結婚式直前、京藤文彦(きょうとう ふみひこ)は新人インターンとの夜の密会をスクープされた。逆上した朝日陽子(あさひ ようこ)は、気分転換に飛行機で旅立った。しかし、なんと5年後の世界に来てしまったのだ。彼女はまず両親に電話をかけたが、その番号はもう使われていなかった。次に開いたノートパソコンには【当該IDは死亡により抹消されました】という通知画面――それを見た瞬間、足元がぐらついた。俯くたびに、涙が雫となってスマホに落ちる。すると、その衝撃でスリープ画面が光りだした。映り込んだのは、文彦とのウェディングフォトだ。ようやく状況を飲み込んだ陽子は、慌てて画面ロックを解除し、文彦への通話ボタンを押す。受話器からは発信音だけが響く。彼女は息を殺してその音を数え続く。すると、次の瞬間。聞き慣れた声が耳の奥に響いた。「もしもし?」張り詰めていた心が一気に緩み、困惑と悔しさが堰を切ったように溢れ出る。「あなた、何かおかしいことが起きてる……怖い……今、迎えに来てくれる?」文彦は一瞬の沈黙の後、それから冷静に答える。「わかった」……懐かしいオフィスにたどり着いて、初めて陽子は安心感を得た。彼女は文彦に駆け寄り、その胸に顔を埋めて声を詰まらせた。しばらくして、文彦は眉をひそめて彼女を離した。「タイムスリップした、だと?」陽子が慌ててうなずくと、彼はため息混じりに笑った。「相変わらずだな、でたらめを平気で言うのは。五年前に逃げ出したくせに、今度はとんでもない言い訳を持って来やがって」「私の言うこと、信じないの?」ついこの間まで一緒に結婚写真に収まっていたというのに、今目の前の男は見知らぬ他人のように冷たかった。「どう信じろというんだ?五年前、お前が消えてから、俺たちの婚約は周りの笑いものになった。お前の両親は必死に探し回り、疲労運転で事故を起こして他界したんだぞ」陽子は苦しげに目を閉じ、震える体を必死に堪えた。ようやく声を取り戻して問うた。「それなら…あなたは、この五年間、私を探してくれたの?」文彦の視線は冷ややかなまま、沈黙を貫いた。その時、優しい女の声がドアの方から聞こえた。「文彦、差し入れだよ……」陽子の体は一瞬で硬直し、血の気が引いていくのを感じた。振り向く勇気もなかったが、背後から近づ
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