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All Chapters of BL小説短編集: Chapter 121 - Chapter 130

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チェンジ The デート5

「これが、騒がずにはいられようか。陽さんの舌で堪能するソフトクリームの甘さが、いつもよりあまぁく感じるんですよ。躰の中にじわじわと染み込む」「普段は口にしないからだろうな。俺も同じことを感じていた」「俺の顔なのに、エスプレッソカップが様になってる。2割増しでイケメンになってます!」 長いスプーン片手に熱く語られても、自分で宮本の顔を見ることができないので同調できない。「残念ながら俺は、イケメン度がだだ下がりしてる。知り合いがこの姿を見たら、目を逸らして見なかったことにするくらい、酷い顔をしてるぞ」 同じタイミングで、2人そろって吹き出した。笑いを抑えようとしても、どうにも可笑しくて、お腹を抱えながらクスクス笑い合った。(夢の中なのに不思議だ。匂いだけじゃなく、味覚まではっきりと分かるなんて。雅輝と味覚の違いをこうして分かち合えることも、いいものだな――) そんなことを考えつつ、エスプレッソカップをソーサーの上に置き、咳払いをしてから宮本に話しかけた。「ちょうどいい機会だから、春物の服を見に行こうぜ。自分を見ながら洋服を試着するなんて、普段はできないことだろ」「確かに! いいことに気がつきましたね、陽さん」「会話はいつも通りなのに、見た目が入れ替わってるから、何だか変な気分だな」「そうそう。入れ替わってみて、あれって思ったことがあったんですけど」「なんだよ?」 喋りながらも、器用にデザートを食していく宮本。口の端にチョコソースがついているのは、最後に指摘してやろうと心に留める。「陽さんってばイケメンなのに、すれ違う人が振り返ったり、遠くから熱視線を飛ばされたりしないんだなぁって」「俺レベルで、そんなことするヤツいねぇよ。恭介レベルまで引き上げなきゃ、そんな事態にならないから」「そうなんだ、みんな見る目がないんだな」「そんなこと言って褒めてくれるのは、雅輝くらいしかいないさ。ありがとな」 30過ぎのいい歳した自分なんて、そこら辺に転がってる石や雑草と大差ないのに。なんて考えながらちょっとだけ俯いた。
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チェンジ The デート6

(頬が熱い。きっと赤くなってるに違いない。宮本の顔でこんなことになっていたら、間違いなく――)「陽さんってば赤くなっちゃって。可愛いんだから!」「言うと思った、やっぱり言いやがった。お前、自分の赤ら顔を見て、よくもまぁ可愛いなんて言えるな」 ぷいっとそっぽを向いてふて腐れた橋本の頬を、宮本は手を伸ばしてツンツン突っつく。「自分の顔だけど中身は陽さんですから、やっぱり可愛く見えちゃうんです。でも本音を言ったら、ちょっとだけキモい」「だろう、そう思うだろ。俺の目に映る自分のデレた顔も、すっげぇ気持ち悪い」 同調した宮本の言葉で顔をもとの向きに変え、語気を強めて気持ち悪いを連呼した。「でもね、陽さん」「ぅん?」「陽さんが見てるその顔は、きっと俺の好きな顔です」「なっ!? ちょっと待て。だらしなく目尻を下げて、ニヤけてるっていうのかよ」 そう指摘すると宮本は目尻を指差し、えへへと笑う。普段はしないその笑い方に、ぞっと悪寒が走ったのは内緒だったりする。「ここにできる笑い皺が、さらに可愛らしさを強調してるんです」「へー……」 テーブルに置かれたチョコレートパフェがなくなっても、熱心に橋本について語る宮本の話を遮ることはできなかった。 宮本がどんなことを思っているのかを、余すことなく喋る姿を通して、自分の顔を見ていた。(相変わらず萌えポイントは分からないが、こんな俺を一途に愛してくれることは分かる――) デレまくる目の前の自分の顔は見たくなかったが、微笑みながら話に耳を傾けたのだった。
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チェンジ The デート7

***(意外なことが分かりすぎて、言葉にならない――) 宮本の熱い語りが終わり、ファミレスを出て車を少々走らせたのちに、コインパーキングに車を停めてから、ファッションモールまで歩いて行った。「この間、バードストライカーズのメンバーと飲みに行ったんですけど――」「おう」 橋本と出かけるのが嬉しいのか、いつもより饒舌に喋り倒す宮本の話に、やっとという感じで返事をした。 どうしてやっとなのか――一緒に並んで歩いても歩幅が違うため、少しだけ小走りにならないと追いつけないという、おかしな事態に陥っていたのである。「店長にいきなり、年上の彼女に告白したのかって訊ねられてしまって」「あー、そういえば一緒に話を聞いていたっけ」 頭の中に過去のことを反芻させながら、宮本の隣に並ぶように必死になって足を動かした。「店長の言葉に、周りにいたメンバーがギャーギャー騒ぎ出しちゃったんです」「それはお前が、車とアニメの話しか、してなかったせいだろ」「それはそうなんですけど。陽さんと付き合ってることは言えないので、とりあえずまだ告白してないことにしました」「俺の予想、だと、誤魔化しきれてないと、思うぞ」 途切れとぎれの橋本のセリフを聞き、宮本は足をぴたりと止めた。「あ……」「雅輝?」 しまったという表情をありありと浮かべて、口元を押さえる。このままでいたら隠されるかもしれないと考え、睨みを利かせながら顔を近づけてみた。(しかしながら今は宮本の顔をしてるから、効力があるかどうかは分からねぇな) そんなことを思っていると、沈みきった顔つきで口を開く。「今の俺は陽さんだったのに、いつもの感じで歩いちゃってた」「いつもの感じ?」「すみませんでした。足、速かったですよね。陽さんの歩くテンポに合わせて、いつも歩いていたので。車での移動が多いから、こうやって並んで喋ることって、滅多にないじゃないですか。遮りたくなくて、いつも急ぎ足で歩いていたんです」 衝撃の事実を知り、寄せていた顔を遠のかせた。
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チェンジ The デート8

「そうだったのか、全然気がつかなかった。悪かったな」 肩を落としてしょんぼりした橋本に、宮本は慌てふためいて弁解したのだが――。 微妙な心境を抱えたままだと気分が乗らず、ショッピングモールを短時間滞在したのちにコインパーキングに向かい、お互い無言で車に乗り込んだ。 バケットシートに座り、手慣れた感じでシートベルトを締めた宮本が、インプのエンジンをかける。そのときにアクセルを二度踏み込むのが、宮本の癖になっていた。 耳に響いて聞こえてくるエキゾースト音に導かれるように、重たくなっていた口がやっと動く。「雅輝、どこか行きたいところあるか? スーパーで食い物の買い出しとか」 橋本がシートベルトを締めながら訊ねると、腕を組みながら車内にある時計に視線を飛ばした。「むぅ、そうですね。この時間帯なら、三笠山に行ってみたいです。久しぶりに峠の頂上から、夕日を眺めたいなって」「あー、そうだな。俺もしばらく見てない」「じゃあ決まりですね。今日は雲が少ないから、綺麗な夕焼けが見られるかも」 宮本は弾んだ気持ちをそのままアクセルに乗せて、インプを発進させた。(姿かたちは俺なのに運転の仕方が宮本なんだから、インプは不思議に思ってるだろうな――) カーステレオから流れてくるラジオを聞きながら、他愛ない会話を楽しむ。お蔭でショッピングモールに出かけたときよりは、それなりにいい雰囲気になった。 車内はいい感じになったというのに、週末の公道は適度に込んでいて、向かう先々で渋滞に巻き込まれる。「夕焼け、見られないかもしれないですね」 唇を尖らせながら呟く宮本の横顔を見て、このリアクションは自分の顔でしちゃいけないと悟らされた。「なぁ雅輝」「はい?」「運転の邪魔になるだろうけど、肩を貸してくれ」「いいですよ。眠くなっちゃいました?」 嬉々として答えたのを聞くなり、遠慮なく頭をのせる。
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チェンジ The デート9

「ちょっとだけな。こういうダラダラした流れを見てたら、眠くならないか?」 喋りながら目を閉じた橋本。こうして宮本の肩に頭をのせるときがあるので、その違いがよく分かった。自分の躰の薄さに、ちょっとだけガッカリする。「確かにそうですね。だけど眠くなったときは、前に写した陽さんの怒ってる顔を見るので、絶対に大丈夫です」「そんなところで、大活躍してるのかよ」「他にもバッチリ、目が覚める方法があるんですよ」 肩にのせた橋本の頭に、宮本がすりりと頬擦りをした。(――雅輝の髪の毛って結構剛毛なのに、そんなことして平気なのか?) そんなことを考えつつ、上目遣いで顔を見やる。車が流れ出したのか前を見据えて、運転に集中していた。「陽さんのイク瞬間の顔を思い出したら、そりゃあもう、バッチリ目が覚めるんですよ~!」「あっそう。違うトコロも、ついでに目覚めそうだけどな!」 言いながらのせていた頭を退けて、シートにしっかり座り直した。「あれ、もう終わり? イチャイチャしたかったのに」「お前のお蔭で目が覚めた」「ムクれる俺の顔、すごく子どもみたいな表情なんですね。格好悪い!」 カラカラ笑い出す宮本につられて、橋本も笑うしかなかった。 そんなやり取りをしているうちに、三笠山の頂上に到着。ちょうど日が傾いて、太陽が残り3分の1というタイミングだった。 週末だからか、いつもより駐車場に停めている車の量も多く、インプを停めるのも一苦労した。その後は車の量に比例した人混みの隙間から、夕焼けを眺めることにする。「こういう綺麗な景色を見ると明日も仕事、頑張らなきゃなぁって思わされるな」「ですねぇ。久しぶりに見るし、隣には陽さんがいるから、綺麗さが倍増されて見えます」「俺の目で見てるからだろ?」 お互い、目を合わせて微笑んだときだった。「うわぁ古臭いインプ発見! 未だに、こんな車に乗ってるヤツがいるんだな」 橋本たちの後方から聞こえてきた声に、眉根を寄せながら振り返る。声の主と思しき若い男とその連れが、インプを指差して他にも罵倒する言葉を投げかけていた。 それを聞いた宮本が、ムッとした顔のまま踵を返そうとしたので、橋本は慌てて止めに入った。
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チェンジ The デート10

「放っておけ。言いたい連中には、好きに言わせておけばいいって。それぞれの考えがあるんだしさ」「でも……」「雅輝の気持ちは分かってる。大好きなインプのことを、あんなふうに言われたら悔しいよな」 古い車だからこそこまめにメンテナンスをし、手をかけて大事に乗ることを、橋本は常日頃からしていた。 最初の車検を受けるたびに新型車に乗って、その良さを味わう乗り方をするヤツから見ると、古い車にお金をかけるようなところが無駄に思えるのだろう。「雅輝、落ち着け」 掴んだ腕から伝わってくる震えが、宮本の怒りを表していた。「……無理だよ。陽さんのインプを馬鹿にされたまま聞き流すことなんて、俺にはできない!」 強引に橋本の手を引き剥がし、罵倒を続ける男たちに向かってしまった。普段は見ることのできない自分の後ろ姿を、複雑な心境で眺める。 言い出したらまったく言うことをきかない宮本と、ひと癖やふた癖もありそうな連中を相手にしなければならないことを考えて、盛大なため息を吐いた。「おい! 俺のインプをこれ以上、馬鹿にするな」 橋本の喋りを真似た宮本に、ますます頭が痛くなってくる。「古臭い車の持ち主はオッサンかよ。やっぱりなぁ」「おっさんで悪かったな!」(俺はおっさんなんだから、そこは素直に認めようぜ――)「オッサン、俺の車の前でフラフラしながら運転すんなよ。邪魔でしょうがないから」「そーそー。この車が前にいたんじゃ、安心して助手席に座ってらんねぇもんな」「俺の愛車、ランエボのケツでも眺めてろよ。昔の車だからどうせ遅すぎて、眺めていられないか」「陽さん、この方たちランエボ乗ってるんだってー。すごいねー」 宮本の真似をした橋本がふらりとやって来て、力強くバシバシ肩を叩いた。「陽、まっ雅輝、顔が怖いことになってる……」「昔っからガラの悪い連中は、揃いも揃ってランエボ乗りと決まってんだ。どんだけお高くとまれば、気が済むんだよ」「雅輝、落ち着いて。今のお、俺の躰はヤワだから、ケンカには向かないよ」「なんだコイツら。変な車に乗ってるのは、決まって変なヤツに決まってる」 さらに声を立てて笑い合う男たちを目の当たりにした宮本が、苛立ちに満ち溢れる橋本を抱きしめながら、睨みをきかせて喚いた。「変な車じゃないぞ! お前らは、三笠山のインパクトブルーを知らないのか!」
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チェンジ The デート11

「なんだそりゃ?」「インパクトブルーなんて知らない。ここらで有名なのは、白銀の流星だったか彗星じゃなかったっけ?」(インプにそんな二つ名があるなんて、俺だって知らねぇよ。というか雅輝のヤツは、本当にインプが好きなんだな) 宮本の怒号で我に返った橋本は、抱きしめられる現状をなんとかすべく、背中を引っ張って離れろというリアクションをした。「陽さ、じゃなかった。雅輝……」 渋々両腕を外して橋本を解放し、男たちに向かって睨みをきかせる。宮本の顔じゃなく自分の顔だからか、いつも以上に凄みがあるように見えた。「インパクトブルーだかなんだか知らないけど、俺のランエボの前をうろちょろするなよ。分かったな!」 インプのボディに向かって唾を吐きかけた男と、捨て台詞を吐いた男は、駐車場の中央に停めていた黒いランエボに乗り込む。煩いくらいにアクセルを吹かしたのちに、厳つい車体が峠を下って行った。 橋本は黙ったまま車に積んでいたティッシュを取り出し、しゃがんで汚された部分を丁寧に拭い、綺麗にした。「陽さん、アイツらの車、追ってもいいですか?」「追ってどうする。もちろん煽り運転は駄目だぞ」 夕日が完全に落ちて、少しずつ辺りが暗くなっていく。街灯に照らされたインプの車体に映る自分の顔は、当然宮本になっていて、いつも見ている優しい面影がまったくなかった。「そんな、くだらないことはしません。ただブチ抜くだけっす」「夜と違って対向車も多い。しかも週末だから、いつも以上に車がいるんだぞ。それでもやるのか?」「センターラインは、抜くとき以外は絶対に超えません」 そう言いきった言葉を聞き、ゆっくり立ち上がって、宮本の背中を運転席へと導いてやる。
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チェンジ The デート12

「当然このまま、馬鹿にされた状態じゃいられねぇしな。だったら古臭いと言われた、インプのケツでも眺めてもらおうか。雅輝の運転なら、間違いなく瞬殺だろうけど」「陽さん――」「助手席から、対向車についてナビってやる。だけど素人だから、正確さについてはどうしても欠けてしまうけど、それでもいいか?」 バケットシートに送り込んだ宮本に提案したら、異常と思えるくらいの満面の笑みを浮かべた。にんまりした自分の顔を見て、ゾッとしたのは内緒だ。「いいに決まってるじゃないですか! 陽さんが俺の隣でそんなことをしてくれるだけで嬉しすぎて、張り切りすぎちゃうかもしれません」「ぶち抜いたあとまで、嬉しさはとっておけ。とりあえず、あの馬鹿野郎どもをとっとと追いかけるぞ!」 運転席のドアを閉めたタイミングで、インプのエンジンがスタートした。それに急かされるように助手席に乗り込み、シートベルトを締める。「出発しても大丈夫ですか?」「ああ、さぁ行こう。アイツらを徹底的に、絶望させるために――」 追い抜く気満々の宮本の運転と助手席にいる橋本のナビで、ランエボとのバトルが勝手に開始されたのだった。※この物語はフィクションであり、登場する人物・団体等は実在のものといっさい関係ありません。またこの作品内で書かれる走行シーンを真似することはしないでください。車を運転する際は交通ルールを守り、安全運転を心がけてください。
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チェンジ The デート13

***(ランエボが下って行ってから、他の車が下りた音を聞いていない。そうなると必然的に、インプの前を走ってるはずだ。だけど上ってきた車が何らかの事情でUターンして、ランエボと並んでいたりしたら、雅輝でも追い越すは一苦労するだろう) 最初のコーナーを難なくクリアした宮本の手元を見ながら、これからのことを考える。「おい、雅輝」「はい?」 シートベルトの反発力に負けないように躰を寄せて、素早く頬にキスしてやった。 対向車がなく、ちょっとくらいブレがあっても大丈夫なところでの行為だった。宮本は泡食ってハンドルを両手で握りしめる。「よよっ、陽さん、こんなところでいきなりキスするなんて、危ないじゃないですか!」「危ないのはお前のほうだ。いつもより、ハンドルを握りつぶしてるだろ」「あ、ほんとだ……」「何かあったときにその状態じゃ、間違いなく急ハンドルになるぞ」「うん、そうだね」 ガードレールの下から見える景色をチェックしながら、対向車がやって来るタイミングを計った。 日が沈んだのもあり、ほとんどの車がヘッドライトを点けているので、木々の隙間からでもその存在を確認することができた。「雅輝、ハンドルを握りつぶす怒りを、集中力に変えろ。このコーナーを過ぎたら、次のS字はインベタグリップで突っ走れ。その先のコーナーで、対向車が来るはずだ」「S字コーナー、インベタグリップ」 橋本はアシストグリップを左手で握って、ドリフトの重力に耐える。宮本の運転にかなり慣れてきたこともあり、目まぐるしく変わる景色やタイヤのスキール音も、怖さを感じなくなっていた。「あの馬鹿野郎どもが、どれくらいのスピードで下ってるか分からない以上、俺らはそれなりの速度で、追いかけなきゃいけないだろ」「うん!」 S字コーナーの出口の瞬間に、対向車とすれ違った。突然現れたインプのドリフト走行に、対向車は驚いたのか急ブレーキをかける。
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チェンジ The デート14

 橋本の予想よりも早い対向車のお出ましに、速度調整をしなければと考えさせられた。理由は宮本の走りがノっているため、いつも以上に速いスピードでコーナーを攻めていたからだった。「やれやれ。俺の読みは、やっぱりまだまだだな」「大丈夫だよ。むしろ助かってるから」 宮本は唇に微笑みを湛えたまま、大きなコーナーをトップスピードで下って行く。(不思議な感じだな。自分の姿でこんな走りをするなんて――) さらに加速を続けるインプの前に、ヘアピンカーブが待ち構えていた。「いつもより注意しながら、無駄を省く走りをしなきゃいけない。分かるな?」「分かるよ、陽さん!」「そうなると、タイヤに負荷をかけることになる」「タイヤがおかしくなったら、なった用の走りをすればいいだけだよ」 宮本らしい返答を聞いて、笑わずにはいられない。たとえブレーキが逝ったとしても、同じような返事をするのが容易に想像ついた。「やっぱりクレイジーだな。そこは任せる」「任せて!」「対向車なし。そのままの速度でコーナーに突っ込め! コントロールできるか?」「できる。このインプなら、どんなコーナーもタイトにクリアしてくれる」 曲がりくねった狭い峠道を、インプのボンネットがガードレールの横をなぞるようにすれすれで走って行く。宣言通りにセンターラインを超えずにやってのける宮本に、羨望の眼差しを送った。 ずっと眺めていたかったが、すぐさま車窓に視線を飛ばす。「その先のコーナーで、対向車2台とすれ違うぞ」「了解! 驚かせないように走り抜ける」 さっきすれ違った対向車のことを考えたのか、事故を誘発させないように対処した宮本を褒めるべく、肩を叩いてやった。「陽さん、俺を宥めているの?」「まさか。鼓舞させてるだけだ。だって見えてきたろ、厳ついランエボのボディが」 ふたりの視線の先に目標としていた、黒いランエボの赤いテールランプが飛び込んできた。
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