結婚の翌日、二人は早くも離婚届受理証明書を手にした。神崎雪乃(かんざき ゆきの)の五年間の献身が得えたものは、高遠怜司(たかとお れいじ) の隣で微笑む別の女の姿だけだった。雪乃がミントアレルギーだと知ると、怜司はミントの香水を全身に浴びた。怜司の友人に階段から突き落とされ、重傷を負い意識不明。目覚めた雪乃に対し、怜司は薄笑いを浮かべ、警察に通報しないのなら願いを一つ叶えてやると言った。地震が起きた時、かつて雪乃を深く愛したはずの男は別の女の手を引いて逃げ出し、雪乃一人が死を待つことになった。こうなっては、彼女は去るしかない。……怜司と雪乃は結婚式の翌日、すべての家族に隠れて離婚届受理証明書を手にした。新婚の夜、怜司はセクシーなバニーガールの格好をした雪乃を冷たく突き放した。「お前は必死になって俺に嫁いだが、一体何の目的がある!」怜司は雪乃を寄せ付けなかった。雪乃がただ穏やかに話し合おうとするだけで、怜司は火がついたように怒り出した。雪乃がミントアレルギーだと知ると、怜司は意地の悪い笑みを浮かべ、家政婦に全ての料理にミントを入れるよう命じた。怜司の寝室、書斎、バスルーム、果ては香水に至るまで、雪乃にとっては命取りとなるミントの香りで満たされた。ある使用人が見かねて、恐る恐る注意した。「旦那様、奥様は重度のミントアレルギーで……毎日抗アレルギー薬を飲み、夜も眠れていないご様子です……」怜司は不機嫌に眉をひそめ、持っていたファイルをその使用人に向かって思い切り投げつけた。「いつからお前が俺に説教するようになった!」使用人の額は切れて血が流れ、翌日には解雇された。それ以来、使用人たちは口を閉ざし、誰も怜司に逆らおうとはしなくなった。雪乃は何度も自分に言い聞かせた。怜司は交通事故で記憶を失い、二人のことをすべて忘れてしまっただけなのだと。怜司がしていることはすべてわざとではないのだと。しかし結婚五年目、九百錠目のアレルギー薬を飲んだ時、山積みになった薬の空シートを見て、雪乃はふとこんな生活に嫌気が差した。朝の三時に起きて一緒に日の出を見つめ、二人でペアリングを作り、海外の新聞のトップを一緒に飾った。そんな怜司はもうあの交通事故で死んでしまったのだ。怜司が雪乃を不快がらせるためにミントの香水を手につけ
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