All Chapters of 攻略対象は私じゃない! ~腐女子が神視点で推しカプ見てたら、いつの間にか逆ハーレムの中心にいた件~: Chapter 121 - Chapter 130

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第121話:スランプと支え⑩

 その指先が首筋に触れ、ドキリとする。「栞。……話してもいいか?」「うん?」「俺がこの数日、何をしていたか」 輝くんの表情が、スッと真面目なものに変わる。 ビジネスモードの「天王寺輝」の顔だ。でも、以前のような孤高の冷たさはない。パートナーである私に向けられた、信頼の眼差し。「今日……投資家との最終プレゼンがあったんだ」「えっ……最終?」「ああ。これまでの交渉の総仕上げだ。……もしこれがダメなら、立ち上げようとしていたプロジェクトは白紙に戻るところだった」 息を呑む。 そんな瀬戸際の戦いを、彼はたった一人で、私に心配かけまいと黙って戦っていたのか。「結果は……?」「……取れたよ」 ふっ、と彼が息を吐き、破顔した。 それは、自信と安堵が入り混じった、最高の笑顔だった。「満額回答だ。……『君の描く未来に賭けてみたい』って言われたよ」「……っ!!」 スプーンを取り落としそうになる。 すごい。すごすぎる。 天王寺の名前も、親のコネも使わずに。彼自身の力だけで、大人たちを認めさせたんだ。「輝くん……! おめでとう……!」「ありがとう。……でも、俺が頑張れたのは、栞のおかげだよ」「私?」「ああ。プレゼンの最中、厳しい質問攻めに遭って心が折れそうになった時……栞の顔が浮かんだんだ」 彼は私の手を取り、自分の頬に寄せた。 伸びかけの髭が少しチクチクして、男の人なんだな、と改めて思う。「あの雨の日、『ここが輝くんの家だよ』って言ってくれた時の顔。……あの笑顔を守るためなら、俺は何だってできると思った」「
last updateLast Updated : 2026-01-26
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第122話:スランプと支え⑪

 いつぞやの黒歴史(BLプレゼン)を思い出して顔が赤くなるけれど、今の彼の言葉は茶化しているわけじゃなかった。「場所が変わっても、形が変わっても……栞がその『好き』を持ち続けている限り、夢は終わらない。俺はそう思う」「……っ」「それに、俺は栞の最初のファンだから」 彼は悪戯っぽく片目を瞑り、私の額にコツンと自分の額を押し当てた。「俺に『愛』の尊さを教えてくれたのは、栞だろ? ……その感性は、絶対に誰かの心を動かす武器になる」 涙腺が、決壊した。 ボロボロとこぼれ落ちる涙を、彼は親指で優しく拭ってくれる。 否定されたと思っていた。社会からも、世界からも、必要とされていないと。 でも、一番大切な人が、こんなにも私を肯定してくれている。「武器になる」と言ってくれている。 それだけで、十分だった。 落ちたことの悔しさは消えないけれど、前を向く勇気が、体の底から湧いてくる。「……うん。うん……!」「いい顔になった」 輝くんは満足そうに微笑むと、そのまま顔を寄せてきた。 触れ合う唇。 プリンの甘い味と、しょっぱい涙の味が混ざり合う。「……ごちそうさま」 唇を離し、彼が艶っぽく囁く。 その瞳の色が、先ほどまでの優しいものから、少しだけ熱を帯びた「男」の色に変わっていることに気づいて、ドキリとした。「プリン、食べたし。……元気、出た?」「う、うん。おかげさまで……」「そっか。……じゃあ」 彼の手が、私の腰に回る。 ぐいっ、と引き寄せられ、ソファ代わりのベッドに押し倒される形になった。「ひゃっ!?」「次は、俺が元気を貰う番でもいいかな?」 覆いかぶさる彼の影。 逆光になった表情は見えないけれど、低く響
last updateLast Updated : 2026-01-26
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第123話:スランプと支え⑫

 翌朝。 目が覚めると、輝くんはまだ隣で眠っていた。 昨夜の情熱的な彼とは打って変わって、子供のように無防備な寝顔だ。 その頬をつんと指でつつくと、「ん……」と唸って、私を抱き枕のように腕の中に引き寄せた。(……重いけど、幸せ) 時計を見ると、いつもより少し遅い時間だ。 今日は日曜日。二人とも、久しぶりの完全オフだ。「……ん、おはよ」 しばらくして、輝くんがもぞもぞと起き出した。 寝癖がついた髪が可愛い。「おはよう、輝くん。……よく眠れた?」「ああ。……泥のように眠った。こんなに深く寝たの、いつぶりだろう」 彼は大きく伸びをし、私を見てふにゃりと笑った。「……栞がいると、やっぱり違うな。充電完了って感じ」「ふふ、私もだよ」 二人で布団の中でまどろんでいると、不意に私のスマホが鳴った。 メッセージの着信音だ。 画面を見ると、『氷室 奏』の名前。『おはよう、月詠。昨日はすまなかった。少し強引だったかもしれない。天王寺とは、ちゃんと話せたか?』 短い文面に込められた、彼らしい気遣い。 そして、追伸があった。『P.S.アルカディア・ワークスの件だが。二次募集があるらしい。企画職の枠で、欠員が出たとかで。詳細は公式サイトには出ていないが、教授の伝手で聞いた。……諦めるなよ』「……っ!」 ガバッと布団から起き上がる。 隣で輝くんが「どしたの?」と目を丸くしている。「か、輝くん! チャンス! まだチャンスあるかも!」「え?」 私は奏くんからのメッセージを見せた。 輝くんはそれを読み、少しだけ複雑そうな、でもすぐに力強い笑顔を見せた。「&hel
last updateLast Updated : 2026-01-26
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第124話:輝のプロポーズ(仮)①

 季節の移ろいというのは、いつも足音を忍ばせてやってくる。 窓の外で唸り声を上げていた木枯らしは、いつの間にかどこかへ鳴りを潜め、代わりに柔らかな日差しが、冬の間に固く閉ざされていた蕾を、指先で優しく叩くようにノックし始めていた。 三月。 別れと出会い、そして何かが始まろうとする気配に満ちた季節だ。「……よし。これで、理屈は全部通ったかな」 パタン、とノートパソコンを閉じる乾いた音が、静まり返ったワンルームに響く。 ローテーブルを挟んで向かい合っていた天王寺輝くんが、凝り固まった背中をほぐすように大きく伸びをして、天井を仰いだ。 その横顔には、ここ数ヶ月、薄皮のように張り付いていた焦りの色はもうない。あるのは、長い坂道を登り切った後にだけ見せるような、清々しい達成感だった。「お疲れ様、輝くん……契約書、全部見終わった?」「ああ。弁護士のチェックも済んだし、あとはハンコを押すだけだよ」 彼は少年のようにニカッと笑うと、テーブルの上に積み上げられた分厚い書類の束を、愛おしそうにポンと手のひらで叩いた。 そこには、彼がゼロから立ち上げた新しい会社の登記書類や、投資家と交わす契約書が収められている。 天王寺家という巨大な後ろ盾も、親の威光も、コネさえも使わずに。 彼が自分の足で街を歩き回り、頭を下げ、ただ情熱だけを燃料にして勝ち取った「未来」への設計図だ。「すごいね……本当に、社長さんになっちゃうんだ」「まだスタートラインに立っただけさ。……でも、ようやく形になった」 輝くんが、冷めかけたコーヒーカップを手に取り、一口飲む。 立ち上る湯気の向こう、緩められたネクタイと、第一ボタンを外したワイシャツの首元が目に入る。仕事モードからふっと素の自分に戻る瞬間の、無防備な色気とでも言うべきもの。 付き合い始めて半年以上経つというのに、私の心臓はいまだに学習能力がないらしく、肋骨の裏側でトクンと大きく跳ねた。(……か
last updateLast Updated : 2026-01-27
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第125話:輝のプロポーズ(仮)②

「どれ、見せてみなよ」「えっ、まだ恥ずかしいよ……!」「何言ってんだ。俺は栞の一番のファンだって言っただろ」 彼は立ち上がると、テーブルを回って私の隣に腰を下ろした。 肩と肩が触れ合う距離。シャツ越しに彼の高い体温が伝わってくる。 彼は私のノートを覗き込み、真剣な目で並んだ文字を追い始めた。「……なるほど。『ユーザーがキャラに干渉するのではなく、見守ることに特化したシステム』か」「う、うん……やっぱり、変かな? 乙女ゲームなのに、自分から恋愛しにいかないなんて」「いや、面白いよ。栞らしい着眼点だ」 彼はまず肯定した上で、胸ポケットから赤ペンを取り出し、さらさらと要点を書き込んでいく。「ただ、これだとターゲット層が少し狭すぎるかもしれないな……『見守る』ことでキャラがどう成長するか、そのカタルシスをもっと具体的にアピールした方がいい」「あ……そっか」「あと、ここの収益モデル……推しへの課金動線を、もっと感情に訴える流れにした方が説得力が増すはずだ」 的確すぎるアドバイスに、思わず唸る。 それもそのはず、彼は今や海千山千の投資家たちを相手に、自分のビジネスプランを売り込んできた「プロ」なのだ。 その彼が、私の拙い企画書を本気でコンサルティングしてくれている。「……輝くん、スパダリすぎる」「ん? 何か言ったか」「ううん! ありがとう、すごく参考になる」 私はペンを握り直し、彼がこぼした言葉を逃さないよう必死にメモを取った。 隣にいる彼が、時折私の髪をすくように撫でたり、煮詰まった時に新しいコーヒーを淹れてくれたりする。 そのさりげない優しさが、不安で押しつぶされそうな私の背中を、何度支えてくれたことか。「栞なら、絶対に大丈夫だ」 不意に、彼の手が私の手を包み込んだ。 大きくて、温かい手。
last updateLast Updated : 2026-01-27
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第126話:輝のプロポーズ(仮)③

 彼の広い背中が、小刻みに震えているように見えた。「……輝くん?」「……決まった」 彼がゆっくりと、重い扉を開けるような動作で振り向く。 その顔は、今にも泣き出しそうなほどくしゃくしゃで、それでいて、雲間から差す太陽みたいに眩しい笑顔だった。「投資契約、正式に決まったよ……来月から、オフィスを借りて事業をスタートできる」「……っ!」 包丁を置いて、彼のもとへ駆け寄った。 言葉なんていらなかった。私たちはどちらからともなく手を伸ばし、強く抱きしめ合った。「よかった……! 本当によかったね、輝くん……!」「ああ……長かった……本当に、長かった」 彼の腕が、私の背中に強く回される。 耳元で聞こえる震える声から、彼がこれまでどれだけのプレッシャーと一人で戦ってきたかが伝わってきて、私も鼻の奥がツンと熱くなる。 天王寺家を出て、全てを失って。 それでも諦めずに、泥まみれになりながら掴み取った勝利だ。「ありがとう、栞……君がいたから、俺はここまで来れた」「私は何もしてないよ。輝くんが頑張ったからだよ」「ううん。君がいなきゃ、俺はとっくに心が折れてた……君のご飯と、笑顔と、『おかえり』の声に、どれだけ救われたか」 彼が顔を上げ、私の瞳をじっと見つめる。 その蜂蜜色をした瞳の奥に、揺るぎない光が灯っていた。 それは、成功を掴んだ自信と、そして――何か重大な決意を秘めた、熱い光。「……ねえ、栞」「なに?」「今度の日曜日、空けといてくれるか」「え? うん、もちろんだけど……」「行きたい場所があるんだ……二人で」 彼は
last updateLast Updated : 2026-01-27
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第127話:輝のプロポーズ(仮)④

 ◇ 日曜日。 約束の日は、まるで世界そのものが私たちの門出を祝福してくれているかのような、雲ひとつない快晴だった。「……よし。変じゃない、よね」 姿見の前で、私は何度目かのチェックをした。 今日のために新調したわけではないけれど、クローゼットの中で一番春らしい、淡いピンク色のワンピース。 乃亜に「これぞ勝負服!」と太鼓判を押されて選んでもらったものだ。 普段のデニムとパーカーという私の戦闘服(オタク装備)とは対極にあるその服に袖を通すと、背筋がしゃんと伸びるような気がする。「栞、そろそろ行くよ」「あ、うん! 今出る!」 慌ててバッグを掴み、玄関へ向かう。 そこで待っていた輝くんの姿を見て、私は一瞬、息を呑んだ。「……どうしたの? 何か変?」「う、ううん! すごく……かっこいい」 今日の彼は、いつもの少し着崩したラフなスタイルではなく、きちんとジャケットを羽織っていた。 仕立ての良いネイビーのジャケットに、パリッとした白シャツ。 天王寺家にいた頃のような威圧感のある堅苦しいスーツではないけれど、彼が本来持っている清潔感と品の良さが滲み出ている。 前髪を少し上げて額を出したその顔は、精悍で、大人の男性の色気を漂わせていた。「よかった……栞こそ、すごく綺麗だよ」「えへへ……ありがとう」 彼が自然な動作で手を差し出し、私がその掌に自分の手を重ねる。 大きくて、温かい手。 この手に引かれて、私たちは狭いアパートを出発した。「ねえ、輝くん。どこに行くの?」 並んで歩きながら、私は尋ねた。「大事な話」があると言っていた彼。 高級レストランだろうか。それとも、どこか景色の良い公園? 私の貧困な想像力では、ロマンチックな場所のバリエーションがすぐに底をついてしまう。 輝くんは、私の質問に悪戯っぽく口の端を
last updateLast Updated : 2026-01-27
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第128話:輝のプロポーズ(仮)⑤

 私たちは、無言のまま並木道を歩く。 この道は、私がいつも「モブ」として、キラキラ輝く彼らを遠巻きに眺めていた道だ。 そして、彼が初めて私に声をかけてくれた場所でもある。「……ここだよ」 彼が足を止めたのは、中庭だった。 手入れされた芝生と、大きな楠の下にある、古い木製のベンチ。 夕暮れ時にはカップルが座っていることも多いけれど、今は誰もいない。「ここ……」 記憶が、鮮やかに蘇る。 まだ付き合う前。私が彼と氷室奏くんの仲を取り持とうと必死で空回りしていた頃。 そして、彼が初めて私に「好きだ」と伝えてくれた場所。「座ろうか」 彼に促されて、ベンチに腰を下ろした。 頭上で木漏れ日が揺れ、穏やかな時間が流れる。 隣に座る彼の体温が、触れ合う肩から伝わってくる。「……覚えているか、栞」 輝くんが、遠くを見るような目で口を開いた。 その横顔は、陽の光を浴びて透き通るように美しく、そしてどこか切なげだった。「俺が初めて君に声をかけた時のこと」「うん……講義室で、私の隣に座ろうとした時だよね」「そう。あの時、君はいきなり椅子から転げ落ちて……『どうぞお二人で!』なんて言って逃げようとした」 クスクスと喉を鳴らす彼に、私は顔を赤くして抗議する。「だって! あの時は、輝くんが奏くんの隣に座りたいんだって、本気で思ってたんだもん!」「はは、筋金入りだもんなぁ、栞の勘違いは」 彼は楽しそうに笑い、私の頭をポンポンと優しく撫でた。 その手つきの慈しむような柔らかさに、胸がキュンと音を立てる。「でも、あの時……君が俺を見てくれていなかったことが、悔しかったんだ」 不意に、彼の手が止まった。 視線が絡み合う。 彼の蜂蜜色の瞳が、真っ直ぐに私を射抜いていた。「みんなが俺を
last updateLast Updated : 2026-01-28
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第129話:輝のプロポーズ(仮)⑥

 輝くんが、ベンチから立ち上がった。 そして、私の正面に向き直る。 逆光の中で、彼の姿が黄金色に縁取られて見えた。「家柄も、肩書きも、全部捨てて……ただの『天王寺輝』として、君の隣に立つために」 風が吹き抜け、彼の髪を揺らす。 その表情は、いつもの甘い王子様のものではない。 数々の修羅場をくぐり抜け、自分の足で立ち、未来を掴み取った一人の男の、決意に満ちた顔だった。「……栞」 彼が、私の名前を呼ぶ。 その声の響きに、心臓が大きく跳ねた。 予感がした。 ここから先は、もう戻れない。 私たちの関係が、新しい形へと変わっていく、その境界線なのだと。 彼はゆっくりと、私の前で片膝をついた。 まるで、騎士が姫に忠誠を誓うように。 あるいは、王子が愛する人に求婚するように。「……っ」 息を呑む。 周囲の音が消え、世界には彼と私、二人しかいないような静寂が訪れた。 彼が、私の手を取る。 その手は、小刻みに震えていた。 強面な投資家たちを前にしても堂々としていた彼が、今はこんなにも緊張している。 その事実が、何よりも愛おしくて、涙が溢れそうになった。「聞いてほしい……俺の、これからの話を」 彼の瞳が、潤んでいるように見えた。 その奥にある、揺るぎない光。 私は、震える唇を噛み締め、深く頷いた。「……うん」 春の風が、私たちの間を優しく吹き抜けていく。 桜の蕾がほころび始めたキャンパスの片隅で。 私たちの物語は、いよいよクライマックスを迎えようとしていた。「栞」 片膝をついたまま、輝くんが私を見上げる。 その瞳は、木漏れ日を映して宝石のように揺らめいていた。「俺は今、まだ何者でもない……『天王寺』の看板を捨てて、
last updateLast Updated : 2026-01-28
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第130話:輝のプロポーズ(仮)⑦

 風の音も、遠くの街の喧騒も、すべてが遠のいていく。 世界には、私と彼、二人きりしかいない。 プロポーズ。 指輪もなければ、花束もない。 高級レストランのディナーでもないし、夜景の見える場所でもない。 あるのは、色褪せた大学のベンチと、少し肌寒い春の風だけ。 けれど。 私には、これが世界で一番贅沢なプロポーズに思えた。 全てを捨てて、ゼロから立ち上がろうとする彼が、未来を賭けて紡いでくれた言葉だからだ。「……ずるいよ、輝くん」 涙が、ポロポロと頬を伝って溢れ出した。 拭うことも忘れて、私は泣き笑いのような顔で彼を見つめた。「そんなの……断れるわけないじゃん」「栞……」「私は……輝くんが何者でもなくたって、隣にいたいよ。お金持ちじゃなくても、社長さんじゃなくても……ただの輝くんでいいの」 今まで、心のどこかで引っかかっていた「腐女子としての自分」と「彼の恋人としての自分」の境界線が、氷が溶けるように消えていくのを感じた。 推しカプの尊さとは違う。 もっと温かくて、泥臭くて、代わりのきかない感情。 私は、彼の目の前でしゃがみ込み、視線の高さを合わせた。 そして、彼の手を両手で包み込んで、まっすぐに伝えた。「輝くんが推しカプじゃなくても……私は、輝くんが一番好きです」 その言葉を聞いた瞬間、輝くんがハッとしたように目を見開き――次の瞬間、くしゃりと顔を歪めて笑った。 それは、安堵と幸福が溢れ出したような、今にも泣き出しそうな笑顔だった。「……ははっ。勝てないなぁ、栞には」 彼は立ち上がると同時に、私を引き寄せて強く抱きしめた。 力強い腕の中。 彼の心臓の音が、私の耳元で高らかに鳴り響いている。「ありがとう……愛してる、栞」
last updateLast Updated : 2026-01-28
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