その指先が首筋に触れ、ドキリとする。「栞。……話してもいいか?」「うん?」「俺がこの数日、何をしていたか」 輝くんの表情が、スッと真面目なものに変わる。 ビジネスモードの「天王寺輝」の顔だ。でも、以前のような孤高の冷たさはない。パートナーである私に向けられた、信頼の眼差し。「今日……投資家との最終プレゼンがあったんだ」「えっ……最終?」「ああ。これまでの交渉の総仕上げだ。……もしこれがダメなら、立ち上げようとしていたプロジェクトは白紙に戻るところだった」 息を呑む。 そんな瀬戸際の戦いを、彼はたった一人で、私に心配かけまいと黙って戦っていたのか。「結果は……?」「……取れたよ」 ふっ、と彼が息を吐き、破顔した。 それは、自信と安堵が入り混じった、最高の笑顔だった。「満額回答だ。……『君の描く未来に賭けてみたい』って言われたよ」「……っ!!」 スプーンを取り落としそうになる。 すごい。すごすぎる。 天王寺の名前も、親のコネも使わずに。彼自身の力だけで、大人たちを認めさせたんだ。「輝くん……! おめでとう……!」「ありがとう。……でも、俺が頑張れたのは、栞のおかげだよ」「私?」「ああ。プレゼンの最中、厳しい質問攻めに遭って心が折れそうになった時……栞の顔が浮かんだんだ」 彼は私の手を取り、自分の頬に寄せた。 伸びかけの髭が少しチクチクして、男の人なんだな、と改めて思う。「あの雨の日、『ここが輝くんの家だよ』って言ってくれた時の顔。……あの笑顔を守るためなら、俺は何だってできると思った」「
Last Updated : 2026-01-26 Read more