後日──23:45 駅前のアパートメント。「なんかお腹空いた〜」 梨花子はその日寝つきが悪く、寝室からダイニングキッチンへ戻ってきた。「なんだよ。珍しいな」 男性が一人 、酒を飲みながらテレビを観ていた。「たまにはいいよね。夜食♡」「また太るぞ」 男性が酒を飲んでいるテーブルの上には、銀色に光るペアのリングが二つ並んでいた。「今日送られて来たやつ ? 」「そう。お義母さんもマメだよね〜。わたしが料理しないって嫌味 ? どうせ明日で終わるのに。 あ、でも美味しそう ! エビチリだ ! 」 冷凍のパウチ。ふんだんに海老が入ったご飯のお供。取り出した冷蔵庫のそばには送り主の書かれたダンボールが残されていた。 宛名は梨花子夫妻宛、中身は食品の冷凍便。ただしいつもとは義母の字が違うことに梨花子は気付かなかった。湯煎で気長に温める。「俺によこせよ」「半分 ! 」 余りご飯に乗せて丼物で食べ尽くす。「……なんか……」「うん……。不思議な味。冷凍食品ってこんなに美味しいの ? 」「この青い刻み、葱 ? 」「ニラじゃない ? 」「エビチリにニラって入れる ? 普通玉ねぎじゃない ? それにこの刻みキノコ」「うん。多分このキノコが出汁良いんだね。うちの実家はブロッコリーとかでかさ増ししてたけどね」 二人夢中で完食。「お義母さんには連絡しておいて。お高そうな冷食ありがとう、貰えるだけでも助かります〜って」「高いものイコール美味しいじゃねぇだろ。 それより仕事ちゃんと探してんのか ? アッチで稼いでるんだろうけど、これから離婚するのに元嫁が金に困ってるなんて言われたくねぇからな。俺は真っ当に仕事してるんだ。人の目も気になる」「してます〜。そうだ。こないだ行った大衆中華屋さん、あそ
Last Updated : 2025-11-18 Read more