Home / BL / BL小説短編集 / Chapter 161 - Chapter 170

All Chapters of BL小説短編集: Chapter 161 - Chapter 170

196 Chapters

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ9

*** 平日の夜遅くに現れた宮本の姿に、橋本は心の中で歓喜した。きっと、一緒に住めるマンションを見つけたに違いない。 そう思ったゆえに、弾んだ声で話しかける。「雅輝、よく来たな。泊まってくのか?」「あ、泊まらないです、けど……。むぅ」 どこか歯切れの悪さを感じさせる返事に、首をかしげてしまった。「だったら、何しに来たんだ?」 変な質問をした自分にハッとしつつも、困り顔を決め込む恋人から目が離せない。「あのですね、陽さんのご実家に、挨拶に伺ったほうがいいんじゃないかと思って。そのまま一緒に住むのに、どうにも抵抗が……」「お前がわざわざ、挨拶するまでもない。家には、友達とルームシェアすると言ってあるし」「ルームシェア……」「しょうがないだろ。それ以外の言葉が見つからなかった」 いつかは、結婚するための同棲――実家に事実を突きつけることを躊躇った橋本を見て、宮本はさらに渋い表情になった。「俺みたいのが相手じゃ、堂々とご実家に連れて行くのには、戸惑いがありますよね」「違うって、そんなことあるわけないだろ」「じゃあどうして陽さんのご実家に、俺が挨拶しに行ったら駄目なんですか?」 悲壮感漂う宮本の声が、玄関の中に響いた。多分、外にも漏れていると思える、とても大きな声だった。「それはだな、お前がどうこういう話じゃなくて、俺自身の問題があるんだ」 宮本が漂わせる雰囲気に飲まれて、今度は橋本の返事がえらく歯切れの悪いものになった。「陽さんの問題?」「親に会わせる、俺の決心が足りない……」 定まらない視線をそのままに、震える声で橋本が告げると、宮本はがっくりと項垂れるように首をもたげた。「……それはいつになったら、決心がつくんですか?」 しばしの間ののちに告げられた問いかけに、彷徨わせていた視線を宮本に合した。橋本に目を合わせないようにするためなのか、俯いた状態で、玄関にある靴を意味なく眺める。
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ10

「いつという、はっきりとした期間は断言できないが、引っ越すまでには気持ちの整理をつけて、親に報告しようかと思ってる。まずは雅輝抜きで、説明しようかと」「そうですか。分かりました」 俯かせていた顔を上げた宮本に、橋本は嫌な感じを覚えた。 言い合いした際は、納得するまで自分に食らいつくはずの宮本が、あっさり納得したことを不思議に思い、疑惑の視線を投げかけた。「雅輝?」「すみません、陽さん。俺ってばひとりでぐるぐる考えてたら、煮詰まっちゃったみたいですね。そこまで、焦るほどのものじゃないのに」 猜疑心溢れる橋本の視線を受け続けるせいか、宮本は躰を小さくするように背中を丸めた。「まぁな……」「陽さんの決心がついたら、教えてください。俺はいつでもご実家に顔を出せる、心の準備をしておきますので。それじゃあ!」 しんみりした雰囲気を払拭するような笑みを振りまきながら、まくし立てる感じで言いたいことを言うなり、逃げるみたいに玄関から飛び出した恋人を、橋本は追いかけることができなかった。 どことなく泣き出しそうな笑みだった宮本の心情を考えると、自分が手を差し伸べた時点で、気を遣われそうな気がして、どうしても追いかけることができなかったのである。
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ11

*** 2月14日バレンタインデー当日、宮本はものすごく困惑していた。毎年この日は宮本にとって、チョコを貰えない憂鬱な日と化していたのに、今年に限ってそれが違ったのである。「前から宮本さんのこと、いいなって思ってました。付き合ってください!」「へっ!? ぉ、俺?」 ちなみにこの告白、本日これで3度目だったりする。3度目だからこそ、断る言葉が最初よりすんなり出るものの、胸がしくしく痛んだ。「ごめんなさい。付き合ってる人が既にいて……」 なるべく傷つけないような言葉を選びたいのに、現実を突きつけて諦めさせなければならないことを考えたら、これ以外のセリフが出てこない。「そうでしたか。分かりました」 放心状態で目の前を去って行くコや泣き出してしまうコ、そして今は勢いよく踵を返して事務所に戻って行くコに、宮本は丁寧に頭を下げた。(普段はモテない俺がこの状態なのに、カッコイイ陽さんだったら、たくさんの女のコに言い寄られているんだろうな) そんなことを考えながら、乗ってきたデコトラに戻ろうとした。「ヒューヒュー、モテモテだね宮本!! よっ色男!」 肩を落として歩き出した瞬間、デコトラの荷台に寄りかかっていた人物が、いきなり話しかけてきた。「えっ? あ、笹川さん、でしたっけ?」 橋本を助けるために古ビルに侵入したら、笹川という男に妙な追いかけっこをさせられたせいで、必然的に名前を覚えていた。「俺のこと、忘れてなかったのか。それは嬉しいぜ」 荷台から上半身を起こして、ゆっくり近づいてくる笹川を見て、宮本なりに警戒を示すべく、両手に拳を作った。 何か不測の事態があって殴ることになっても、相手は喧嘩慣れしているヤクザなので無駄な行動だろうが、気持ち的には何もしないよりはマシだった。「そんなに怖い顔すんなって。今日は、ビジネスの話をしに来ただけだ」 まったく考えていなかった内容に、宮本の拳がふわっと緩んだ。「ビジネス、ですか?」 いつもより声のトーンを上げて質問を投げかけた宮本に、笹川は満面の笑みを浮かべる。
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ12

「俺が指示した場所に、荷物を無事に送り届ける仕事だ。タイミングとしては、地震が起きたとき限定で」「地震?」 笹川に自然災害を口に出されたと同時に、宮本の眉根に深い皺が寄る。マグニチュードが大きいものであれば必然的に道路が寸断され、荷物が運べなくなるのが容易に想像ついた。 しかめっ面をしている宮本を目の当たりにしているのにも関わらず、笹川はにこやかな表情のまま、流暢に口を開く。「被災した土地いる仲間に、食料品や日用品を届けてほしい」「もしやその中に、ヤバいブツを混入しようとしてませんか?」 いつもは回らない頭を宮本はフルで回転させ、あり得そうなことを指摘してみた。 前回のやり取りで分かったこと。 逃げる宮本をしつこく追いかけてきた、タチの悪そうなヤクザの笹川――仕事と称して、危険なことの片棒を担ぐことになったら、それこそたまったものじゃない。 そんな気持ちを込めて、じろりと睨みを利かせた。 宮本としては必死に睨んでいるのに、笹川はそれすらもおかしいといった感じで、微笑みを絶やさなかった。「お前なりにいろいろ考えたんだろうが、非常事態のときにそんなことするかよ。素人相手にヤバいブツを運ばせるなんて、馬鹿な三下のやることさ。俺なら、絶対に足のつかない方法でやり取りする」 三白眼を細めて言いきった笹川を見て、じりじり後退りをした。嫌な予感が、宮本の中でふつふつと渦巻く。そのせいで、逃げ出さずにはいられなかった。「……愛車を置いて、どこにとんずらしようとしてるんだ。さっき告ってきた女のところに、助けを求める気か?」
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ13

「助けを求めるなんて、そんなこと――」「格好悪くてできないよなぁ。しかも告白を断った相手だし」「彼女には助けを求めません。そうじゃなくて……」 この場をどう乗り切るか焦ってしまい、言葉が空を切る。「あの女に告白されたこと、橋本さんには内緒にしておくんだろ?」 笹川の追求に、後退りしていた宮本の足がぴたりと止まった。「へっ!?」 ぽんと軽く投げかけられた質問に、頭がついていかない。「陽さんには今日あったことを、一応報告しますけど」「なんでだ。俺と追いかけっこしただけで、心配を通り越して妬きまくったあの橋本さんに、女に告白されたことなんて言ったら、お前殺されるかもしれないぞ」 驚きを隠せないのか、笹川は身振り手振りまで使って、このあと起こるであろう出来事をまじえつつ、宮本に熱く語りかけた。「殺されはしないと思いますけど……。ただ、延々と文句くらい言われる気がします。『外でカッコつけて仕事してるんだろ』なぁんて」 宮本は後頭部をバリバリ掻きながら、橋本の不機嫌そうな顔を頭の中で思い浮かべた。(ヤキモチがあったらあったでそれが刺激になり、なんだかんだ仲良くなれる気がするんだよな。だから余計なことかもしれないけれど、どんなことでも陽さんにぶっちゃけられちゃうところはある)「宮本……」「あ、はい?」「俺、ますますお前に仕事を頼みたくなった」 あっと思ったときには目の前に笹川がいて、逃げ出す間もなく宮本の利き腕を掴んでいた。どんなにもがいても、びくともしない。腕力差は歴然としていたが、空いてる手を使って利き腕を外すべく、果敢にチャレンジした。「んもぅ、この手を放してください!」 橋本のことを考えるとそれにとらわれて、つい動きが鈍ってしまうことに気がついても、すでに遅し――。「表裏のないお前がすっげぇ気に入った。とりあえず今日はこのまま諦めて帰るが、絶対に弱みを握って仕事をさせてやる」「弱みを握ること前提で仕事をさせるって、恐喝じゃないですか。そんなものには屈しませんよ」
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ14

 掴まれてる腕を振り解こうと両腕に力を入れたら、あっけなく外れた。思いっきり力を入れていたこともあり、その勢いがそのまま左手の拳に乗っかり、裏拳となって笹川の額に当たる。 ごんっ!「ひっ! すんませんっ、殴るつもりはなかったっす!」「宮本に暴力を振るわれた、すげぇ痛い。病院行って、診断書を出してもらおうかなぁ。赤くなってるだろ?」 殴ってしまった左手を右手で握りしめて、これ以上何もしないことをアピールしながら、笹川のオデコを見てみると、少しだけ赤みがあった。「ぁあぁああ、赤くなってますぅ……」(不可抗力とはいえ、ヤクザ相手に暴力を振るってしまった! 警察沙汰にならない代わりに、すごいことを要求されるか、はたまたコンクリ漬けにされて、海の藻屑にされるかもしれない。万事休す!)「俺は優しいから、高額な慰謝料なんてものを請求しない。そこんところは安心しろ」 顔を青ざめさせて怯える宮本に、笹川はオデコを擦りつつ満面の笑みを浮かべた。普段は空気を読めないのに、非常事態だったせいで、その笑みが嫌なものにしか見えない。 宮本はそんな雰囲気を、ひしひしと肌で感じとった。「笹川さん慰謝料の代わりに、何かを請求したりしませんよね?」 こういうときだからこそ、白黒はっきりさせねばと意を決して訊ねた。自分の命を請求されませんようにと、心の中でひたすら祈る。「俺の願いはただひとつ。お前に荷物を運んでもらうことだけさ。断ることなんてしないよな? こんな大怪我を負わせたのに、そのまま帰るなんて不義理なことを、生真面目な宮本がするはずはないし」「なっ、大怪我じゃないでしょ! オデコがちょっとだけ、赤くなってるだけじゃないですか」「赤くなってる時点で、打撲痕決定だ。残念だったなぁ」 肩を落としてがっくりうな垂れる宮本に、笹川は胸ポケットから何かを取り出し、手に握らせた。仕方なくそれを確認したら、暴力団らしくない横文字の会社名が印刷された名刺だった。「ほら、お前の連絡先を寄こせ。仕事の依頼ができないだろ」「あ、はい……」 逃げきれないと観念して、デコトラに置きっぱなしにしている名刺を渡すことにした。「どうしても仕事が忙しくて手が回らない状態なら、遠慮なく言えよ。無理強いはしないから」「分かりました……」 宮本が手渡した名刺を受け取り、大事そうにポケットにしま
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ15

***「……ということになっちゃいました」「雅輝、お前は本当に……。ああ、くそっ! 俺がその場にいたら、最悪の事態を回避できたかもしれない」 話を聞き終えた橋本は、ソファで頭を抱えながら背中を丸める。宮本はその様子を立ったまま、微妙な表情で見下ろした。「でもあの場に陽さんがいても、結局笹川さんと喧嘩になって、もっと大変なことになっている可能性が……」「確かにイラつくかもしれないが、俺はそこまでバカじゃねぇよ。相手はあの笹川だからな、用心するに決まってる」 抱えていた頭をあげて、ビシッと断言した橋本を見るなり、宮本はなぜか頬を赤く染めた。「……おい、どうして耳まで顔を赤くさせてるんだ?」 思いっきり白い目で橋本に見つめられているというのに、赤らんだ頬を両手で擦りながら、ニヤけそうになるのをごまかすように口を開く。「やっぱり陽さんはカッコよくて、頼りがいのある恋人だなぁと思ったら、ドキドキしちゃいました」「あ、そう……」 唐突に投げつけられた、熱の入った宮本の告白で、橋本の顔も赤くなる。(雅輝め、くそっ。女から告られたことについて、ここぞとばかりに追求したかったのに、こんな雰囲気じゃできそうもねぇな。俺の口を塞ぐために計算して言ったんじゃなく、天然ボケをかました結果というのが、唯一の救いだ)「ねぇ陽さん」「なんだよ?」「陽さんはチョコ、誰かから貰った?」「貰ってない。というか義理チョコもなければ、告白されることもなかった。いい歳した俺を相手にする奴なんて、どこにもいないさ」 肩を竦めながらへらっと笑った刹那、真四角の箱が目の前に突き出された。 漆黒の包装紙で包まれた箱には、パステルピンクのリボンがお洒落な感じで結ばれているだけじゃなく、造花の小さな赤いバラが一輪添えられていた。「バレンタインおめでとう、陽さん」「…………」「むぅ? おめでとうは変か。誕生日じゃないんだし」 ツッコミどころ満載の宮本にたいして、いろいろ物申したかった橋本だったが、あえて無言を貫いた。
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ16

 両手で差し出された真四角の箱と宮本の顔を交互に見やる、恋人の冷たい態度に緊張したのか、ぶわっと頬を染めたままフリーズする。「どうした雅輝?」 カチンコチンに凍った人形のような宮本を見て、仕方なく話しかけた。「あ、その、えっとただ『はい、陽さん』って、気軽にチョコを渡そうと直前まで思ったんです」「うん……」「ただ渡すだけじゃ芸がないというのに気がついて、頭の中で一番最初に浮かんだことを言ったんですけど、それが思いのほか外してしまったのがショックでして」「お前は今日、3人の女からチョコを渡されてるんだろ?」 ふいっと宮本から視線を逸らしながら、追求したかったネタを口にした。「はい、いただきました。貰えるなんて思ってなかったので、びっくりしちゃって」 バツの悪そうな宮本の声が、静まり返ったリビングに妙に響く。「貰えるなんて思ってなかったって、なんだそりゃ」「だって俺は江藤ちんや陽さんみたいにカッコよくないし、冴えないただオタクでしょ」「それなのに今年に限って、3人の女からバレンタインに告白された。今までとは、何かが変わってるんだって」 差し出されていた真四角の箱が、宮本の胸元に引き寄せられる。大事そうに抱えてる様子を、橋本は横目で盗み見た。「変わってるところ?」「そうだ。俺と付き合ってから、変わったところがあるんじゃないか?」 橋本は気がついていたが、自分で答えを導いてほしくて、あえて疑問を投げかけた。「むぅ……。陽さんの隣に並んでも見劣りしないように、毎月美容室で髪を切ったり、服装も陽さんが見立ててくれたものを着るのが増えていることでしょうか」「性格は二重丸なお前がモテなかった要因のひとつが、外見が無頓着だったからだろうな。というか今頃それに気がついて、雅輝にアタックしてくる女どもに、俺は腹が立つ!」「俺の全部を知ってる陽さんが大好きです。受け取ってください」 そっぽを向いたままでいる橋本の目の前に、例の箱が音もなく差し出された。黙ったまま、ひょいとそれを受けとる。
Read more

バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ17

「チョコ、ありがと……」(雅輝からチョコを貰えるなんて思ってもみなかったから、衝撃が半端ない)「陽さんのことだから、チョコをたくさん貰ってると思って心配してたんです」「杞憂に終わってよかったな」 手渡されたチョコについている小さなバラに意味なく触れて、橋本なりに照れくささを隠した。「あのね陽さん、そのぅ」 歯切れの悪い宮本の言葉に渋々顔を上げると、背中を丸めて大きな躰を小さくしながら、落ち着きなく両手を動かしていた。「なんだ?」 いつも以上に妙な恋人の姿を目の当たりにして、橋本は首を傾げて訊ねた。「えっとですね……、ぉ、俺の告白に答えていただきたいと思いまして」「答えるって、口頭で答えればいいのか? それとも――」 あえて語尾を濁した橋本。見つめている先にある顔は、ここぞとばかりに真っ赤に染まる。不器用な宮本なりの誘い文句に意地悪なセリフで返した、橋本の作戦勝ちだった。「……両方返してほしいです」 蚊の鳴くような小さな呟きに、橋本は大爆笑する。「両方って、言葉と何だよ? きちんと言わなきゃ返せねぇぞ」 ゲラゲラ笑い倒す橋本とは対照的に、宮本は耳まで真っ赤になり、泣き出しそうな表情になった。「雅輝、俺が欲しいんだろ? 遠慮せずに言えって」「陽さん……」「たまには、奪われてみた――」 最後まで言えなかったのは、宮本が無言のまま橋本を抱きすくめ、唇を奪ったから。手にしていたチョコは床に転がり、あっと思ったときにはソファの上に押し倒されていた。 激しくなるくちづけに、橋本の呼吸がままならなかった。「んぅっ、ふ……んっ」 絡んでくる宮本の舌に感じて、下半身が熱を持つ。それを知られないようにすべく腰を引いたら、上から躰を押さえつけるようにしっかりと跨ってきた。「逃げないで、陽さん」 気遣う言葉とは裏腹に、宮本の片手が自身に触れる。室内着の薄い麻のズボンの上から触れられて、宮本のてのひらの体温をじわりと感じた。いつもより高いそれと、快感を与えるように淫靡に動く所作に、橋本の思考が簡単に停止する。「ま、さきっ」「俺は奪う抱き方よりも、こうやってじっくりと触っていく内に、陽さんがエッチになっていく姿を眺めていたいんだけどな」 自分の顔を覗き込むように見つめる恋人のまなざしで、頬が赤らんだのが分かった。「そんな、目で……じっと見
Read more

うらない

日曜の早朝だというのに、リビングから物音が聞こえたせいで、橋本は目を開けた。いつもは自分よりも寝坊をしているはずの宮本が、ベッドの中にいなかった。物音の原因が恋人だったことにほっとしながら、布団から抜け出す。「雅輝、おはよ。珍しく早いのな」「おはようございます陽さん。起こしちゃいました?」「まぁな。朝飯作ってくれたのか」 テーブルにならべられている朝食に、視線を飛ばす。ご飯に味噌汁、玉子焼きとサラダというメニューなれど、普段は料理を作らない宮本にしては、朝から頑張ったのが明白だった。「いつもは陽さんが作ってくれるので、たまにはしてあげなきゃと思いまして」「毎日仕事で遅く帰ってきてるのに、日曜くらい無理しなくていいんだぞ」 そう言いながら、宮本の隣に座り込んだ。「ねぇ陽さん」「ん?」「今朝のテレビで占いやってたんですけど、早速ラッキーなことが起きて嬉しいっす」「ラッキーなこと?」 胡坐をかいて座った橋本の肩に、宮本が肩をくっつけて並ぶ。離れていた時間を埋めるその行為に、橋本の口角が自然とあがった。(雅輝の頑張りを褒めてやらないといけないよな――) 冷めないうちに手をつけるべく、湯気をたてている味噌汁に口をつけた。「よくぞ聞いてくれました。今日1日ノーパンで過ごすのがラッキーだって、占いで言ってたんです」( ゚∀゚)・∵ブハッ!! 宮本のセリフに、橋本は飲みかけていた味噌汁を吹き出してしまった。「陽さん、大丈夫ですか?」「大丈夫なのかと心配しなきゃなんねぇのは、おまえの頭の中だ!」 橋本が吹きこぼした味噌汁を、宮本がふきんを使って、いそいそと綺麗にする。「あ、済まない。あまりに衝撃的な発言に、何も手がつかなくなった」「そうですか?」「ちなみに、現在進行形でノーパンなのかよ」「はい。朝からこうして陽さんのお世話ができて、俺は幸せです」 ノーパンと聞いたのにもかかわらず、橋本は宮本が身につけている室内着の短パンのゴムを引っ張って、トランクスを履いていないことを確認した。「陽さんのエッチ」 宮本は短パンのゴムを引っ張る橋本の手を叩いて、ぽっと頬を染めた。「ご飯食べ終わったらさ、その……」 赤ら顔の宮本に、橋本が視線を逸らしながら話しかける。「なんですか?」 食事中にする会話じゃないことはわかっていたが、誘わず
Read more
PREV
1
...
151617181920
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status