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All Chapters of BL小説短編集: Chapter 141 - Chapter 150

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例のアレ5

「ぅ、うわぁ……」「何を考えてんだ。耳まで赤くなってる」 小さく笑う橋本の声が、耳の傍で聞こえてきた。息を吹きかけて感じさせられたわけじゃないのに、宮本の頬が熱を持った。「だ、だってこんなふうに抱きしめられることがないから、変な感じがして」「だよなー。いつもなら俺の後ろに雅輝が抱きついて、ガンガン腰を動かして――」 それを実践するように宮本を抱きしめたまま、腰を前後に動かす。「よよよ陽さんっ!」「なんだよ。ちょっと振動させただけだぞ」 ぎゅっと抱きしめられたら橋本の顔が真横にあり、意味深な笑みを浮かべているのが目に留まった。「陽さんがするのは、俺と違ってエロさが倍なんですよ。心臓に悪い……」「そりゃ大変だ。雅輝の心臓ってどこだ?」 いつもより低い声で喋る様子で、感じさせる気が満々なのが伝わってきた。胸元にある橋本の両手を、慌ててガシッと掴む。「やめてください。感じさせられることのない俺には、刺激が強すぎます」「それって、問題発言じゃねぇの?」「へっ!?」「俺ってば上の口と下の口で、雅輝を毎回感じさせているはずなのにさ」 宮本の肩に顎をのせながら、じろりと上目遣いで睨んできた。橋本の無言の圧力のせいで、口を開くこともできない。「さっきだって、隣の部屋でしてやったろ」「していただきましたっ。十分に感じさせられましたっ!」「そのくせ、ちょっとしか触ってないのに乳首を勃たせる反応、すげぇ可愛いのな」(顔、全部が熱い。さっきから陽さんに翻弄されっぱなしだよ――) 橋本の両手を握りしめる力が、ちょっとだけ緩んだ。その隙をついて宮本の両腕を掴み、前へと引っ張る。「なっ何を?」「ここにハンドルがあるイメージで、空中を掴んでみろ」 言われたとおりに両肘を曲げて、いつものセットポジションをとってみる。エアハンドルを握りしめた手に、橋本の両手が覆いかぶさってきた。「しょうがねぇな。お触りじゃなく、言葉で雅輝を感じさせてやる。ぐずぐずにしてやるから、覚悟しろよ」
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例のアレ6

(すでに思いっきりグズグズにされているというのに、これ以上何をするんだろうか) 背中や下半身で恋人の存在をひしひしと感じながら、そんなことを考えていると、覆っている橋本の手に力が入り、宮本の両手を少しだけ動かした。「陽さんにこうして操作されてると、何だか車になった気分です」「あくまでお前はドライバーなんだよ。とりあえずエアードライブするぞ」「エアードライブ?」 聞き慣れない言葉に顔を横に向けたら、楽しそうに笑う橋本と目が合った。「こらこら、わき見運転しない。お前は今、狭い道を走ってると想定してだな」「は、はぃ……」 慌てて姿勢を戻し、顎を引いて前を見据えた。「目の前から対向車がやって来た。狭い道をすれ違うんだ」 告げられた内容は普段からよくあることだったので、難なく回避しようとハンドルを左に切る。「このままじゃ危ないので、左に寄りますね」 事前に狭い道と告げられていたからこそ、ほんの少しだけハンドルを切ったのに、重ねられている橋本の両手がそれを許さない。「あとちょっとだけな」なんて言いながら左に舵を切り、ハンドルを元の位置に直した。「雅輝、すれ違う瞬間、ドキドキするだろ?」 しかもわざわざ顔を寄せるなり、耳元で甘く囁かれただけで、両手にじわりと汗をかいてしまった。「陽さん、接近しすぎです。この状況だけで、すでにドキドキしてますけど」「俺もドキドキしてるぞ。雅輝を膝の上に乗せる機会なんて、滅多にないからさ」 横目で橋本の顔色を窺ってみるが言葉とは裏腹に、まったくそんな気配を感じられなかった。自分だけドキドキしている事実が面白くなくて、苛立ちまかせに唇を尖らせた。
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例のアレ7

「すれ違う以上の接触ですからね。当然のことですよ!」 拗ねた宮本を宥めるように、橋本が頬擦りした。苛立った気持ちを何とかするための行為と分かったけれど、突き出た唇が瞬く間に引っ込んでしまう。 ほんの少しの触れ合いなのに宮本は嬉しくなり、口元がだらしなく緩んだ。間近でそれを確認した橋本が、笑いを堪えながら口を開く。「今の車に搭載されてるカメラって後ろだけじゃなく、横にもあってさ。モニターで確認しながら、ギリギリまで幅寄せができるんだ」「へー、便利ですね。陽さんが運転するハイヤーに付いてるんですか?」「標準装備されてる。死角が減った分だけ、安全運転できるけど――」「けど?」 エアードライブ中だったのにわき見をしてしまったのは、変なところで言葉を切られたから。橋本に引き寄せられたと言ってもいい。 じっと見つめる宮本のまなざしを受けて、笑みを消し去った橋本は真顔のまま、言の葉を告げる。「最後はきちんと、自分の目で確認するのを忘れない」 運転するうえでは当たり前のことなのに、耳だけじゃなく心にも橋本のセリフがしっかり残った。胸をじんと熱くさせる理由がどうしてなのか、さっぱり分からない。 困ったのはそれだけじゃなく、注がれる橋本から視線を逸らすことができなかった。「陽さん……」 掠れてしまった自分の声に、焦りを覚える。まるで、誘っているように聞こえてしまったのではないかと――。「自分の目で見て、心でいろんなことを感じて、雅輝を好きになった。お前に惹かれて止まない」 被さっていた橋本の両手が宮本の腕を伝ってから、躰をぎゅっと抱きしめる。息が止まるほどに強く抱きしめられると、包み込まれる躰が異様に熱くなった。
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例のアレ8

「あ、あわわわっ」「俺なんかよりも雅輝のほうが、ずっと可愛いと思うけどな」 小さく笑ってから、熱くなってる頬にチュッとされても、どういうリアクションをしていいのか困った。 余裕のある大人の態度や仕草で、簡単に翻弄させられている自分がすごく子供じみている気がして、余計に恥ずかしくなる。(こういうこと、きっと他の人にもしているからこそ有効なのが分かっていて、俺にしてるんだろうな) そう考えついた途端に、弾んでいた心が一気に萎んでいくのが分かった。「雅輝、どうした?」 間近で宮本の顔色を窺っていたせいで変化をすぐに察し、両腕の力を弱めた橋本が訊ねてきた。「…………」 賑やかな喋り声がテレビから流れても、漂う雰囲気までは変えることなく、虚しく延々と流れる。「雅輝?」「陽さん、俺と付き合ってて、つまらなくないですか?」「そんなこと思わない。むしろ新鮮だぞ」 沈み込む宮本に対し、橋本は明るい声で答えた。自分とは相反するその様子に、顔を背けながら口を開く。「俺は魚ですか」「その切り返し! さすが雅輝クオリティ。普通はしないだろ」 カラカラ笑う声が耳元で聞こえても、落ち込んでしまった気持ちは浮上しなかった。「だって――」「何を拗ねてるんだ。言わないと、このまま掘るぞ?」 ほらほらと言いながら、さっきよりも激しく腰を動かす。「ちょっ、ふざけすぎですよ」「楽しくエアードライブしてたのに、雅輝が拗ねるのが悪いんだろ」 橋本に抱きしめられた時点で、それは終わっていた。そのことを指摘しようと思ったが、口で勝てる気がしないのを瞬時に悟り、うっと言葉を飲み込む。 貴重なふたりきりの時間――無駄な喧嘩だけはしたくない。楽しく過ごしていたいのに、いらない嫉妬のせいで、宮本の心は荒んでしまっていた。
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例のアレ9

「雅輝、俺は今現在、誰と付き合ってるんだっけ?」「俺です……」 唐突になされた橋本の質問を、宮本は不思議に思いながら静かに返事をした。「俺が好きなヤツは、どこの誰だ? 本名で答えろ」「……宮本雅輝です」 答えてる間も橋本の両腕は、自分の躰をしっかり抱きしめたままだった。伝わってくる温かさを感じたら、思わず涙腺が緩みそうになる。「それが分かってるのに、何に対してくだらないことを考えてるんだ?」「くだらないことだって、どうして分かるんですか?」 横目でちらっと橋本の顔を見てから、すっと視線を逸らす。「答えは簡単だ。楽しいことを考えていたら、そんな不貞腐れた顔にはならないだろ」「むう……」「俺は接客業をしてるからさ。必要以上に、人の顔色を窺っちまうクセがある。だからすぐに、雅輝の変化に気がついたわけなんだけど。これまでやったことで、何か不快に感じるものがあったのか?」 橋本の視線が突き刺さるように、自分に注がれているのが分かった。「不快には、感じてなかったんです」「だよな。途中までいい雰囲気だったし」「俺にしたことを、他の人にもしてるんだろうなって思ったら、何ていうか。複雑な気分になっちゃって……」 たどたどしく口走るなり、橋本の躰から手荒な感じでソファの上に戻されてしまった。いきなりのことで、声をあげる暇もなかった。「何だよ、やっぱりくだらないことじゃねぇか」 吐き捨てるように告げられたセリフに、宮本は躰をびくっと震わせた。大好きな橋本を怒らせてしまったと思ったら、居ても立っても居られないのに、謝る言葉すら出てこない。「終わった過去にこだわったところで、今更どうしようもないだろ」 言いながらグーパンチで、宮本の頬をぐりぐりする。 いつものように頭を撫でず、痛い攻撃を繰り出す橋本の行動が謎すぎて、頭の中に疑問符が浮かんだ。
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例のアレ10

「陽さん……?」「雅輝のその考え、つい最近まで俺が思っていたことなんだ」「えっ!?」 ぐりぐり攻撃を止めて優しく頬を包み込んだ橋本の手は、愛おしそうに宮本の顔を引き寄せて、触れるだけのキスをした。隣で座ったままの自分に橋本は顔を真横に向けてキスしているため、いつもと違う感じがした。(陽さんの中に舌を入れて責めてみたいけど、今すべきじゃないんだろうな) 触れ続けるキスを受けていたら、角度を変えてもう一度触れてから名残惜しげに離れる。「雅輝に抱かれると、江藤ちんとはどんなふうだったのかを考えちまって……」「そんなの――」「そんなの、考える必要のないことなのにな。頭で分かってたんだけど、どうしてもチラチラ過っちまって。雅輝をもっと感じさせることを、いろいろしていたんじゃないかなんて」 笑ってるのにどこか泣き出しそうな笑みを見て、迷わず橋本の腰を抱き寄せるなり、ぎゅっと強く抱きしめた。「陽さん、ごめんね。ヤってる最中に過去を匂わせる何かを、俺がしていたせいで悩ませてしまって」「そのセリフ、まんまお返しする。だけどさ雅輝」 躰に橋本の両腕が回され、同じように抱きしめられた。「なんでしょうか?」「お互い、いろんな過去があったからこそ、こうして巡り合えたんじゃないかと思うんだ」 ベルベットのような柔らかい声を耳元で聞いたからか、宮本の中にくすぶっていたモヤモヤした感情が、蒸発するようになくなっていった。「そうか、陽さんと出逢うための過去」「その考えに辿りついたら、江藤ちんに嫉妬している自分が恥ずかしくなってさ。終わったことなんだから、しょうがねぇだろ?」(やっぱり陽さんはすごい。俺よりも先に壁にぶち当たっていたのに、自分で解決できちゃうなんて――)
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例のアレ11

「陽さんに比べて俺は、これまで付き合ってきた人数が圧倒的に少ないだろうから、経験が浅い分だけストレートな物言いしかできなくて、何ていうかこう……。さっきの陽さんみたいに、仕草だけでドキドキさせることができたらなぁって思ったんです」「雅輝の経験が浅いからこそ、こっちの読みを外すような行動をされるせいで、十分にドキドキさせられてるっちゅーの」「ねぇ、今もドキドキしてる?」 吐息と共に囁いた宮本の声に、橋本が躰をビクつかせた。「おいっ! わざと耳元で喋ったろ。弱いこと知ってるからって、卑怯だぞ」「え~っ、抱き合っていたらお互いちょうど、耳元辺りに顔がくるじゃないですか。わざとじゃないですよ」「『ねえ』の部分、いつも以上に息を吐きかけていただろ」「陽さんってば、俺の質問に答えてくれないんですね。ドキドキしてるかどうか、直接触れて確かめちゃいますよ?」 橋本を抱きしめていた片手を使って、長袖のシャツの裾から手を忍ばせる。「お前そういうのは、もうしないはずじゃ……」 腰から徐々に肌をなぞって左胸に到着させ、人差し指で乳首を弾いてやった。「んんっ…っぁ!」「ドキドキと一緒に、熱い想いがじわじわ伝わってきます。良かった」「よくねぇ、よっ。雅輝の手のせいで、ドキドキがっとまら、ないっ」 宮本の躰にしっかり抱きついた橋本は、雄の印を腰骨に押しつけてきた。「むぅ、やっぱり3回じゃ足りなかったんだね。このままここでしちゃう?」 反対の手で橋本の敏感な割れ目を、ゆっくりとなぞった。
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例のアレ12

「や…め…っんん、ここじゃだっ、駄目だ。狭ぃ」「きっと大丈夫ですよ。上半身は俺が押さえ込めばいいだけですし、陽さんの片足を背もたれに引っかければ、狭さも上手いことカバーできますって」 笑いながら告げると、それまで大人しかった橋本が腕の中で暴れはじめる。「やらしすぎる。そんな恰好させられる、俺の身にもなってみろ。恥ずかしいに決まってるだろ。絶対に嫌だ!」 視線を鋭くしているのに頬を少しだけ染めるという、表現しがたい可愛い顔で抵抗されるだけで、宮本の闘志に火がついた。力任せに橋本の躰をソファの上に押し倒して、素早く跨る。「ちょっ、いつも動きが緩慢なのに、こういうときに限ってお前は!」「繋がってるところを眺めながら、出したり挿れたりしたら、さぞかし気持ちいいんだろうな」「あっ悪趣味にもほどがある!」 眉根を寄せて不快感を表す橋本を、ニヤニヤしながら見下ろした。「見られながらするの結構好きなくせに、そんなこと言っちゃって。俺のがもげる勢いでギュンギュン中を締めつけて、いつも感じさせてくれますよ」(今の俺ってば、ものすごく意地悪な顔をしてるんだろうな。そんな最低な俺に見つめられる陽さんは怒ってるのに、瞳を潤ませつつ顔が真っ赤だから、全然怖くない。今すぐに感じさせて喘がせたいな――)「それは雅輝が変な目で俺を見るから、すげぇ恥ずかしいだけであって、感じてるわけじゃねぇよ!」 ギャーギャー喚く怒鳴り声を完全に無視して、宮本は跨っていた自身の躰を下にズラし、橋本の片足を手に取る。「よいしょ。陽さんの長い足を、背もたれにかけてっと」「やめろっ、足が開きすぎだ。というか俺の話を聞け!」「どんなふうになるか、試しにやってみただけですよ」
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例のアレ13

橋本の顔の横に両腕を突き立てながら前屈みになりつつ、すっかり形が変わってしまった大きくなったモノを、容赦なくぐりぐり擦りつけた。「くぅっ……」 ほんの数時間前にイチャイチャしたばかりなのに、擦りつけた部分は宮本だけじゃなく橋本も熱く熱を孕んでいた。「陽さん、感じ足りなかった?」 刺激をするようにゆっくりと腰を上下に動かして、橋本の顔色を窺った。「雅輝だって、ンンっ、あんなにシたのにっ、俺を求めるなんておかしいだろ」 背もたれにかけた片足が時折ビクッと跳ねることで、橋本が感じているのが分かった。「触れるだけで、簡単にスイッチが入っちゃうんです。さっき触った陽さんの胸の高鳴りが、てのひらに伝わったせいかな」(俺のとった行動で、あんなふうにドキドキする陽さんを見せられたら、歯止めが効かないに決まってる――) 突き立てた両腕を折りたたみ、橋本に顔を近づけて噛みつくようなキスをした。「やぁっ、あっ…んあっ…ぁっ…」 舌をじゅぷじゅぷ出し入れさせながら、下半身の動きも連動させる。橋本がこのまま流されてくれますようにと、時折焦らしつつ感じさせた。「雅輝ぃっ…刺激強すぎ、勘弁してく、れ」「陽さんがここでしてもいいって言ってくれたら、刺激を与えるのをやめますよ」「ひでぇ交渉するんじゃねぇよ。クソガキ……」 口ではそんなことを言ってるのに、まったく抵抗を見せない橋本を不思議に思い、宮本は目を瞬かせながら首を傾げた。「何て顔してるんだ。俺はおかしなことを言ってねぇだろ」「そうですけど……」「まったく! 察しろよ、空気を読め!!」「むぅ。空気を読む?」 言いながら橋本の首筋に顔を近づけて、鼻をすんすん鳴らした。その瞬間に、こめかみ辺りに橋本のパンチが炸裂する。容赦のないその攻撃のせいで、両目から星が飛び出た。
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例のアレ14

殴られた部分を両手で押さえながら、呻き声をあげる宮本を目の当たりにして、橋本は大きなため息をついた。「陽さんひどいよ。今ので俺のヤル気が、全部吹き飛んだ!」「軽くグーパンしただけだろ。それに空気を読めない、雅輝が悪い」「陽さんのパンチは表面が痛いんじゃなくて、殴られたあとに中側に衝撃波がくるんだってば。軽いものでも、俺の目玉が飛び出ると思ったんだから」「今の言葉で、俺のヤル気が1.5倍増えた」 ぼやく宮本の背中を、橋本は苦笑いしながら宥めるように擦った。「何でヤル気が漲るんですか。俺は克明に文句を言ったというのに」 相当痛かったのか、こめかみを擦る宮本は面白くないことを示すべく、つんと唇を尖らせた。「褒め言葉にしか聞こえなかったぞ」 そんな宮本の態度も何のその。橋本は苦笑いを止めて、思いっきり微笑み倒した。「さっきのどこが、褒め言葉に聞こえるのやら。俺にはさっぱり分からない」「だよな、さっきからすれ違ってばかりいるよな」「これって陽さんの意図を悟れない、俺が悪いんでしょうか……」 尖らせた唇をもとに戻して、恐るおそる訊ねる宮本に、橋本は気難しい顔を決めこんだ。「すぐに悟られたら、それはそれで面白くない」「え~っ、それってどっちに転んでも、俺が陽さんに攻撃されちゃうじゃないですか」「常に緊張感があっていいだろ。それに――」 言いかけたセリフを意味深に止めた橋本を不思議に思い、宮本は真剣な表情で顔を寄せる。「それに?」「他愛ないやり取りだろうが、好きなヤツとするのは、何をやっても楽しいってことさ」「陽さん……」「結局は強請られたことのほとんどを、文句を言いながらも許してやってるだろ。心の広い俺に感謝しろよ」 宥めるために撫でていた宮本の背中を、思いっきりバシンと叩いた。「……いいの?」「今更それを聞くのか。まったく」
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