「これが、騒がずにはいられようか。陽さんの舌で堪能するソフトクリームの甘さが、いつもよりあまぁく感じるんですよ。躰の中にじわじわと染み込む」「普段は口にしないからだろうな。俺も同じことを感じていた」「俺の顔なのに、エスプレッソカップが様になってる。2割増しでイケメンになってます!」 長いスプーン片手に熱く語られても、自分で宮本の顔を見ることができないので同調できない。「残念ながら俺は、イケメン度がだだ下がりしてる。知り合いがこの姿を見たら、目を逸らして見なかったことにするくらい、酷い顔をしてるぞ」 同じタイミングで、2人そろって吹き出した。笑いを抑えようとしても、どうにも可笑しくて、お腹を抱えながらクスクス笑い合った。(夢の中なのに不思議だ。匂いだけじゃなく、味覚まではっきりと分かるなんて。雅輝と味覚の違いをこうして分かち合えることも、いいものだな――) そんなことを考えつつ、エスプレッソカップをソーサーの上に置き、咳払いをしてから宮本に話しかけた。「ちょうどいい機会だから、春物の服を見に行こうぜ。自分を見ながら洋服を試着するなんて、普段はできないことだろ」「確かに! いいことに気がつきましたね、陽さん」「会話はいつも通りなのに、見た目が入れ替わってるから、何だか変な気分だな」「そうそう。入れ替わってみて、あれって思ったことがあったんですけど」「なんだよ?」 喋りながらも、器用にデザートを食していく宮本。口の端にチョコソースがついているのは、最後に指摘してやろうと心に留める。「陽さんってばイケメンなのに、すれ違う人が振り返ったり、遠くから熱視線を飛ばされたりしないんだなぁって」「俺レベルで、そんなことするヤツいねぇよ。恭介レベルまで引き上げなきゃ、そんな事態にならないから」「そうなんだ、みんな見る目がないんだな」「そんなこと言って褒めてくれるのは、雅輝くらいしかいないさ。ありがとな」 30過ぎのいい歳した自分なんて、そこら辺に転がってる石や雑草と大差ないのに。なんて考えながらちょっとだけ俯いた。
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