その夜。 アパートに帰ると、部屋は真っ暗だった。 時計の針は深夜二時を回っている。「……まだ、帰ってない」 輝くんからのLIMEには、『ごめん、今日は徹夜で作業になりそう。先に寝てて』というメッセージが入っていた。 昨日は『投資家との会食で遅くなる』だった。 一昨日は『陽翔と打ち合わせがあるから』だった。 ここ三日、彼の寝顔すら見ていない。「……お疲れ様」 誰もいない部屋に向かって呟く。 コンビニで買った冷たいおにぎりを齧りながら、私は膝を抱えた。 輝くんは、頑張ってる。私のために。 頭では分かっている。 彼が必死なのは、私との生活を守るためだ。 私が不安にならないように、一日も早く結果を出そうとしてくれているのだ。 でも。 寂しい。 声が聞きたい。 抱きしめてほしい。 「好きだ」って、言ってほしい。 そんなワガママな感情が、黒いインクのように心の中に広がっていく。 ピロン、とスマホが鳴った。 輝くんからだ。 『今、一区切りついた。……会いたい』 たった一言。 そのメッセージを見た瞬間、堪えていた涙がぽろぽろと溢れ出した。 『私も、会いたい』 そう打ち込もうとして、指が止まる。 今、彼は疲れているはずだ。 私の「会いたい」という言葉が、彼へのプレッシャーになってしまうかもしれない。 重荷になりたくない。 理解のある、いい彼女でいたい。 私は震える指で、文字を消した。 そして、代わりにこう打った。 『お疲れ様。無理しないでね。応援してるよ』 送信ボタンを押した瞬間、胸の奥が引き裂かれるように痛んだ。 これは、私の本心じゃない。 本当は、「今すぐ帰ってきて」って叫びたいのに。 『ありがとう。栞がいるから頑張れるよ』 すぐ
Last Updated : 2026-01-23 Read more