「今回は…いや、今回も、私が悪いんだよ」 その言葉は、喉の奥から絞り出すようにして出た。今回も。という言葉が、自分の中で妙に響いた。「そんなことないよ」湊さんの声は、驚くほど優しかった。でも、私の話を聞いても、同じことを言ってくれるだろうか。「湊さんが記憶喪失になった日、私が、私が…」言葉が、喉の奥で詰まった。それでも、どうしても言わなければならない気がした。あの日のことを、ずっと胸の奥にしまってきた。でも、湊さんの記憶が戻らないまま、私だけがあの日のことを抱えて生きていくのは、間違ってると思うから。言わないからと言って、私の過ちがなくなるわけじゃない。呼吸が浅くなって、視界が滲んだ。「彩花、無理に話そうとしなくてもいいんだよ」湊さんだって知りたいはずなのに、それでも私の心を優先してくれる。今更だけど、でも、湊さんは私のために尽くしてくれるのに、私も正直であるべきだと思った。「湊さんが、話したくないなら話さなくてもいいって言ってくれたけど、湊さんにも知る権利があると思う」声が震えた。でも、言葉は止まらなかった。「僕のことなら──────」その言葉の続きを、私は聞かなくても分かった気がした。僕のことなら気にしなくていい。今の湊さんなら、きっとそう言うだろう。私の痛みを、私以上に大切にしてくれて、私が言葉に詰まれば、無理に聞き出そうとはしない。私が黙っていれば、その沈黙ごと受け止めてくれる。今の私には、その優しさは甘すぎた。「それに、もう逃げちゃだめだから」その言葉は、自分自身に向けたものだった。湊さんの優しさに、私は何度も救われてきた。
最終更新日 : 2026-01-21 続きを読む