「ストーカー ? 」「いや、まだ断定は出来ないんだけどね」 突然話し出した岩井のワードに、海希が一番不信げに反応した。「え、何 ? どういう事 ? 女性関係複雑だったりするの ? 」「無いよ ! 本当にそれは ! 」 突然ストーカーが付くというのは、事実七割以上が顔見知りである。特に多い年代が二十代〜三十代。ストーカー法が出来た後、検挙率は徐々に低下傾向にはあるものの、あくまで警察に相談をした中での統計となる。 岩井も現在、警察に相談はしていないという。「心当たりがないから、余計に警察沙汰にしようがなくてさ」 話を聞いていた紫麻が岩井を見つめる。 嘘をついている風でもない。 海希とも、そう深い仲ではないように聞こえる会話。しかし今、悩みを話してしまっているのは追い詰められている証拠でもある。近すぎる周囲には相談できる人間がいないのだろう。「良ければ話をしてみませんか ? わたし達のような部外者の方が、割と安全かとも思いますよ」「……あぁ。確かに……そうですよね ? じゃあ、聞いて貰えますか ? 」 鹿野と海希も何となく岩井の卓に座り、次の言葉を待つ。「どこから話せばいいかな……まずは……俺が海希と同じ職場にいた頃から始まるんですけど」「え !? その期間も ?! 」 海希は予想だにしない岩井の告白に目を丸くした。「まぁ、聞こうじゃねぇ〜かぁ〜」「海希さん、馬鹿鹿からお酒を取り上げてください」「紫麻さん、笑顔で無茶振りやめて……」「これは俺の酒だぁ ! 渡さん〜」「あぁぁっ !! 集中出来ん !! いちいち絡むな !! ……。 ……失礼いたしました。どうぞお話ください」「は、はぁ……」 □□□□ 岩井の話はコンセプトカフェに勤務していた頃に遡る。 その日、勤務を終えた岩井は店長に挨拶を告げるとすぐに帰路へついた。 まず最初に気付いたのはアパートの出入口からほんの僅か離れた電柱の影に立っていた者だった。 黒い帽子にベージュ色のウィンドブレーカー。黒いパンツスタイル。「全身黒とかじゃないんだねぇ」 海希が首を捻る。 如何にも怪しい者となると黒ずくめはよくある話ではある。「足がさ、細いんだよね。痩せ型の男かと思ったんだけど、背は156〜くらい ? どちらとも言えない感じでさ。ほら、ジョギングとか
最終更新日 : 2025-12-18 続きを読む