☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒「キョウスケさんたち、ピアノの傍の席なんですね」 案内された窓際の席に着くなり、宮本から話しかけられた。「あれはあれで、恭介の得意技を発揮するのに、もってこいの席だと思うがな」 言いながら脇で控えているウェイターに、視線を飛ばした。するとそれを合図にしたかのようにサービス業らしい笑みを浮かべて、丁寧に説明をはじめる。「失礼いたします。本日はクリスマスイブにふさわしい、特別なメニューをご用意しました。お飲み物をお選びくださいませ」 テーブルの上に置かれたメニュー表をふたりそろって手にし、まじまじと眺めた。「陽さんは何にします? 俺、明日仕事なんで、ソフトドリンクになっちゃうんですけど」「そうだな、うーん……。グラスワインの白でお願いします」「俺はアップルタイザーで」「畏まりました。少々お待ちください」 背筋を伸ばしてから一礼して去って行く背中をぼんやり見つめていると、「よかった」なんていう言葉が目の前からなされる。「なにがよかったんだよ?」 訊ねながら宮本を見つめたら、手にしたメニュー表をばさつかせるように弄びつつ口を開く。「てっきり、ボトルワインを頼むかと思ったんです。酔っぱらった陽さんを連れて帰るのは、すっごく大変だから助かったなって」 自分に対する文句だったのに、口調はとても軽快だった。嬉しげに微笑む宮本につられるように、橋本も瞳を細めて笑いかけた。「おまえに苦労させるわけにいかないから、一応自重したんだぞ。本当は樽ごと、飲み干したい気分なのにさ」「確かに。俺も明日仕事じゃなかったら、一緒に飲んでいたかもです」「樽ごと?」 わかっているのに、聞かずにはにはいられなかった。すると宮本は親指をたてながら、口角の端をあげてにんまり微笑む。「弟のときの挨拶で冷たい対応を見ていたから、両親がこんなにあっさり認めてくれるなんて思っていなかったし。やっぱり陽さんだからだよなぁって」「それは持ち上げすぎだ。しかもそれって、弟と同伴していた江藤ちんを落とし込む発言になってることに、気がついてないだろ?」 やれやれと思いながら頬杖をつくと、弄んでいたメニュー表をテーブルに戻しながら「むう?」なんて呟いて首を捻る。
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