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All Chapters of BL小説短編集: Chapter 181 - Chapter 190

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〇〇しないと出られない部屋!?11

両手を使って胸元を隠すその姿に、橋本は真顔になる。「そうか……。これがそんなに嫌なのか」「嫌に決まってるじゃないですか。陽さんを感じさせるために、わざわざ持ってきたというのに!」 橋本は喚き散らした宮本の言葉を聞くなり、頬を緩ませて笑いかけた。「よ、陽さん?」「俺は感謝してる。こうやって雅輝を感じさせることができるなんて、思いもしなかった」「やめてくださいよ、本当に」 うんと眉根を寄せながら文句を言いつつ、肩を竦めてこれ以上責められないように、躰を小さくする。「普段俺ばっかり感じさせられて、ひーひー言わされてるんだ。たまにはいいだろ」「よくないですって。それに俺は陽さんに、きちんと感じさせられてますから」「俺だって男なんだ。好きなヤツをとことん感じさせたいって、思っちゃ駄目なのか?」「うっ、それは――」 いつものようにやりこめてから、橋本は責める部分をしっかり見極めながらタイミングを計る。やるなら油断している今だろうと思っても、責めたいところが多すぎて、なかなか手が出せなかった。「ヤバい。久しぶりすぎて、狙いが定まらないなんて」 ローター片手に、視線を右往左往させる。そんな橋本を、困惑を露わにした眼差しで宮本は見つめた。「久しぶりって、なんですか。その嬉しそうな口ぶりは……」「だってそうだろ。こんな機会めったにないし」「俺だって……」「なんだよ?」「もっともっと陽さんを感じさせようと思って、楽しみにしてたのに」 初心な乙女のように胸元を隠しながら、他にもブツブツ文句を言い続ける宮本の唇を、橋本は迷うことなく塞いだ。片手に持ってるローターを手放して、大きな躰をぎゅっと抱きしめる。「んっ、ぁあっ」「雅輝、感じてくれ。俺のこの唇や手や俺の全部を使って、しっかり感じさせてやるから……」「陽さんの声や言葉だけでも、充分に感じてますよ」「ホントかよ?」「本当です。直接触れて、確かめてみてください」 言いながら橋本の顔を、両手で包み込んだ宮本。その顔は見るからに幸せそうで、橋本の心まで幸せになる気がした。「雅輝、愛してる」 何度も告げている言葉なのに、いつも以上に心が満たされているためか、囁きに甘やかさがプラスされる。「陽さん、俺も愛してる」 力強く抱きしめている躰が、呟きと同時に反転させられた。この日はふたり揃って
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クリスマスラプソディ

 橋本の手に、とある高級レストランの優待券が握りしめられた。予約するだけで1年待ちは当たり前という、噂のお店のものだった。「藤田さん、困ります。こんなふうに気を遣われてしまうと、今後雅輝に何かあったとき、文句が言えなくなるじゃないですか!」「問題が起こらないように、俺からも昴さんに釘を刺しておくって。だから、安心して受け取ってほしいんだよね」 藤田の知り合い、反社会的勢力の幹部である笹川昴が橋本の恋人宮本に、仕事の依頼をした――だがその仕事自体は、今すぐどうこうするものじゃなかったが、宮本が引き受けた以上は、深くかかわり合いになるのは必然だった。 結果、橋本の心配のタネが尽きなかったのである。 いつものようにハイヤーを長距離で使った藤田が降りる間際、「はい、これ受け取ってよ」なんてメモを渡すように手渡した紙切れを、橋本はなんだろうと思いながら受け取った。視線を落として、プリントされている文字を認識した瞬間に、大きく目を見張る。 ハイヤーに乗せる客層が、会社役員やお偉方が主になってる関係で、有名どころの店に送り届けることもしばしばあった。だからこそ紙切れに記載された店名を見ただけで、賄賂的なものを感じずにはいられなかったのである。「藤田さんってば……」「本当はもっと、いいものをあげたかったんだけどね。そこで恋人と、仲良くイブを過ごしてほしいな。じゃあね!」 まくしたてるように告げるなり、一目散に去って行く。シートベルトを外して追いかける間を与えないようにするためなのか、藤田は走って建物の中へと消えてしまった。「雅輝と仲良くイブを過ごす……」 静まりかえった車内に橋本の呟きが、泡沫のようにその場で消えた。脳裏で宮本が嬉しげに「うめぇっ!」と言いながら、フランス料理をパクつく姿が流れる。テーブルマナーを知ってるかどうかも不明なれど、一緒にそういう店に行くのも悪くないと思った。(これはしっかり計画を練って、イブの夜に雅輝と一緒に過ごさねば! だってふたりで迎える、はじめてのクリスマスなんだから) こうして橋本の心に、あたたかな火がともった。友人の榊が、前日同じように滾っていたことなど露知らずに――。※この想いは蜜よりも甘くの番外編(愛する想いを聖夜にこめて)とコラボします☆
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クリスマスラプソディ2

☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒(どうしよう。いきなりのことで、頭がついていかないよ……)「う~ん、雅輝の良さをワンランク上げるスーツはすぐに決まったのに、ネクタイが決まらないなんてな」 困惑しまくりの宮本をよそに、橋本は難しい顔をしながらネクタイを手にして、恋人に当てたり外したりを繰り返していた。 事の発端は本日。あらかじめでかけることが、橋本によって決められていた。「イブの日の夜、空けておけ。美味いもの食わせてやる」「わーい! 陽さんと、クリスマスイブデートっスね☆」 喜びを表すように目をキラキラさせて橋本を見つめると、なぜだか少しだけ表情を曇らせた。「ただちょっとばかり、テーブルマナーが必要なところでさ。そこに合わせて、スーツ買ってやる。それがクリスマスプレゼントだ」「いやいや、スーツくらい持ってますし」 頭をポリポリ掻きながら、橋本が贈るであろう高そうなプレゼントを、やんわりと断った矢先だった。「断ってくれるな。せっかくいい格好するついでに、俺の実家に顔を出すぞ。雅輝を家族に紹介したい」「Σ(lliд゚ノ)ノ ンヵ゙ぁッ!!!」 その衝撃的なセリフは、宮本の思考をこれでもかと混乱させたのである。「なぁこの深緑と青、どっちがいい?」 試着したスーツに、深緑と青のネクタイを交互に当てながら、目の前にある鏡とにらめっこする橋本。本来なら同じように鏡を見て、自分に似合うであろうネクタイのチョイスをしなければならないのに、宮本の視線は隣にいる橋本に釘付けだった。 眉根を寄せて眉間にしわを作る、難しい表情の橋本を見て、濃厚に絡み合う行為の最中を思い出す。ここのところお互い忙しくて、なかなか逢う機会がなく、肌に触れていないせいで回想してしまった。『あっ…んあっ……そんなに激しく擦るなって、壊れ、る、んっ!』(陽さんを後ろからぎゅっと抱きしめて、これでもかと貫いたあの日は、いつだったっけ?)「おい、雅輝」「…………」「雅輝ってば。ヨダレ垂れてるぞ」 かけられた言葉にはっとして、無意識に口元を拭う。「嘘だよ」「陽さんってば、もう!」「文句を言いたいのは俺のほうだ。こんなところで目尻を下げて、何を考えてた?」
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クリスマスラプソディ3

ここで反抗したら、ハイキックが繰り出される恐れがある。腰に手を当てて睨む橋本がおっかなくて、素直に答えずにはいられなかった。「何って、そりゃあ決まってるっていうか……」「俺が質問してるのに、すぐに答えなかったろ、なあ?」 イケメンが怒ると、通常の二割増しで怖いことを知っているゆえに、宮本は肩を竦めて躰を小さくしながら謝罪するしか手がなかった。「ごめんなさい……」 前カレもイケメンだったせいで、その迫力に恐れおののいた記憶が、頭の片隅に流れる。「まったく。雅輝はすぐに顔に出るんだから、俺の実家でも気をつけろよ」「はぁい」「そんなに俺が食いたきゃ、あとからちゃんと食わせてやるし!」 爽やかに笑って頭を撫でながら告げられた橋本の言葉は、一気にヤル気へと導くものだった。しょげていた顔が、ぱあぁっと華やぐものに変化する。「さっきのネクタイ、もう一度当ててみてください。すぐに選びます!」「ぉ、おう。最初からそうしてくれたら、良かったのに」 宮本のハイテンションに、橋本は若干おどおどしつつも、胸元にネクタイを交互に当てていく。どっちのネクタイも宮本の顔を引き締める色合いだったため、簡単に選ぶことができなかった。「陽さんのご家族にいい印象を与えるのは、どっちでしょうね」「……おまえはなにを着ても、いい印象を与えるって」 橋本が思いもしないことを口走ったため、ギョッとして横を向くと、目尻に笑い皺を作って優しく自分を見つめる恋人と目が合った。「よ、陽さんってば、見た目がモブキャラレベルの俺を持ち上げても、お得感ゼロですよ」 告げられたことや、橋本にじっと見つめられるせいで、宮本の頬が自然と熱を持つ。(こんな顔してたらいい印象よりも、エロいことを考えてる印象を与えてしまう気が激しくする)「雅輝の顔から人の良さが滲み出てるお蔭で、コイツは信用しても大丈夫だって思えるんだ。それは俺だけじゃなく、俺の家族にも伝わると思う。お得感がどうのと言われたところで、説得力の欠片すらないぞ」「陽さん、大好き……」 ドキドキしながら呟くように告白した途端に、橋本の頬がぶわっと赤く染まる。瞳を右往左往させてから、左手に持っていた青のネクタイごと、宮本の胸元を強くパンチした。「このクソガキが。こんなところで、恥ずかしいこと言うな。ほらよ、この青にしとけ」「はい。
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クリスマスラプソディ4

☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒ 宮本の自宅に連れられた橋本の顔色は、微妙なものだった。帰る道中の宮本の様子が、今まで見た中で一番といっていいほど変顔で、一抹の不安を覚えずにはいられなかった。「雅輝あのさ、久しぶりなのはお互い様だろ。壊れない程度にしてくれると、俺としては助かるというか」「何言ってるんですか陽さん。壊れるような抱き方なんてしませんよ」「しそうだから予め注意を促しているんだ、このクソガキ!」 ベッドに腰かけながら、他にもギャーギャー喚く橋本を尻目に、自分用に購入した青いネクタイを取り出し、問答無用という感じで後ろ手に縛りあげる。抱きすくめる形で拘束しようとしているので、耳元に橋本の吐息の変化がいやおうなしに伝わってきた。「ふふっ……。こんな陽さんのフィギュアがあったら、一日中眺めていても飽きない自信があります」 縛り終えて立ち上がり、まじまじと橋本を見下ろした。「なにを言ってんだか」 いやらしい感じで注がれる宮本の視線から逃れるように、橋本は顔を横に背けた。「口では嫌がることを言ってるくせに、少しアソコを硬くさせて期待している、エッチな陽さんのフィギュアが欲しいです」「欲しがるな! それに俺のは硬くなっていないからな!」 橋本は宮本の告げたことにギョッとして、横目で睨みながら否定する言葉を吐き捨てた。「またまた~。俺がネクタイで縛ってるときに感じて、荒い息を吐いていたのは、どこの誰でしたっけ?」 顔を背けたままの橋本。困ったことがあったときは、必ずといっていいほどこのリアクションをする。宮本はもっと困らせたくて、わざわざ顔を寄せつつ事実を突きつけるように、さきほどの橋本の様子を告げてみた。「結び終える瞬間に小さな喘ぎ声を、俺は聞いているんですけどねぇ。他には我慢できないといった感じで、膝頭をもじもじさせていたような?」「しらねぇよ……」「ほら、もうこんなになってる」 目元を赤く染めた橋本の顔を凝視しながら、ダイレクトに下半身に触れた。触れ慣れているそれは、とても熱く完勃ちしていた。「それはお前が今触ったからだって」「陽さんのって一気にこんなふうに、大きくなっちゃうんですか?」「そうだよ! 欲しくてたまらなかったからな!!」 今度は宮本の顔が真っ赤になった。いきなり煽り返されるとは思わなかったので、衝撃が半端ない。「俺は
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クリスマスラプソディ5

☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒ クリスマスイブの日は、橋本の実家へ挨拶に行く予定だった。それなのに――。「お初にお目にかかります、橋本陽です。職業はハイヤーの運転手をしておりまして、その関係で雅輝くんと知り合いました」 橋本の育ての親が、普段あまり交流のない実子に誘われて、旅行に行くことになってしまった。ご両親ともども実子および孫と一緒にクリスマスイブを過ごす機会がないため、橋本との約束を来年に先延ばししたことを、インプに乗り込んだ途端に聞いた。 そこで互いに正装していることを理由にされて、突如宮本家に向かう羽目になったのである。 宮本としては、橋本の育ての親にする挨拶を前日まで考えていたのに、今日それを披露せず、自分の両親と顔を会わせることになるとは、思いもしなかった。 通されたリビングに、そこはかとなく何とも言えない空気が漂う。ハニワ顔している3人を他所に、橋本は営業スマイル全開だった。 普段の息子は、Tシャツにジーンズといういでたちしかしないはずなのに、バリッとしたスーツを着こなしている時点で、宮本の両親は不穏なものを感じ、微妙な表情をキープしていた。 しかも橋本が自己紹介を終えたというのに、ふたり揃ってひとことも喋らない。たぶんこのあと何の話をするのかを、目の前にいるカップルを見て、予想しているのだろうと宮本は考えた。「あのね、父さん。俺たち付き合っていて……むぅ」「またか――」 口火を切った宮本に、父親は両手で頭を抱えた。(当然だよな。弟の佑輝だけじゃなく俺まで、同性を親に紹介するとは思いもしなかっただろうし) ガックリした様子をあらわにしているという状況なのに、橋本は笑みを崩さなかった。それを隣で目の当たりにして、縋りたくなる気持ちに拍車がかかる。「年上の自分が、雅輝くんをたぶらかしました。責めるのであれば実の息子ではなく、俺を責めてください」「陽さん、なに言ってるんだよ」 弟の恋人と同じようなセリフを言った橋本に、宮本は困り顔を決め込む。「俺から手を出してるということで、お前をたぶらかした事実は、間違いないだろう?」「それはそうだけど。でもあのときと今じゃ、事情が違うのに」 笑顔の橋本に宮本が突っかかると、父親がテーブルを叩いて静止した。「ちょっと待ちなさい。お前たちは何をしにここに来たんだ?」 強い口調で問いかけられた
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クリスマスラプソディ6

橋本が指をさした先にいる両親は、呆気にとられて放心していた。「すみません。本当は俺の実家に顔を出す予定で打ち合わせしてしたのですが、急に予定が変更になって、ここに顔を出しました」 心底済まなそうに、橋本が頭を下げる。宮本はどうしていいかわからず、膝に置いてる両手を握りしめるのがやっとだった。「同性婚が施行しているとはいえ、いきなり認めてくれと言われても、簡単に納得できないのは承知の上です……」 宮本は下げた頭を上げずに低姿勢をキープする恋人の躰に両手をかけて、無理やり上げさせた。「雅輝?」「陽さん俺、中途半端なことは言いたくなかった」 見つめ合うふたりを見て、母親が訊ねにくそうに口を開く。「雅輝、ちょっと教えてちょうだい」 橋本との会話の最中に訊ねられたせいで対処が追いつかず、宮本がぽかんとしたら、橋本が肘で躰を強く突き、しゃんとさせる。「学生時代には、彼女がいたわよね? それなのにどうして、こんなことになったのかしら」「確かにその当時彼女はいたけど、大学時代に彼氏がいたことがあったんだ。陽さんが、はじめてじゃないんだよ」 沈んだ声で告げられたセリフを聞き、両親は目を見張った。「はじめて付き合った彼氏といろいろあって振られて、すっごく自信がなくなった。だけどこのままじゃいけないと思って、一番自信のあった車の運転技術をあげようと、日々練習に励んでいたんだ」 そのときのことを思い出しながら語ると、橋本が宮本の手をそっと握りしめる。「運転が楽しくなった頃、トラック運転手に職業もチェンジして、それなりに軌道に乗ってた。そんなある日、陽さんに出逢った。フラつく運転をしていた俺を「ふざけんなよ、このクソガキ」って叱り飛ばしてくれた」 言いながら隣を見る宮本に視線に合わせた橋本は、プッと小さく吹き出した。「大切なお客様を乗せたハイヤーの前で、雅輝がやらかしていたから、叱り飛ばすのは当然のことだったんです」「それまで、運転のことで叱られたことがなかったのもあって、陽さんに対して興味を抱いたのがきっかけだった。お礼をしたくて陽さんを探したあと、友達になってくれって迫ったんだ。その後一緒に行動しているうちに、陽さんへの憧れが恋心に変わっちゃって……」 照れた宮本が空いた手で頭を搔くと、橋本は渋々といった感じで説明を続ける。
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クリスマスラプソディ7

「いきなり告白されて驚きました。そのときは、友達としてという感情しかなかったので。だけど不器用ながらも、一生懸命に想いを伝える姿を見ていたら、次第に俺も雅輝のことを好きになりました」 ちょっとだけ照れた橋本は、最終的に俯いて話し終える。そんな恋人の姿を横目で捉えた宮本は、自分の想いを伝えようと、きちんと前を向いて声を大にした。「今では一緒にいなきゃ駄目だって思うくらいに、お互い支え合っていて。それで――」「やはり佑輝と違って、雅輝はしっかりしているな。プレゼンの仕方がきちんとしている」 やれやれといった感じで肩を竦めた父親が、弱り顔で母親に視線を投げかけた。「ほんとね。佑輝は途中から自分が何を言ってるのかわからなくなって、ずっと江藤さんに頼ってばかりだったもの。雅輝の言葉には、説得力があると思った。母として、反対するのは難しいなって」「しかも自分の息子はしっかりやっているとばかり思っていたが、実際は親が思っているよりも危ういところがあるものなんだな」 宮本は顔を見合わせて笑い合う両親を見て、ほっと胸を撫で下ろした。弟の佑輝のときは、終始居心地の悪い雰囲気が漂っていたため、同じような目に遭うと覚悟していた。 気の緩んだ宮本の手を握りしめていた橋本の手に、ぎゅっと力が込められる。その痛みにハッとして隣を見ると、首を横に振る姿があった。「雅輝のご両親としては、息子が同性と付き合うことが不安に思うかもしれません。その前に先に歳をとってくたびれたオッサンになる俺が、捨てられるかもしれないんですけど」「捨てるわけないのに。どうしてそんなことを言うのさ?」「先のことは、誰もわからないからだ。それに案外、雅輝がいい女と出逢うかもしれないだろう」「俺は陽さんしかいらない! 絶対に別れないから!」「雅輝、落ち着きなさい。橋本さんは可能性の話をしているだけだ」 ピシャリと言い放たれた父親のセリフに、宮本は口を引き結んだ。「俺も雅輝と同じ気持ちでいます。コイツよりも、いいヤツが現れるとは思えないので」「陽さん……」「やり取りを見ていただいた時点でおわかりでしょうが、俺たちはまだまだ未熟者同士です。だからぶつかることも多い。しかしながら、一緒に高め合っていくこともできる、最高の相手なんです」 橋本はソファから床に下りて正座し、ふたたび頭を下げた。「俺た
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クリスマスラプソディ8

☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒「やっぱり陽さんは男前で、カッコよかったっス!」 予約しているレストランに行く道中、ずっとこんな感じで自分を持ち上げる宮本に、橋本は心底うんざりしていた。「おまえ、もう少しテンション下げろよ。これから行くところは、厳粛な雰囲気のある店なんだぞ」「絶対に駄目だと思ってたのが、陽さんのお蔭であっさり認められたのが嬉しくて、はしゃがずにはいられないんですって」 なにを言っても、こりゃダメだなと思った矢先だった。向かい側からやってくる人物とバッチリ目が合う。声をかけようとした瞬間に、見慣れたイケメンから先に声をかけられた。「橋本さん?」 黒のコートの下にスリーピーススーツを格好良く着こなしたその人物と、今の自分の恰好を必然的に比べてしまい、内心落ち込むしかない。「恭介?」 レストランの店先で、タイミングよく鉢合わせになる。「恭介もしかして、この店を予約しているのか? 予約しても、一年先からしか空いてないらしいのに」「橋本さんこそ……。どうやってこの店の予約を、ゲットしたんですか?」「馴染みの客がいつも世話になってるからって、プレゼントしてくれたんだ」 ハイヤーを使ってるお客様の情報を漏らすわけにはいかないので、さらっと流して答えた。「高給取りのお客様ならではって感じですね」(そういうおまえも、十二分すぎるくらいに高給取りじゃねぇか!)「随分と含みのある言い方するのな。そういう恭介こそ、どんな手を使ったんだよ?」「俺は会社から頑張ったご褒美という形でいただいたんです」 笑みを浮かべながら胸を張る榊に、橋本も対抗するように頬をあげてにっこり微笑んだ。「お~、さすがは仕事のできる男は、貰うものも一流じゃねぇか!」 目の前で牽制し合う橋本に、宮本は袖をちょいちょいと引っ張った。「陽さん、そろそろ中に入りましょうよ。こんなところで揉めてる場合じゃないと思います」「揉めてるわけじゃないって。恭介のことを褒めてたんだぞ
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クリスマスラプソディ9

謝る榊の隣で、和臣も会話に割って入る。「宮本さん、本当にごめんなさい。恭ちゃんが橋本さんと、無意味に張り合ったのが原因なんです。僕の前で格好つけようとしたから」「恭介、和臣くん、俺のほうこそ悪かった。まさかここで、鉢合わせになるとは思ってなくてさ」 謝罪した3人は、それぞれ頭を下げた。そのタイミングで、宮本が頭を上げる。 あとから頭を下げた面々はバツの悪い空気をひしひしと感じて、やっと頭を上げた。宮本は微妙な表情のメンツを見ながら、ひきつり笑いを浮かべつつ、パンっと大きな柏手を打って口を開いた。「と、とりあえず一件落着ということで、中に入りましょう!」 宮本自ら榊たちを先に行かせるべく、背中をぐいぐい押す。「宮本さん、お気遣いありがとうございます」 和臣が宮本に礼を告げて、にっこり微笑んだ。可愛い系美青年の和臣に至近距離で微笑まれた宮本は、ぶわっと頬を赤く染める。その場を取り繕うためなのか、意味なく両手を落ち着きなく動かした恋人の利き手を、不機嫌満載の橋本が掴んで動きをとめた。「おい、なに顔を真っ赤にしてんだよ」「だ、だって……」「和臣くんは恭介のパートナー、しかも結婚してる。おまえがそんな顔してたら、恭介に噛みつかれるぞ」 言いながら手のひらを開いて、宮本の右手を解放した。「俺、イケメンに免疫がなくて、ああいう笑顔を向けられると、どうやって対処していいかわからないんです。頭がパニくるというか」 橋本に掴まれた手首を撫で擦る姿を見て、思ったよりも強い力を使ってしまったことを知る。「悪かったな、イケメンじゃなくて!」 しかも告げられた内容が胸にグサッとくるものだったこともあり、顔を明後日に向けて文句を言ってしまった。宮本はそんな恋人の態度に臆することなく、橋本の顔を両手で掴んで無理やり自分に向けた。「陽さんはイケメンですよ。近くにいてやり取りしてるから、やっと慣れたんです。今でもときどき、困ることがあるんです」 目を逸らすことなくじっと見つめるまなざしから、心の内を語っているのが見てとれた。「困ることって、そんなのいつだよ?」「……今です。和臣さんにヤキモチ妬いてブーたれてる陽さん、すっごく可愛いです」「ぶっ!?」 いきなり投げつけられた『可愛い』という言葉に、橋本の顔が真っ赤になる。しかも不機嫌な顔が可愛いと言われたせ
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