湯気の立つココアを一口飲み、私は正直に礼を言った。甘い液体が食道を下りていき、強張っていた胃を内側から温めてくれる。 奏くんはブラックコーヒーを口にし、カップをソーサーに戻した。カチャン、と陶器が触れ合う澄んだ音がする。 「礼には及ばない。……俺がしたかっただけだ」 彼は窓の外、灰色に曇った空を見つめながら呟いた。 その横顔は、どこか寂しげで、それでいてひどく優しかった。 「月詠」 「ん?」 「……天王寺とは、うまくいっていないのか?」 核心を突く問いに、ドキリと心臓が跳ねた。 カップを持つ手が空中で止まる。 誤魔化そうとして、でも、彼の真剣な灰色の瞳に見つめられると、嘘がつけなくなる。 「……うまくいってない、わけじゃないよ。輝くんは、すっごく頑張ってるし、優しくしてくれるし」 「なら、なぜあんな顔をしていた」 「それは……」 言葉に詰まる。 自分の惨めさを、口に出して認めるのが怖かった。でも、今日一日、不器用なりに私を励まそうとしてくれた彼に対して、これ以上強がるのは失礼な気がした。 私は、膝の上で拳を握りしめ、ぽつりぽつりと話し始めた。 「……私が、ダメなだけなの」 「君が?」 「うん。……輝くんはね、すごいんだよ。家を出て、何もかも失ったはずなのに、自分の力でどんどん道を切り拓いてる。キラキラしてて、強くて……すごく遠い存在になっちゃったみたいで」 一度口を開くと、身体の奥底に溜め込んでいた澱のような想いが、堰を切ったように溢れ出した。 「それに比べて私は、何一つうまくいかない。第一志望にも落ちて、滑り止めも全滅して……。隣にいるのが、私でいいのかなって」 「……」 「輝くんの足を引っ張ってるだけなんじゃないか、彼にはもっと相応しい人がいるんじゃないかって……そんなことばっかり考えちゃうの。自分が嫌になるよ」 最低だ。 彼氏の成功を素直に喜べず、勝手に卑屈になって、勝手に傷ついている。 そんな醜い本音を晒しても、奏くんは軽蔑の言葉を投げかけたりはしなかった。彼はただ静かに、私の独白を聞いていた。 そして、私が言葉を尽くして俯くと、テーブル越しに手を伸ばしてきた。 私の握りしめた拳の上に、彼の手が重なる。 冷たい指先が、私の熱を奪うように、そして新しい熱を与えるように触
Read more