「……もうこんな時間か」 時計の針が、夕方の五時を少し過ぎていた。 窓の外は、すでに薄暗くなりはじめていて、カーテンの隙間から差し込む光も、どこか頼りない。 洗濯物を取り込んで、掃除機をかけていたら、あっという間だった。 家が広いと、やることも多い。 ひとつ終われば、またひとつ。 気づけば、手はずっと動いていた。 でも、心はずっと、湊さんのことを考えていた。 そろそろ帰ってくる頃だ。 夜ごはんの支度を始めないと。 今日は、何がいいだろう。 疲れてるだろうから、あたたかくて、ほっとするものがいいよね。 冷蔵庫を開けながら、私はふと、昨夜の自分の言葉を思い出す。 「……ちゃんと、謝らないと」 ぽつりとつぶやいた声が、静かなキッチンに溶けていく。 彼が帰ってきたら、まずは「おかえりなさい」って言おう。 それから、ちゃんと顔を見て、「ごめんね」って伝えよう。 そして、今日のことを、たくさん聞かせてもらおう。 どんな一日だったのか、どんな人たちと出会ったのか、どんな気持ちで過ごしていたのか。 私はエプロンの紐を結び直した。 まずはスープから。 玉ねぎを薄くスライスし、人参とじゃがいもを小さめに切る。冷蔵庫の奥に残っていたベーコンも刻んで、鍋にオリーブオイルをひいて、じっくり炒める。 じわじわと立ちのぼる香ばしい匂いに、少しだけ肩の力が抜けた。 水とコンソメを加えて煮込みながら、その間にグラタンの準備に取りかかる。 マカロニを茹でて、ホワイトソースを作る。 バター、小麦粉、牛乳。 焦がさないように、木べらでゆっくり混ぜ続ける。 とろみがついてきたら、塩と胡椒で味を整え、茹でたマカロニと炒めた玉ねぎ、鶏肉を加えて混ぜる。 耐熱皿に流し込み、チーズをたっぷりのせて、オーブンに入れる。 タ
Last Updated : 2025-12-30 Read more