レンジュは違う。そりゃ性欲とは無縁そうな、柔和でさわやかな顔立ちをしているし、貴族の子息としての教育を受けているから戦場で生まれ育った輩よりずっと物腰は柔らかで、常に道徳的な思考が基礎としてあるので女ウケがいい。そのくせ腕がたつとあれば、端女たちが騒ぐのも無理ないだろう。布や装飾品をふるまったりしているわけでもないのに、朝見送りにくる女の数も相当なものだ。 だが表面上はどうあれ、激烈な熱情を内に持ったやつだ。 無頓着で、あまり物事に執着しないが、一度執心するといつまでもそれについてこだわっているし、独占欲も激しくて、負けず嫌いで粘着気質という、見かけとは全然似つかない気性の持ち主。 そんな健全な若い男が、好きな女と同じ天幕で寝起きをともにし、愛されていないことを毎日毎日見せつけられながら暮らすなんて、地獄以外の何物でもない。しかもレンジユには彼女をどう扱ってもいい権利がある。買われた女に男を拒む権利などないのは常識で、主の意向に反抗するなどもってのほかだ。彼女を無理矢理我が物としようと、誰も何も言わないし、当然のことと思うだろう。レンジュにはその行為をとることが許されている。 だから、まさかレンジュが彼女の意志を尊重するあまり、今だ手も握っていないなど、思いもよらないだろうし、そうと言われても信じる者など皆無に決まっている。 ハリ自身、その状況を自分に置き替えてみて、手を出さずにいられる自信などなく、どこからその忍耐はきているんだと感心せずにいられない。 誰もレンジュが苦しい片恋をしていることを知らないから、レンジュの行動の異常さがそこにあるなど考えもしない。「冬支度用にと予定していた金がなくなったから」なんて白々しい嘘をそのまま鵜呑みにしているのはよっぽどおめでたい馬鹿だけで、男たちの大半は『しょせん人事』と思っているから何も言わないのだ。だから、レンジュの様子が目に見えておかしかろうと、「替わろう」とは提案しない。「休んだ方がいい」とも。 無性に腹立たしかった。仲間に無関心な彼らも、レンジュの役に立てない自分も。「おまえ、今日は残ったらどうだ?」 言ったところで無駄だろう。そう思いながらも、ハリはつとめて明るい声で提案を
Last Updated : 2025-12-18 Read more