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All Chapters of 魔天開祖: Chapter 21 - Chapter 30

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第20話「熱気球①」

 魔物たちの住む古城では、強力な部下を立て続けに失った事でいくぶん動揺していた。 ヘドロスライムは不在であった。「ガルガル…あのスライムはどこに行ったのだ」 獅子の魔物は苛立ちを隠さずに聞いた。「彼女は人間たちに恐れをなして逃げたんじゃないかな、バルガもいないし」 黄金の騎士が答える。 老いた魔導師は祭壇を仰ぎ、呪文を唱えて儀式を行っている。「おい。お父様はいつになったら復活なさるんだ?」 騎士がぶっきらぼうに声をかけると、魔導師は儀式を中断した。「魔物たちの絶対量が不足してきている」 探るような目つきで騎士が呟く。「あと少しだ。しかしまだ天使の血が足りぬ」 魔導師が答えると獅子の魔物が割って入った。「今度はオレが一人で行くグルル」「そうだね、あの半天使の実力は分かった。魔導師くんには悪いが、キミがカタをつけてもいいだろう」 騎士の言葉に魔導師がピクっと反応する。「まったく、天使どももその辺を歩いてりゃもっと楽なんだがな。ガルッ」 獅子がそうぼやき、騎士がハハハと笑う。(いよいよか…) 魔導師は一点を見つめたまま何も語らなかった。◆ セーラたちはレムリア城の城下街に来ていた。 この街には空飛ぶ装置の研究をしているトムという男がいるらしい。 四人はその男を訪ねてみた。 トムはセーラたちを歓迎し、熱気球の説明をしてくれた。「こう、ろうそくの火の上に紙の袋をかぶせるだろ。すると袋が上へ飛んでいくんだ。この原理を応用して気球を作ろうと思うんだけど、こいつには欠点があってね。紙や布は燃えやすいから危ないんだ。ああ、どこかに燃えなくて軽い布はないものか」 燃えない布と聞いてマリアは水の羽衣を思い出した。 あれの布地を使えば気球が作れるのではないかと思ったのである。 しかし布地がどこで入手できるのかはわからなかった。 四人は気球製作を手伝うべく、調べてみることにした。 とりあえず織物の村ロマーナに行ってみる。 村の人に尋ねると、水の羽衣はエルフの里でしか入手できないとのことであった。 しかし村の人もエルフの里がどこにあるのかはわからなかった。 一行が出かけようとすると、村長が声をかけてきた。「お主たち、エルフの里に行ったらこのエルフのルビーを返してきてもらえないだろうか。これは昔人間とエルフのいざこざがあったと
last updateLast Updated : 2025-11-16
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第21話「熱気球②」

 三日後、ようやく布地は完成した。 聞けばアンは来月結婚するのだという。 しかも相手は人間だそうである。 一行はアンに感謝と祝福の言葉を述べ、レムリアに戻りトムに布地を届けた。「おお、ありがとう! これが水の羽衣の布地か。これさえあれば気球が完成するだろう。君たちすまないが、明日またここに来てもらえないか」 翌日トムのところに行くと気球がある。 感謝の印に第一号機をプレゼントしてくれるのだそうだ。 セーラが素朴な疑問を投げかけた。「あれ? ろうそくはないんですね」「ああ、実際にはろうそくじゃなく燃えるガスを使うんだ。それが一番軽いからね」 トムはガスを燃やし、一行は乗り込んだ。 気球は徐々に空へ舞い上がり、手を振るトムの姿がどんどん小さくなっていく。 セーラは熱気球を手に入れた! これがあれば、今まで通れなかった岩山の上を飛び越えて行ける。 また一つ世界が広がったのであった。 四人はしばらく気球で空の旅を楽しんだ後、レムリアへ戻ってきた。 すると城の中が何か騒がしい。 近くの兵士に聞いて見ると、メイ王女が何者かにさらわれたとのこと。 また別な者に聞くと、姫をさらった輩は東の森の方へ逃げていたという。 一行はメイ姫を助けに向かった。 そのころ誘拐犯の二人組は東の森の中にいた。「へへっ、意外と簡単だったな」「魔物からは半金をもらいやしたし、後はこのお姫さんを人質に城から金を引き出させれば大金持ちでやんすね」「さて、残りの半金を渡しに魔物が来るはずだが……」 話をしているとアークデーモンが空から降りてきた。「おまえたちご苦労だったな」「へへっ、それじゃ残りの分を……」「おまえたちにはこれをやろう。遠慮せず持っていけ」 そう言うとアークデーモンは炎を吐いた。 普通の人間である二人にはひとたまりもなかった。 そしてアークデーモンがメイ王女を抱え空へ飛び立とうとしたところ、セーラたち一行と鉢合わせた。 セーラの斧がアークデーモンの翼を引き裂いた。「き、きさま、俺の翼を!」「なぜその二人を殺したの」「用が済んだから消えてもらっただけだ」「お姫様をさらってどうするつもり?」「それはそのうちわかる」「それはどういう……」 話してるうちに、城の方からドーンという大きな音が聞こえてきた。見るとゴーレムや魔物たち
last updateLast Updated : 2025-11-16
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第22話「獅子の魔物①」

 気球による空の旅は快適である。 スピードは速くないものの、魔物たちに遭遇しないというのは何事にも代えがたい安堵があった。 やがて隣の大陸が見えてきた。 更にしばらく行くと前方に瓦礫と化した街があるので地上に降りる。 かつてそこにあったエルマールの街は、もはや存在しなかった。「ひどい……」「街の人はどうなったんだろう」 すると背後から獣の唸り声が聞こえた。「グルルルーおまえたち、意外と早かったな」 振り返るとそこにいたのは、以前、セテロの町外れでグリフォンに乗ってセーラを襲った巨大な獅子の魔物であった。「きさま、一体何のためにこの街を滅ぼした!」「街の人たちはどうしたの!」「この街はおまえたちをおびき出すために滅ぼしたのだ。街の人間は知らんな。地獄にでも逃げたんじゃないのか。ガルガルガルガーッハッハッハッ」「このやろう……そんなことのために!」「次はオレ様から質問だ。本物の天使の斧はどこだ」「本物!?」「俺様にこんな偽物をつかませやがって。よくも恥をかかせてくれたな」 そう言うと、獅子は偽物の斧を投げてよこした。 確かにあの時バルガが奪っていった斧である。 試しにセーラが持つと淡い青色に光る。「おい、そこの女。おまえが半人前天使だったとはな。おまえの背中にある斧が本物だろう。それをよこせ」「よこせと言われて素直に渡すと思う?」「その言葉後悔するぞ」 獅子の魔物が襲いかかってきて戦闘が始まった。 獅子は鋭い爪が生えた四つの前足で空を切り裂いた。 かまいたちのような斬撃が地面を切り裂きながら四人を襲う。 四人は新調した防具を頼りにガードに徹した。 致命的なダメージは受けない。しかし…。「みんなは下がっていて! コイツは普通の魔物じゃない!」 そう叫んでセーラはみたび家宝の斧を構えた。 斧は青く輝き、獅子に会心の一撃を与える。 カイとアレフはマリアのヒールで休みながら体育座りで見物することにした。「くっ、このままでは済まさん」 獅子は鋭く凶暴な牙でセーラに噛みつこうとした。 セーラはひらりと避けた。 すかさずセーラはたたみかけるように斧を振り回し、獅子の身体に幾筋もの切り傷をつけていった。「……何故?」 セーラは焦っていた。 この巨大な獅子に自分は何回攻撃をいれたことだろう。 獅子はダメージを
last updateLast Updated : 2025-11-21
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第23話「獅子の魔物②」

«空間転移魔法α» セーラたちパーティーは戦闘から強制離脱させられた。「チッ、逃げられたか。グガルル…あのクソ爺め」 獅子の魔物はのしのしと歩きながら、片方の後ろ足で顔を掻いた。 一行が飛ばされたところは、オルドの家に近いミラの街であった。 ひとまず逃げることができて安心した三人は街の宿に入り、セーラを寝かせた。「わ、わたし…は、誰なの…」 セーラはかなり苦しそうである。「戦闘が長引いたせいで、碧い珠の力を使いすぎたんだ」「家宝の斧はやはり諸刃の剣だな」「それで碧い珠に力を与えるにはどうしたらいいの?」「前に珠を砕かれたときも同じことを言ってたが、結局俺たちにはわからなかったな」「時間がもったいない。オレがオルドのじいさんを連れてくる」 オルドの家の林まで来たカイはオルドを呼んだ。 だがオルドは一向に姿を現さない。 林の中に入っても前回同様いつの間にか林の外に出てしまう。 カイはなんとかオルドの家へ行こうとしたが、やがてあきらめてミラへ帰って行った。「ダメだ。オルドのじいさんはどこにもいない。セーラの具合はどうだ」「あまり芳しくないな。呼吸が段々激しくなっている」「くそっ、なんでこんなときにあのじいさんはいないんだ!」「ねえ、どうしよう。あたしどうしたらいいのかわからない」「俺にもどうしたらいいのかわからん」 アレフは頭を抱えた。 そんな中、カイがあることを思い出した。「レムリア城で魔物たちに奪われた魔光気の指輪を覚えてるか? あれは確か聖なる力を魔の力に変える物じゃなかったか?」「確かにレムリア王はそう言っていたわね」「だとすれば、その逆の指輪も存在するかもしれない」「なるほど、可能性はある。それじゃ早速レムリア城に行ってみよう」 セーラをマリアにまかせて、カイとアレフは熱気球でレムリアまで向かった。 レムリア城に着いた二人が王に聞いてみると、推察通り魔法気の指輪と対になる聖光気の指輪があるという。 しかし聖光気の指輪はレムリア王家に伝わっておらず、どこにあるのかわからないとのことであった。 二人はレムリア城と城下町を探したが、やはり見つけることはできなかった。 二人は近隣の街を調べることにした。 その頃マリアはセーラを看病していた。 と言っても何ができるわけでもない。 セーラは変わらず苦しそ
last updateLast Updated : 2025-11-21
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第24話 「彼方」

 カイとアレフは懸命に手掛かりを探していたが、未だに何も掴めないでいた。 「次はどこへ行けばいいんだ」 「残り時間を考えると、洞窟や塔を探している暇はないな」 「街や村ってことか。そう言えば、ハムルの街にあった開かずの蔵にあるということはないか?」 「たとえあそこにあったとしても、蔵を開けられない以上はないのと一緒だ。あそこは除外しよう」 「くそー、後はしらみつぶしか! 間に合うのか!?」  そのうち空が白んできた。 「夜が明けたか」 「遅くとも昼までには見つけないとセーラが危ない!」 朝になったので、二人はエルフの里に向かった。  そして女王に会い、聖光気の指輪のことを聞いてみた。 「聖光気の指輪と魔光気の指輪のことは知っています。しかし私は聖光気の指輪が天使の持ち物であったということしか聞いたことがありません。おそらく他の天使の装備と一緒に保管されていたのではないかと思います」 二人は女王に礼を言いその場を去ろうとすると女王に呼び止められた。 「お待ちなさい。以前エルフのルビーを返していただいたときに、お礼をしていませんでしたね。これをお持ちなさい」  エルフの女王から賢者の石を渡された。  丁重にお礼を言うと二人はエルフの里を後にした。「天使関連の装備があった街は四つしかないが、どこから行くか」 「それなんだが、アルメリアの天使の斧があった倉庫って、オレたち中を確認してないよな」 「確かにそうだな。忘れていた」 「魔物は天使の斧しか眼中になかった。もしかしたら他に何かあるかもしれない」 「よし、あたってみよう」 二人はアルメリアに飛んだ。  アルメリアに着き天使の斧があった倉庫に行くが、扉は閉まっている。  カイの解錠呪文とアレフは魔法の鍵で倉庫の扉を開け、中に入って行った。  二人で中を探していると、カイが叫んだ。 「おい! あったぞ宝箱が!!」 「おお、開けてみよう!」 中には指輪が入っていた。 「これが聖光気の指輪か? 光っていないからよくわからんが」 「一緒に手紙が入っている」  カイは手紙を読み始める。 「『聖なる指輪は聖なる力なり。聖なる力宿りし物その力とならん』 なんだこりゃ」 「とにかくセーラのところへ戻ろう」  二人は急い
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第25話 「天使長オルド」

 気球で西に行くと、岩山に囲まれたひときわ高い塔がある。  その過酷な環境ゆえに、これまで塔を登れた者はいないと言われる。  一行は今こそ、その塔に登ってみることにした。  大仰な扉には鍵はかかっておらず、開けると問題なく入ることができる。  中にある階段を登っていくが、ここは魔物が出てこない。  塔の中が聖光気で満たされているため、魔物たちが近寄れないのだとセーラが語った。  しかしながら登っている階段が果てしなく長い。「この階段どこまで続いてるんだ?」 「そんなのわからないわよ」 「いくら魔物が出ないといっても、さすがにこれはきついな」  そして永遠に続くかと思われた階段の目の前が突然開けた。  どうやら頂上にたどり着いたようである。 部屋はかなり広く、そこには玉座に座った老人がいた。  老人は「よく来たな」と微笑むと、全身が光に包まれ、美しい羽根の生えた青年の姿へと変わっていった。  青年は身体が透けておりセーラたちは驚いた。 「あなたは……」 「私は天使長オルド…じゃ」  四人はしばらく言葉が出なかった。「私はここに居ながらにして、この世界のすべてを見ることができる。だが、私の力は地上では大きく制限されてしまうのだ」 「そうか、それであんな汚いじじいの姿に」 「……。セーラよ、お前はもう感じているはずだ。ここでは秘めた本来の力を取り戻すことができる」 「そうなの? セーラ?」  マリアが訊ねるとセーラは静かに頷いた。 「魔物たちの本拠地は、この塔の遥か南に位置する呪われし島『クリムゾン』、その最も深い森の奥に潜む『ヘルキャッスル』という古城だ。  魔族の父はまだ封印されたまま眠っているが、いずれはこの塔にも魔の手が延びるだろう。倒すのは今しかない。しかしお前たちがここを出る前にやることがある。セーラよ、その天使の斧を私に貸してくれるかな」 セーラはオルドに天使の斧を渡した。  オルドはその斧を両手に持ち力を込める。  すると斧は白くまばゆい光を放ち、倍くらいの大きさの鉞になった。 「それが真の天使のまさかりだ。そのあまりにも強大な威力ゆえ、斧の形に封印されていたのだ。セーラ、持ってみるがいい」 なぜ斧型なのか疑問に思いながらも、セーラが鉞を受け取り構える
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第26話 「ヘルキャッスルの攻防」

 一行はヘルキャッスルに辿り着き中へ入って行く。  入り口でセーラはなぜか違和感を感じたが、それ以上は気に留めなかった。  中は広く迷路のようになっており、次々と魔物が現れる。  さすがに敵の本拠地である。  四人は現れる魔物たちを倒しながら進んでいった。 二階への階段と外気の入る広い露台を見つける。  そこで待っていたのは黄金の騎士であった。 「ようこそ。魔天使とその仲間たち」  黄金の騎士は、全身金色のフルアーマーで、脚がいくつもある灰色の馬に乗っていた。  手には暗い剣を携え、刀身からは血が滴り落ちている。  まるでたった今誰かを斬ってきたばかりのような。 騎士はゆっくりとセーラ達を見回した。 「そして、さようなら。スレイプニル!」  そう言うと騎士は馬を駆り、襲いかかってきた。  目にも止まらぬスピードで距離を詰め、剣でアレフの腹部を貫いた。「ぐあっ」 「アレフ!!」 「なんて速さなの!」 「マリア、早くヒールを」  騎士は更にそばでヒールをかけようとしているマリアに斬りかかる。  セーラが天使の鉞でその剣を防御する。  背後に飛び退く騎士。  アレフは口から血を流し絶命していた。  泣き叫ぶマリア。 圧倒的な力の差にパーティーは退却せざるを得なかった。 「ガルガルッ! 逃げられると思うなよ!」  しかしアレフを担いだカイが、階段を降りてきた獅子の魔物と鉢合わせ、その鋭い爪で切り裂かれた。 「あぐぅぅ」  防具無視で裂かれたカイの胸から大量の血が吹き出す。 「キャアッ!」  マリアが悲鳴をあげてその場にへたり込む。(このままでは全滅する……!) セーラは慄然とした。  以前のような空間転移魔法の魔力も感じられない。  助けは来ない。  セーラは迷わず碧い珠をまさかりの柄の穴に入れた。  天使の鉞が碧く輝き出す。 「ふざけないでよ…」  セーラが呟くと鉞は更に強く光りだした。 気合いとともにセーラは近くの獅子に殴り掛かった。  獅子の魔物は爪で防御する。(ギィィィン!)「何だと!?」  獅子の太く鋭い爪が砕ける音が響く。「あれが…我らを傷つけることのできる武器か」  黄金の騎士は剣を斜めに構え直した。
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第27話 「暗闇の向こうの決意」

  ───我の魂は孤独に疲れたのだろう。  騎士に首を裂かれたが、それでも我が命はすぐには途絶えぬ。  皮一枚繋がったまま、この首は地に落ちなかった。 ルーテ、我の生み出した魔の最高傑作。  お前にもう一度会えれば、罪滅ぼしをしよう。  お前の生を台無しにした、我はどのような償いをすれば良いのか。  いかなる理由を持ってしても、お前は我を許さぬだろう。  どんな言葉を交わすのか想像もつかぬが…。  あの人間の娼婦、欲深な、ヘドロの如く混濁した心に、我は新たな生命を宿した。  騎士も、獅子も、同様に、地の底で死にきれぬ魂を掬い上げ、力を与えた、愛すべき我が子たち。 いつしか我は、愛する存在に、この魂を滅して欲しいと願うようになった。 だが、その前に……我には成すべき事がある。  魔に生まれしものの悲願である、父の復活。  そして、天の消滅。  それを成し遂げるまで、我が命は尽きぬ。  ───。◆ 天使長オルドは魔と天が生まれた起源について語り、滅ぼすべき敵は魔の始祖である古の魔導師と、彼が作り上げる魔族の父だという事をまずセーラ達に伝えた。「そんなとんでもない奴がオレ達の敵なのか…」  カイが怖気付く。  ほんの数刻前に死にかけたのだから無理もなかった。「古の魔導師は、天使たちの血と頭骨からなる怪物を作り上げようとしている。  唯一の弱点である、『天使属性』による『魔族特攻』を克服した個体、『ニーズ・デス・ヘックス』と呼ばれる悪魔の秘術がそれを可能にしている」  オルドは悲しげな微笑みを浮かべて語りかける。 「セーラ、お前の記憶に、魂に、恐らくプログラムされているであろう。お前の使命は魔の父を討つこと、その為にお前は生まれ、転生したのだ」  セーラも何かを悟ったような、迷いのない表情でそれを聞いていた。「それと、アレフだが、セーラと同じ方法で復活させるしか手はない」 「同じ方法って、まさか」 「すまないな……魔族に殺された人間の魂は、私たち天使の力でも甦らせることが出来ない、他に方法は無いのだ」 「アレフもセーラみたいになるの!?」 「いや、動物や普通の人間は、生前の記憶や善性を消失して、魔族の手先として生まれ変わる。お前たちが戦ってきた魔物は、古の魔導師が魂を削っ
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第28話 「ヘドロの末路」

 私は全てを手に入れたい、力も、世界も……。  ヘドロスライムたちが湿原の奥に踏み込むと、蝿と竜を足したような小型のモンスターが多数襲ってきた。 「くっ……こいつら我らの眷属ではないようです!」  まとわりつかれ狼狽するバルガ。 「鬱陶しい蝿め」«ナパームデス» ヘドロスライムは爆炎流動の呪文を唱えた。  炎の球が燃えながら周囲に飛び散り、次々と敵を焼き払う。 「すげぇ……」  凄まじい破壊力とその拡散性にバルガは慄いた。 更に奥へ進むと、こんもりとした人体の頭部のような草の塊が生い茂る洞窟の入口が見えた。 「あそこか」  ヘドロスライムを背に乗せたバルガは、恐る恐る洞窟内に足を踏み入れる。  中には夥しいコウモリの群れが飛び交っていた。 内部は一本道で、しばらく歩くと視界が開けた広い場所に辿り着いた。 「何者か……」  地の底を這うような低い声。  そこには深紅の角を二本生やし、漆黒の鱗が幾重にも重なった動体を持つ巨大な竜が佇んでいた。  脇にはそれより幾らかサイズが小さい幼竜が二体いる。(ひええ……でかすぎる!) バルガが逃げ腰になり後ずさる。  ヘドロスライムは小針を突き刺してそれを制した。「あなたがこの地を守護する竜か?」  ヘドロスライムが問う。  漆黒の竜はそれに答えず更に訊いた。 「財宝を狙うものか」(さすがは伝説の地の主、すぐには襲って来ぬ) ヘドロスライムはフッと鼻で笑いながら巨大な竜を見た。  幼竜の一匹が苛立たしげに翼を羽ばたかせる。「私はファイアクレストと呼ばれる秘宝を探しに来た。無益な戦いは好まない」  ガタガタと震えるバルガのせいで、ヘドロスライムの身体は常に上下に揺れていた。 「愚か者め!」  漆黒の竜は大地が震えるような大声で答えた。  と同時に幼竜の片方がカパッとその口を開く。  強い酸性のブレスが煙を立ててヘドロスライムを襲う。«レジスト・ブレス» ヘドロスライムとバルガの眼前に薄いヴェールが出現し、ブレスを無効化する。 「この私に」  ヘドロスライムは更に呪文の詠唱を始める。 「そんなものが効くと思うか!!」« エクレールラルム・プリズン» 幼竜の四方に火柱が取り囲み✕印を切る。  火柱の中
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第29話 「造られた天使」

 裂かれた首の傷が再生した魔導師は、再び秘術による儀式を行っていた。 「不完全なまま復活させるのは悔やまれるが」  騎士らが自分を疑い始めている以上、猶予はなかった。 魔導師が呪文を唱え終える。  すると暗闇の奥から異形の生物が動き出した。  それは大小様々な天使の顔面を持ち、背には顔の数だけ羽が無造作に生えており、ドラゴンよりも巨大な体躯は薄暗く透けていた。 地響きが起きて古城全体が大きく揺れ、天井から瓦礫が崩れ落ち始めた。  轟音と煙の中で城が瓦解し、異形の天使の集合体は大地に降り立った。  魔法アイテムによる空間移動で逃げたセーラたちを探して、城を離れていた騎士と獅子は、すぐにその異変に気づいた。 「あの音と煙は……我らが城の方角」 「ガルガルッ! まさか天使どもの別働隊が!?」 「いや」  黄金の騎士はニヤリと笑った。 「お父様が復活なされたのだ」  スレイプニルの手網を引き、くるりと踵を返す騎士。 「戻るぞ!」  準備を終えたセーラたちも気球でヘルキャッスルがあった場所へ到着していた。  しかし気球から様子を見ると、ヘルキャッスルは瓦壊しており、そのおよそ一キロ四方が暗い闇に包まれていた。 「魔導師はこの世界を闇に変えようとしているのか」 「城が壊れてる……どうしたのかしら」 「分からない。だが、闇の空間が増えるとオレたちに不利になるよ」 「早く魔導師を倒さなくちゃ」  そう呟いたセーラだが前回も感じた違和感が気になっていた。  何かを忘れているような気がする。  このまま進むと取り返しがつかなくなりそうで足が止まる。  マリアが疑問に思いセーラに声をかけた。  セーラは考える。  だがどうしてもわからなかった。「あれを見て!」  マリアが指さした闇の中心には、黒い球体が浮いていた。  球体の中には老いた魔導師が、そしてその背後には一見すると巨木のような異形の生物が佇んでいた。「あれが魔物の父……」  カイは目を凝らした。 「まるっきり化け物やないか!!」  その生物の頭部は多数の人面で覆われており、カイはこれまで出会ったことのない、異質でおぞましい雰囲気を察知して震えた。  セーラはオルドが語った伝説を思い出す。  かつ
last updateLast Updated : 2025-11-30
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