「ぐあぁぁぁっ……!」 緋宮の絶叫が、淵の底に響き渡った。 無数に降り注いだ鎖が、緋宮の四肢に蛇のように絡みつき、その白い狩衣を焼き焦がしていく。 それはただの鉄鎖ではなかった。鎖の一本一本に刻まれた呪言が、赤い火花を散らしながら、緋宮の皮膚を冒しているようだった。 肉の焦げる嫌な臭いが立ち込め、凍てついた花の甘さを暴力的に塗り潰していく。「緋宮様っ!」 瑞礼は駆け寄ろうとしたが、緋宮が血走った目でそれを制した。「来るなっ! 触れれば、お前まで焼かれる……!」 緋宮は全身から白煙を上げながらも、膝をつき、瑞礼を自身の背後に庇い続けていた。 鎖はさらにきつく彼を締め上げる。ぎりぎりと骨の軋む音が、瑞礼の鼓膜を直接削るように響く。 崖の上では、白装束の陰陽師たちが祝詞らしきものを唱え続けている。彼らの詠唱が強まるたび、緋宮の力が削がれ、命の火が細っていくのがわかった。「……さすがは龍神。帝の血を用いた呪縛鎖を受けてなお、意識を保っておるとは」 崖の上から、坂上田村麻呂の感嘆とも哀れみともつかぬ声が降ってくる。言いながら、巨漢の将軍はゆっくりと身の丈ほどもある大弓を構えた。 ぎり……と弓を引き絞る音が、淵の底にまで死神の足音のように聞こえてくる。 その大弓に番えられた矢は、異様だった。 それは太く、鈍く重い光を放つ鉄杭だ。その先端がなにやらぬらりと、不浄な光を反射している。 それが何であるか、瑞礼にはわからない。だが、本能が警鐘を鳴らしていた。 あれは、生きとし生けるものを沈めるための呪いの塊だ。かすっただけでも、魂ごと腐り落ちるような、おぞましい死の気配を放っている。「終わりだ、緋宮。……その力、お前の心臓ごと貰い受ける」 田村麻呂の腕が、極限まで弓を引き絞った。 狙いは正確無比。鎖に繋がれ、身動きの取れない緋宮の左胸――心臓だ。「やめろ&he
Terakhir Diperbarui : 2026-02-22 Baca selengkapnya