「詳しくお話頂きありがとうございます」「よろしくお願いします」と頭を下げ、岩井は警察署を後にした。 鏡見と柊が顔を見合わせる。「連れ去ったのに殺さなかった ? なら今回の、児童連続殺害事件とは違う案件ですかねぇ ? 」「決め付けは駄目だ。何か……例えば途中で岩井 剣の子供と知り、犯人にとって不都合な何かがあったのかもしれない。 そうでなくても、危険な話ではある。保育園に話を聞きに行こう。引渡しをした保育士は相手を見ているはずだ」「確かに。……岩井さんはなんで、「どんな人でしたか ? 」って保育士さんにしつこく聞かなかったんでしょう ? 」「本人が言う通り、最初に「姉が代わりに迎えに来た」と聞いたから、問いただした時に外見の特徴が本当に姉に似ていると思った……それは確かなんだろう」「俺だったらすげぇ騒ぐけどなぁ」 鏡見から見て、岩井はどこか申し訳なさそうに話していた。本来、ストーカーなどの相談は聞き流されそうになるものだが、子供の連れ去りという危険な行動が伴ってくれば話は別だ。見た目によらず、根は気弱な男なのだろうと見抜く。 何より、あの仲江 海希の元同僚だと言うのが引っかかる。「岩井さんがひとり親だったとして、それを被害者意識を持ってるって人の可能性とか。例えば、ほら。よくお子さんを家に招く隣人のお宅とか」 子供の友達だから来るなとは言えない──などのトラブルはよく耳にする話だが、それは どこの家庭の子供も同じことだ。 鏡見はプリントアウトされた岩井に届いた書き殴りの画像を見る。 郵便では無い。共同の郵便受けなら監視カメラに写っているだろう。「行くぞ」 今回、紫麻は無関係だろう。何せそれが届いた頃、自分は紫麻の八本軒にいたのだから。だが、どこか繋がりがある気がしてならない。 あの日見たチャイナドレスの女。人間が不審だと思うものを見た時、その本能は正しいのだ。 それが今の鏡見が動く原動力になっている。
最終更新日 : 2026-01-02 続きを読む