれど、炯さんは退屈かな?だったらこっちのファンタジーも気になるが、彼の仕事が終わる時間によりそうだ。「凛音?」声をかけられ
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第七章 許されないワルイコト 7

『ふぅん』彼は興味なさそうに一言漏らし、コーヒーのカップを口に運んだ。『凛音はこのあと暇かい?』何気なく聞いてきた彼の顔を、なんともいえない気持ちで見ていた。今、待ち合わせをしているって言いましたよね?それは完全にスルーですか?『展覧会のチケットをもらったんだ』証明するかのようにチケットを二枚、彼がカウンターの上に滑らせてくる。『どう?凛音はきっと、好きだと思うけど?』にやりと彼の頬が歪む。それは私の好きな画家の展覧会だった。炯さんが帰ってきたら誘ってみようと思っていたし、ダメなら仕事帰りにひとりで行こうと計画していたくらいだ。『……いえ。お断りします』後ろ髪を引かれながらチケットを彼のほうへと押し戻す。誘ってきたのが島西さんなら、せめて職場の男性上司なら、日を改めてもらえば行っていたかもしれない。しかし、ベーデガー教授は絶対にダメだ。それくらい、私にだってわかる。『ふぅん』彼がチケットを引っ込める。あっさりと諦めてくれたなと思ったものの。『この展示、僕の知り合いが関わっていてね』だから、なんだというんだろうか。くだんの画家はドイツ出身で、その作品はドイツの美術館に多く収蔵されている。なので別に、彼の知り合いが関わっていてもおかしくはない。『日本にも一緒に来ているわけだけど、よければ作品解説もしてくれるし、バックヤードも見せてくれるって話だったんだけど……そうか、凛音は行かないか』「うっ」物憂げに彼がため息をつき、声が詰まる。そんなの、絶対に行きたいに決まっている。でも、相手は私を虎視眈々と狙っているベーデガー教授、で。これにどんな思惑があるかくらい、私だって気づいている。『こんな機会、二度とないと思うんだけどなー』カウンターに頬杖をついて私と目をあわせ、彼はにっこりと微笑んだ。『い、行きませんよ』きょときょととせわしなく視線を動かしながら、少しでも気持ちを落ち着けようとストローを咥える。彼の言うとおり、こんな機会は二度とないのはわかっていた。こんなもので釣ってくるなんて、卑怯だ。『ふぅん。これでもダメか』『はい、ダメです』それでも、これ以上ないほどいい営業スマイルで、きっぱりと言い切る。『あっ』一言発し、唐突に彼は窓の外を見た。つられるようにそちらに視線を向けると、炯さんがこ
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第七章 許されないワルイコト 8

「なにを、するんですか」静かな、静かな怒りの声が這っていく。憎しみを込めて睨みつけたものの、彼はやはり、笑っているだけだった。『なにって、凛音にキスしただけだけど?』伸びてきた彼の手を、邪険に振り払う。『押してダメなら突き落としてみなってね』悪戯っぽくベーデガー教授が片目をつぶってみせる。頭は、恐ろしいほど冷えていた。そうか、これ以上ないほど怒ると反対に冷静になるんだ。『それより、いいの?』彼がちょいちょいと指先で指した先を見る。凄い勢いで炯さんが店に入ってきて、ぶつかりそうになった人々が驚いて避けていた。「凛音!どういうことだ!?」激しい怒りで燃える目が、眼鏡の向こうから私を見下ろしている。「あの」『ねえ』不意に、その場に似つかわしくないほどのんびりとした声が響いてきた。「あ?」私から手を離し、炯さんが背後を振り返る。そこでは、ベーデガー教授がやはり楽しそうに笑ってこちらを見ていた。『彼女、怯えちゃって可哀想だよ?』『はぁ?キサマが凛音に手を出したりするからだろうが』感情のない炯さんの声は、私を魂から震えあがらせた。けれどベーデガー教授はそれでもまだ、余裕で笑っている。『男の嫉妬はみっともないよ』まるで炯さんを煽るように、くすくすとおかしそうにベーデガー教授が笑う。途端にさっと、私から見える炯さんの頬に朱が走った。「いくぞ!」「あっ!」私の手を引っ張り、引きずるように炯さんが連れていく。『凛音、またね』背後ではベーデガー教授がひらひらと手を振っていた。駐車場に停めてあった車に私を押し込み、炯さんは車を出した。いつもは紳士的な運転の彼だが、今日は荒い。それだけ怒っているのだと感じさせた。「……その」眼光鋭く、彼が横目で私を睨む。それでもう、なにも言えなくなった。ふたりともなにも話さないまま、車は進んでいく。家ではなくマンションに着き、部屋に入るまで炯さんは痛いくらい私の手首を掴んでいた。「あっ!」真っ直ぐ寝室へ連れていかれ、乱暴にベッドの上に投げ捨てられる。起き上がるよりも早く、彼がのしかかってきた。「……浮気、だよな」レンズの向こうからなんの感情もうかがえない瞳が私を見ている。その低い声は私の喉を押さえつけ、声を阻んだ。それでも違うと絞りだそうとして、止まる。不可抗
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第七章 許されないワルイコト 9

「どうだって聞いてるんだよ!」「んあーっ!」奥の部屋への入り口を破壊する勢いで、太く堅い杭を打ち込まれる。おかげで背中が仰け反り、身体がぶるぶると痙攣した。「はぁ、はぁ……。ああーっ!」私に呼吸を整える暇も与えず、凶器を叩き込み続ける彼に、余裕はない。それだけ私は炯さんを傷つけたのだと、心臓を鷲掴みにされたかのごとく胸がギリギリと痛む。「このまま子供ができれば、離れられなくなるな」彼がなにを言っているのかわからない。どのみち、近い将来には子供を授かる努力をする予定だった。「あんな男に凛音を渡さない」炯さんが傷ついているのはわかるが、どうして彼はこんなにも嫉妬に狂っているのだろう。彼と別れたところでもう実家に私の居場所はない。そもそも、離婚――婚約破棄など許されないのだ。考えようとするけれど、責められ続ける身体は悲鳴を上げ、上手く考えがまとまらなかった。「このまま出すぞ」ああ、そうか。今日は避妊具を着けていない。いつも、私も仕事を始めたし、せめて結婚式まではと言ってくれるのに。でもそれだけ、炯さんの気持ちが切羽詰まっているのはわかった。「……い、い……です、よ」頑張って手を伸ばし、彼の頬に触れる。できるだけ安心させるように、ぎこちないまでも笑みを作った。その瞬間、炯さんが大きく目を見張った。「くそっ!」誰にともなく怒りをぶつけ、彼が私の身体から出ていく。そのまま勢いよく白濁を私の身体の上へと吐き出した。「……え?炯、さん……?」なにが起こっているのか理解できない。だって彼は、あれほど嫉妬の炎に焼かれていて、私を妊娠させるのも辞さないほどだったのだ。「……ごめん」ひとこと漏らし、炯さんはティッシュを取って自身が穢した私の身体を拭いてくれた。「凛音が俺を裏切るとかあるはずないもんな」自嘲するかのように、ははっと小さく乾いた笑いが彼の口から落ちる。「アイツに無理矢理されたんだ、凛音は悪くないんだって、頭ではわかってるんだ。でも、凛音のことになるとどうしても、余裕がなくなってしまう……」そっと彼の手が、私の頬に触れた。それはいつもの優しい彼で、私も甘えるように頬をすり寄せた。「ごめんな、凛音。こんなこと」レンズの向こうの瞳は、深い後悔で染まっている。それを見たら私まで胸がズキズキと痛んだ。
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第八章 ワルイコトにピンチです 1

炯さんの勧めもあって、ベーデガー教授の件は職場に報告した。――しかし。「個人の恋愛問題には口出しできないよ」「えっと……」年配の男性上司は困ったように笑い、そう言ってきた。この人は本気で、こんなことを言っているんだろうか。「……その気のない女性にキスしてくるのは、あきらかなセクハラだと思いますが」怒りで身体が震える。それでも怒鳴りそうになるのを抑え、できるだけ冷静に伝えた。「え?でも城坂さんもベーデガー教授に言い寄られて、まんざらでもないんでしょ?お菓子とかもらってるし」けれど彼にはわからないらしく、少し意外そうに驚いている。「それは……」お世話になっているお礼だと自分よりも立場の高い人に言われ、断れるだろうか。それに毎回、私は困っているとこぼしていたのだ。どうしてそれを、事実を歪めてこんなふうに捉えられるんだろうか。「とにかく、僕らはなにもできないからね。城坂さんで解決して。それに教授の機嫌を損ねるとかあってはいけないからね」これで話は終わりだとばかりに彼が邪険に手を振る。きっと本音はそこなのだ。教授の機嫌を損ねたら自分の立場が危うくなりかねない。仕方ないので仕事に戻る。ベーデガー教授に会いたくなくて、進んで本を戻していく作業をした。「城坂さん、お昼いこー」「あっ、はーい!」無心に作業をしていたら、いつの間にかお昼になっていた。今日も島西さんと一緒にカフェテリアへ向かう。「なに食べるー?」「そうですね……」上司の反応があれだったからか、今日はあまり食欲がない。少し考えて、サンドイッチとスープのセットにした。「結婚式にあわせてダイエット?」私のトレイの上を見て島西さんが意地悪く笑う。「まあ、そうですね」私もそれに笑ってあわせておいた。「結婚式の準備はどうよ?」「まあ、ぼちぼちです」近々、母たちと二度目のドレス選びに行く手はずになっている。それで決まればいいのだけれど。「……結婚式といえばです、ね」「……うん」私の声が控えめになり、深刻そうになったからか、彼女は一度、お箸を置いた。「ベーデガー教授から無理矢理キスされまし、て」「……は?」その瞬間、真円を描くほど彼女の目が大きく見開かれる。「え、ちょっと待って。嫌がる城坂さんに無理矢理、キスしてきたの?」少し慌てた様子で
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第八章 ワルイコトにピンチです 2

そんなので、面白がらないでいただきたい。私としては迷惑だ。「それに恋に一生懸命な人って、応援してあげたくなるじゃない?もしかしたらそのうち、城坂さんがよろめく可能性もなくはないわけだし」応援してあげたくなる気持ちはわかる、かも。しかし、私が炯さん以外の人によろめく可能性なんて皆無だが。「でも!」顔を上げると同時に、島西さんが軽く両の拳でテーブルを叩く。「同意もなしにキスとか絶対にダメ!相手の嫌がる行為、絶対禁止!」かなり彼女はお怒りの様子で、私の想像からはかけ離れていた。もしかしたらまた、面白がられるんじゃないかと思っていたのだ。しかし、彼女なりにやっていい行為と悪い行為はしっかり線引きされているらしい。そこはちょっと、好感度が上がった。「抗議しなよ、抗議」「一応、副館長には相談したんですけど……」しかし、恋愛は個人の問題だから口出ししないと、相手にしてもらえなかったことを話す。「なにそれ!そりゃ、下手に問題になるのが困るのもわかるけどさー。なんだかんだいっても副館長だって、うちら派遣と同じような立場だし」「そう、ですね……」私たち下っ端は派遣だし、管理職もほとんどが委託業者からの出向だ。そういう立場なので、正規の大学職員よりもさらに学内での地位が低かった。「それでも酷い。上司って私たちを守るためにいるんでしょ?なのに職員がセクハラされたのに無視とかさ」「ですよね!」これは、私が我慢しなければならない案件かと思っていた。私が世間知らずなだけで、本当はこれが当たり前なんじゃないかとすら疑った。しかし、少なくとも島西さんは怒ってくれていて、安心した。「下谷さんに連絡してみなよ。もしかしたらどうにかしてくれるかもしれない」うん、うん、と島西さんが頷く。下谷さんとは派遣会社の担当さんだ。そうか、彼に掛けあうという手があるのか。「今日、終わったら連絡してみます」「うん、そうしなよ」少しだけ先行きが明るくなった気がして、心が軽くなった。「でも、ベーデガー教授に仕事を頼まれたら困るよね」ふたり同時にはぁーっと物憂げなため息が落ちていく。「とりあえず、図書館内ではできるだけふたりっきりにならないように気をつけるよ。お届けも私が代わってあげられたらいいんだけどね……」はぁーっとまた、彼
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第八章 ワルイコトにピンチです 3

午後からは……ベーデガー教授のところへお届けが入っていた。「あの。誰か代わってもらえませんか?」彼とふたりっきりとか絶対になりたくない。事務所にいる人たちに声をかける。「それ、城坂さんの仕事でしょ?私たちが行っても、ベーデガー教授の話し相手はできないし」すぐにひとりが顔を上げ、素っ気なく私に言ってきた。私の仕事にはベーデガー教授専任だとか、ましてや彼の話し相手だとかはない。事実上、そうなっている部分はあるけれど。ちらりと奥に座る副館長をうかがうが、さっと目を逸らされた。今朝、あんな報告をしてきた女性職員をひとりで加害者の元へ行かせるなんて、正気なんだろうか。「あ、私が一緒に……」「島西さんは急ぎの仕事、まだ終わってないでしょ?それにあれくらい、ひとりで持てる」「うっ」せっかく島西さんが助け船を出そうとしてくれたのに、先輩スタッフに止められた。島西さんは私に視線を向けて片手で軽く謝ってきたが、気にしないでと私も首を横に振る。その気遣いだけでもありがたい。「早く行ってきてよ。まだ仕事、あるんだし」「……はい」先輩スタッフに促され、仕方なく本を抱えて事務所を出る。重い足を引きずってベーデガー教授の部屋へと向かった。もしかして島西さん以外のスタッフは全員、ベーデガー教授から何らかの供与を受けているんだろうか……?などと私が疑っても、おかしくない。『ベーデガー教授、ご依頼の本をお持ちしました』『入ってー』留守にしてくれていればいいのにと願ったが、ノックするとすぐに中から声が返ってくる。『……失礼します』おそるおそる部屋に入ると、ベーデガー教授がこちらに向かってきているのが見えた。『ご依頼の本です!じゃあ!』手近な棚に叩きつけるように本を置き、速攻で出ていこうとする。『待って!』しかし私がドアを開けるよりも早く、彼の手が私の手首を掴んだ。『あれから大丈夫だった?』教授の声は心配そうだが、そもそも原因を作ったのは彼だ。なのに、白々しい。『彼に酷いことをされなかったかい?』離してくれと手を振るが、彼の手は離れない。「は、離して……!」恐怖で身体が硬直する。また、無理矢理キスされるんじゃないか。いや、キスだけならまだいい。ふたりっきり、しかも鍵のかかる室内、それ以上の行為におよばれても不思議で
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第八章 ワルイコトにピンチです 4

……キスなんて絶対、されたくない。ただなすすべもなく、教授の顔を見つめる。彼の唇が私の唇に触れる――直前。ブー! ブー! ブー! ブー! と、耳をつんざくようなけたたましい音が私のエプロンの中から聞こえてきた。『なんだ!?』さすがのベーデガー教授も酷く驚いた様子で、私から離れる。支えがなくなり、私はガクンとその場に座り込んだ。『ほんとに、なんだ!?』音にかき消され、教授の声はほとんど聞こえない。彼は音の元を特定しようと、私の身体――エプロンに触ってきた。「い、いや」かろうじてそれだけを絞り出し、逃げようと後退する。しかし、すぐに棚にぶち当たってしまった。『これか』抵抗する私のエプロンから彼が取り出したのは、――私の携帯、だった。『くそっ、止まらない!』教授は音を止めようと四苦八苦やっているが、一向に止まらない。それどころか。「ベーデガー教授!なんの音ですか!?」音を聞きつけ集まってきた人たちがドアを叩いた。「スミマセン、警報装置ガ誤作動ヲ起コシタミタイナンデスヨ」ドアを開け、爽やかに笑って彼は説明している。……誰か、助けて。そう願うものの、ドアがちょうど目隠しになり、私の姿は彼らには見えなかった。「止メ方ガワカラナカッタンデスガ、説明書ガ出テキタノデ、スグニ止メマス。本当ニスミマセン」「わかりました、よろしくお願いしますよ」教授の説明で納得したのか、ドアが閉まる。足音が遠ざかると同時に彼は携帯を床に落とした。ガツッ、と勢いよく革靴の踵が携帯に叩き込まれ、音が静かになる。『ほんとに、うるさいったらありゃしない』はぁっと面倒臭そうにため息をつき、彼は私の前にしゃがみ込んだ。『あんなものを持たされているなんて、可哀想だね』彼の手が私を顎にかかり、無理矢理、眼鏡越しに目をあわせさせる。どこか愉しそうな碧い瞳を、怯えて見ていた。『やっぱり、僕のところへおいでよ。僕なら……』「凛音様、いらっしゃいますか!」外から声をかけられると同時に、ベーデガー教授の背後で――ドアが、吹っ飛んだ。『……え?』これにはさすがに、彼も固まっている。「……キサマ、凛音様になにをしている?」「あっ!」腹の底に響く声で凄み、踏み込んできた女性――ミドリさんは教授を蹴り飛ばした。「凛音様になにをしていると聞いてるん
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第八章 ワルイコトにピンチです 5

「私はこういうものでございます」声をかけてきた中年男性職員を振り向き、ミドリさんは準備していたであろう名刺を渡した。「そちらの男性が凛音様に暴行を働きましたので、踏み込ませていただきました」「そうなんですか?」彼がベーデガー教授に問いかけるが、教授は呼吸を整えるのに必死なようだ。それでも違うと言いたいのか、彼は首を小さく横に振った。「違うと言っているようですが。それにあなた、実際に見てたんですか?」半ば高圧的に男性職員はミドリさんを見下ろしている。もしかしたらまだ若い女性だからとバカにしているのかもしれないが、普通の若い女性はドアを蹴り飛ばしたりしないとは思わないんだろうか。「……はぁっ」ミドリさんが小さく、ため息をつく。「なっ……」「抗議等は弁護士を通じておこなってください。連絡先は先ほどの名刺に」馬鹿にされたと気づいたのか食ってかかろうとした彼を制するように、ミドリさんは淡々と事務的に告げた。「凛音様を早く安全な場所へお連れしたいので、我々はこれで失礼いたします」礼儀正しくお辞儀をするミドリさんを、周囲の人間は唖然として見ている。「立てますか?」私の傍に膝をつき、ミドリさんは聞いてきた。「立て……あっ」身体に力を入れて立とうとするが、すぐにぺたんと座り込んでしまう。「失礼いたします」「うわっ」困って彼女を見上げたらいきなり抱きかかえられ、慌ててその肩に掴まった。「あっ、ま……」「……ああ」去っていく私たちを止めようとした男性職員を、ミドリさんが振り返る。「この件、三ツ星の若社長の耳にすでに入っておりますので、そのおつもりで」「ひっ!」小さく悲鳴を上げて、その場にいた人間のほとんどが棒立ちになったけれど、なんでだろう……?ミドリさんは車に私を乗せて運転席に座り、すぐに出した。「すぐに旦那様のところへお連れします」「……うん」シートの上で膝を抱え、丸くなる。「本当に遅くなって、申し訳ありませんでした」「……ううん。来てくれて、ありがとうございます」あのままだったら、どうなっていたんだろうか。まさかあんなところでという気持ちはあるが、わからない。でも、あの音とミドリさんに助けられた。もう安心していいんだってわかっているけれど、身体の震えはいつまで経っても止まらない。ミドリさんは運転し
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