All Chapters of 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが: Chapter 81 - Chapter 90

98 Chapters

痛み

 楽しい宴会から一変して村は悲惨な状況になった。 セロラはコラーの横に座って泣いている。「ごめん、コラー……」 意識を失ったままのコラーから返事は無い。 月明かりが差し込む中。コラーは目が覚めた。 全身がビリビリと痛み、うっと声を上げる。 足元に重みを感じて見てみると、セロラがもたれ掛かって眠っていた。「セロラ……」 一言そう呟き、セロラが無事だった事に安堵する。 その時、セロラの猫耳がピクリと動き、顔を上げてコラーを見た。「コラー! 起きたか!?」「あぁ……」 セロラは思わずコラーに抱きつこうとするが、ぐるぐる巻かれた赤く血の滲んだ包帯を見て自重する。「コラー。何で私を助けた?」「何でって……。気付いたらな、体が勝手にだよ」「そう……」 セロラは何と言えば良いのか、ずっと考えた。 そして、出した答えは。「コラー。ごめんね。助けてくれてありがとう」「良いんだ。でも、もう無茶はしてくれるなよ?」「うん……」 いつになく聞き分けの良いセロラを見てコラーはフッと笑う。 朝になり、集会所で目覚めるマルクエンとラミッタ。 ラミッタは徹夜で手当をしていたので、まだ眠気が抜けきらないでいた。「おはよう。お疲れラミッタ」「えぇ、大丈夫よ」 ふわーっとあくびを一つして集会場を見渡す。 犠牲者こそ居なかったが、怪我人は多数いる。 その中でも、一番重症のコラーの様子を見に行く。「あら、仲良さそうに寝ているわね」 コラーと寄り添って寝るセロラを見て二人は安堵した。 他の怪我人を看ている間に、目覚めるコラーとセロラ。「おはよう、気分はどうかしら?」「あっ、おはようございます!! 申し訳ありません。自分が不甲斐ないばかりに……」「いえ、誰かを守る姿勢は兵士として立派でした」 マルクエンに言われると、思わずコラーは照れた。「とりあえず、痛み止めを飲んで。そして薬塗って包帯の交換よ」 言われた通りにするコラー。傷口に包帯が張り付いていて、剥がす時が物凄く痛い。「コラー、大丈夫か?」 セロラが手を握っていてくれているので、恥ずかしい所を見せるまいと耐える。「さてと、どうしたものかしらね」 集会所の外、村の中心に置かれた箱を見てラミッタは言う。「箱を壊しても、これじゃいたちごっこだな」 マルクエンも思わずはぁっとた
Read more

VSクラム

「マルクエン様!! 私も戦う!!」 セロラが飛び出してクラムに斬りかかるが、簡単にいなされ蹴り飛ばされた。「雑魚は引っ込んでな!!」「私は雑魚じゃない!!」「セロラさん!! 後ろに居て下さい!!」 マルクエンはクラムと斬り合いながら言う。「でも!!」「危ないから!!」 マルクエンに強く言われ、悔しさを感じながらも大人しく従うセロラ。 地上ではマルクエンとクラムが剣をぶつけ合う。「ほう、ちょっとは楽しめそうなぐらいにはなったか」 クラムはニヤリと笑ってマルクエンに言った。 目にも止まらぬ速さで攻防を繰り広げていたマルクエンだったが、咄嗟に身を引く。 次の瞬間、クラムに向かって特大の火の玉が降り注いだ。 クラムは躱そうとするが、炎の直撃を食らい、傷を負った。「小賢しい、斬り合いの邪魔をするな!!!」 怒りを剥き出しにして上空のラミッタに怒鳴りつける。「卑怯とは言わないでしょうね? これは戦いよ、何でもアリでしょ」「ッチ、ミネス!! そいつの相手をちゃんとしておけ!!」「あー、ごめんごめん」 そう言ってミネスはラミッタに向けて魔法の短剣を投げつけた。 十数本の短剣がラミッタを追尾してまわる。 ラミッタは高速で飛び回り、地面に急降下した。 激突する寸前の所で水平に飛び、曲がり切れなかった短剣は地面に突き刺さる。「マーダージャグリング!!!」 次にミネスは雷を地上に何発も落とした。「ぐっ!!」 マルクエンは直撃は避けたが、地面から伝う電流で感電する。 対策を施している装備でこれ程までなら、直撃したら命は無いなと妙に冷静に考えていた。「ミネス!! そっちの女の相手をしろ!!」「えー、ボク命令されるの嫌いなんですけどー」 そんな事を言うミネスを無視し、ラミッタはマルクエンと対峙しているクラムに斬りかかる。 各個撃破をしようとするマルクエンとラミッタだったが、それを不快そうにミネスは見た。「命令も嫌だけど、無視はもっとムカつくかもー」 ミネスは氷の剣をマルクエン達に向かって飛ばす。 ラミッタは魔法反射で弾き、マルクエンは剣で粉々に砕いた。 その一瞬の隙を逃さず、クラムがマルクエンを袈裟斬りに斬ろうとする。 だが、それは罠だった。マルクエンは振り下ろされたそれを剣で受け止め、ラミッタの剣
Read more

恋の予感

 コラーは戦いの時とぜんぜん違う顔をするマルクエンを見て、勇者のあるべき姿はこうなのかと思う。「ラミッタさまー。私ね!! お空飛んでみたい!!」「あら、いいわよ」 子供の頼みを快諾し、ラミッタは抱きかかえて空を飛んだ。「うわー!! すごーい!!!」「俺も飛びたい!!」「僕も!!」 すっかり子供たちの人気ものになるラミッタ。「マルクエン様、俺、本当は勇者になりたかったんです」 コラーは自分でもつい言ってしまった言葉に驚く。「あっ、そのっ、こんなに弱い俺じゃなれないって知っていますけどね!!」「戦いの強さだけが、人の強さではありませんよ」 真面目な顔をしてマルクエンは言った。「私は、元々騎士でしたが。国を守るために戦っていました」「守るため……、ですか?」「そう。コラーさんは村を、皆を守りたいと心から思っている。それはとても立派なことです」「えっと、その、ハハハ。何だか恥ずかしいですね……」 下を向いてコラーは照れ顔を隠す。「マルクエン様は、今は何を守るために戦っているのですか?」 そう問われ、考える。真っ先に思い付いてしまったのはラミッタの顔だったが。「えっと、今も国を守るため、元の世界へ帰るために戦っています」 ちょっとだけ嘘をついた。「コラー、ここに居たのか!!」 セロラがやって来てコラーの隣に座る。「肉焼いてきた、食え!! マルクエン様も!!」「お前、まさか、また勝手に狩りを!?」「気にするな!」「気にしろ!!」 マルクエンは二人の会話を聞いて笑っていた。 「なるほど、あえて手負いの魔物を残す。か」 王都ではコニヤン軍の参謀長であるシガレーは報告を受けてそう呟く。「箱の破壊にばかりを考え、
Read more

マッサ

 マルクエン達が聖域を訪れる数日前の事だ。「私の名はスフィン・スク。ルーサの将軍だ」「将軍様か、そりゃあいい!」 スフィンを助け、食事を食べさせている冒険者の男、マッサは膝を叩いて爆笑していた。「貴様、信じていないな?」「いや、信じるよ。信じるとも」 言葉ではそう言っていたが、態度からはそんな気が微塵も感じられない。「私は確かに戦場に居た。そこで落馬し、意識を失って、気が付いたらここだ」「なるほどな、不思議な話もあるもんだなー」 豆のスープを食べながらマッサは適当に頷いていた。「やはり、貴様信じていないだろう」「まず、そのルーサってのは国なのかい?」「あぁ、そうだ」「悪いが、聞いたことないんだよねー」 聞いたことが無いと言われ、スフィンは驚く。 だが、目の前の男が残党狩りで嘘をついていないとも限らない。「本当に知らんのか?」「全くね、ここはコニヤンって国だけど、周りの国にも無いしなー」「その国こそ聞いたことが無い。疑問なのだが、聞いたこと無い国同士出身の私達が何故同じ言葉を話せるのだ?」「それは俺も分からないねー」 何とも要領を得ない男の話に、スフィンは少しイライラとしていた。 そんな時、スフィンは物音と、それに混じった殺気を感じ取る。「おや、お客さんみたいだね」「剣を、貸してくれるか?」「あぁ、予備が一本あるよ」 マッサが剣を差し出し、スフィンはそれを受け取った。 野生生物を模した魔物が二人に飛びかかる。 スフィンは蟻型の魔物を剣で斬り捨て、光の矢を多数呼び出し、射出した。 串刺しになる魔物達。マッサは熊型の魔物の腕を切り落としながらそれを見る。「はぇー、やっぱやるねぇ!」 スフィンは近付く魔物を剣で切り捨て、中距離以上の敵は魔法で殲滅した。 マッサも次々に魔
Read more

VSスフィン

「いやはや、何とも信じられん話だ」 賢者ミハルは目を閉じてうーんと唸る。「だが、この国の伝承にこんな物がある。『魔王現れる時、異なる世界から勇敢なる戦士が現れるだろう。その者は魔王を討ち滅ぼし、去っていく』というものだ」「あの話か」 マッサもその話は知っているらしい。「という事は、この国には魔王が?」「そう、一年前に現れましたぞ」 スフィンはミハルの回答を聞いて驚く。「つまりは、スフィンさんは異世界の戦士ってことか?」「可能性はあるだろう」 勝手に話が進んでいくが、スフィンは待って欲しかった。「いや、そんな事を言われても困る。私は国に帰って戦わなくてはならない!」「伝承通りならば、魔王を倒せば元の世界へと帰ることができるかもしれませんな」 ミハルの言葉にスフィンは目を見開いて立ち上がる。「そうですか、それでは早速……」「ちょっ、おいおい待ってくれよスフィンさん。魔王は今どこに居るかも分からないし、そもそも超つえーんだ!」 マッサが少し焦って止めようとするも、スフィンは扉を開けて出ていこうとしていた。「それでも、ここでじっとしている訳にはいかない」 扉を開け、外を見ると、一瞬思考が停止した。 目の前に居るのは間違いない。何度も戦場で見た。「マルクエン・クライス!?」「なっ、スフィン将軍!?」 その隣に居るのは。「スフィン……将軍……!?」 自ら叩き上げた兵士、ラミッタ・ピラだ。 だが、次の瞬間。スフィンはマルクエンに向かって電撃を放った。「おわっ!!」 マルクエンはそれを躱して距離を取る。「貴様、殺す!!」 何だ何だとマッサとミハルも外へ出てきた。「スフィンさんどうした!?」 マッサの言葉も届かず、スフィンは光で作った剣を持ち、マルクエンに突進する。「死ね!! 侵略者が!!!」 マルクエンは剣を構えて青いオーラを身に纏う。 剣と剣がぶつかり合うが、マルクエンは少しもよろめかない。 体重をかけてスフィンを弾き飛ばし、話をしようとするマルクエン。「スフィン将軍、聞いてくれ!! 私はあなたと争うつもりはない!!」「スフィン将軍!! 落ち着いて下さい!!」 ラミッタも声を掛けるが、更に怒りを加速させた。「ラミッタ!! 何をしている!! 貴様も戦え!!」 マッサが飛び出してスフィンを捕ま
Read more

あびゃー!!!

「えっ、本当に勇者様?」「俺が嘘を言う男に見える?」 マッサがニヤリと言うと、ネーアは慌てふためいた。「えっ、えっ、あ、あの、ようこそ当ホテルにお越し下さいました!! えーっとどうしよ、サイン色紙? じゃなかった、お部屋にご案内します!!」「それより飯を用意してちょうだいな、ねーちゃん」「わ、わかったわ!! 大至急用意させますので!!! マッサ、勇者様のお部屋どこか案内しといて!!!」「かしこまり! さぁさぁ勇者様こちらへどうぞ。スフィンさんはそこの椅子に座って待っていてちょうだいな」 二階の一室に案内されるマルクエンとラミッタ。「これは、どういう事なのかしらね」「元の世界で命を失った者はこの世界へ来るのだろうか……?」「でも、それだったらもっと人が居てもいいはずよ」「うーむ……」 悩む二人だったが、こうしていても埒が明かないだろう。 荷物を下ろしたマルクエンが、剣まで置いていこうとしているのを見てラミッタが咎める。「宿敵、スフィン将軍がまた襲いかかってくるかもしれないのに、武器を置いていくの?」「なんだ、心配してくれるのか?」「なっ!? べ、別に!!」 ハハハと笑った後にマルクエンは言う。「スフィン将軍なら、何となくだが心配は要らないと思う」「何でそう言い切れるのよ」「あの方は気高い軍人だ。卑怯な手は使わまい」 その頃、ロビーに戻ったマッサを見てスフィンは立ち上がる。「マッサ……だったな」「お、名前を覚えていてくれたの。嬉しいねぇー」「私を一発殴れ」「は?」 思いもしない言葉を聞いて流石のマッサも困惑した。「えーっと、そういう趣味が?」「ち、違う!! 貴様は民間人であり、それ以前に恩人でもある。なのに私は貴様に攻撃をしてしまった」「あぁ、あの電気は効いたぜ!」 興奮するスフィンを止めるために、拘束魔法を使おうとした時の事を言っているのだなとマッサは思い出す。「どこからでも良い、そうして貰わないと私の気が済まない」 そう言ってスフィンは目を瞑る。「そっか、俺は気にしていないんだけどなー」「私が気にしているんだ」「……、それじゃ遠慮なく」 マッサはスフィンに近付き、手を前に出す。 その手はガッチリとスフィンの胸を鷲掴みにしていた。「ひゃっ」 殴られると思っていたのに、胸を揉まれ、
Read more

気まずい食事会

 スフィンははっきりとマルクエンを敵だと言い切った。 ちょうどそこへ大量の料理が次々に運び込まれる。 気まずい食事会に誰も料理を取ろうとしない。「まぁまぁ、スフィンさんの事情は分かった! ともかく今は食べましょうや」 マッサはそんな事を言い、料理を取り分けスフィンの前へ置く。「騎士として……」 マルクエンが話し始めたので、皆がそちらを向いた。「騎士として、国のために戦うことが正しい事だと私は思っていました」 そこまで言うと、自信の無い表情を作り、続けて言う。「ですが、ルーサにとって、あの戦争は侵略だと思われても仕方が無いと、今は思います」 皆は黙ってマルクエンの話を聴いていた。「戦場で好敵手だと思っていたラミッタとも、こうして一緒に旅をする仲になることができ、私は正しさが何か。正直言って分からなくなってしまいました」「貴様、何が言いたいんだ?」 スフィンに尋ねられ、答える。「私は、元の世界へ帰り、戦争を終わらせたい。皆が分かり合える世界を作りたい」「そんな絵空事を」 ふんっとスフィンは吐き捨てるように言った。「それに、私はこの世界も好きになりました。だから、魔王からこの世界も救いたい」「私には関係無い話だ」「いやいや、スフィンさんも、別世界の勇者ってことなら、関係あるかもしれないよ?」 マッサが宥めると、ラミッタも話し始めた。「その方の言う通りです。もしも、我々がこの世界の伝承通りの存在だとしたら、元の世界へ帰る唯一の方法かもしれません」 ラミッタにも言われ、スフィンはため息を付く。「とりあえず、今は飯にしましょうや! 料理が冷めちまう」「……。そうだな」 スフィンは納得したのかしていないのか、定かではないが、料理を口に運び始めた。 食堂にはカチャカチャと食器を動かす音だけが響いている。 しばらくの沈黙を破ったのは、以外にもスフィンだった。「分からないことだらけだが、ラミッタ。いくつか聞きたい事がある」「はい、なんでしょうか?」「何故この世界の住人と言葉が通じ合うんだ?」 質問をされたラミッタは困った顔をしてしまう。「それは……。私にも分かりません。文字は違うようですが、意味が理解できるのです」「言葉とは文化によって生まれるものだろう? そこが謎なのだ」 スフィンの言うことは|尤《もっと
Read more

休戦協定

 空を飛ぶラミッタは着地し、話し続ける。「そして、勇者になった我々は魔物が現れる箱を壊すために各地を巡っています」「魔物が現れる箱?」 スフィンが聞き返すと、ラミッタは頷く。「少し、長い話になるかもしれませんが、こちらの世界に来て分かっていることをお話します」 ラミッタは、こちらの世界に来て起きた魔人との戦いを簡潔に説明する。「わかった。信じられない話だが」「異世界の勇者様もそんな事情があったなんてなー」 マッサも興味深げに隣で聞いていた。「それで、私はこの聖地の箱を壊しに来た所、スフィン将軍に出会ったのです」「そうか……」 スフィンは必死に状況を飲み込もうとしている。「ラミッタ。まず私はどうすべきだろうか」「やはり、この国に報告をするのが得策かと。もし、勇者として認められれば、行動もしやすいでしょうし……」「わかった。国へ戻るまで、イーヌの騎士。貴様とは休戦だ」「はい、わかりました」 マルクエンはそう返事をし、その場は丸く収まった。「さて、では早速その国と話がしたいのだが」「この街にも冒険者ギルドがあるんだ! そこで連絡石を使って報告してもらうよ」 マッサが言うと、スフィンの頭には疑問符が浮かぶ。「連絡石とは何だ?」「簡単に言うと、触ると遠くにあるもう片割れの石が光るっていう貴重で不思議な石でな。それで信号を送るんだ」「そんな不思議なものが……」「と言っても、距離はそこまで遠く出来ないから、王都に信号送るには何個も中継地点で繋いでもらう感じなんだけどねー」 マッサが説明すると、なるほどなとスフィンは納得した。「この街の箱について知りたいし、まずは冒険者ギルドかしらね」 話が纏まり、マルクエンとラミッタ。スフィンにマッサという珍妙なパーティは冒険者ギルドへ向かった。「ここが冒険者ギルドだ!」 建物は他の街よりもこじんまりとしているが、小さな街なので仕方がないのかとマルクエンは思う。「はーい、三名様ごあんなーい」 勢い良く扉を開けてマッサは中へと入る。「あら、マスター。お帰りが遅いので魔物にやられたかと思いました」「いやーん。冷たいこと言わないでー」 ギルドスタッフの女にマスターと言われるマッサを見て、マルクエンはまさかと思う。「その、マスターって事は?」「あぁ、俺はこの街、チターで冒険
Read more

聖域での出来事

 階段を登った先にあるのは、正方形の石が敷かれ、大きく開けた場所だ。 その中心には大きな墓石と剣を掲げる男の像があった。その周りに例の箱が設置されている。「アレが勇者様のお墓と銅像だ!」 マッサがそう解説を入れてくれたが、大体は見れば分かってしまった。「ほう、それでアレが魔物が出てくる箱とやらか」「そうそう、ご明察スフィンさん」 四人は箱まで歩み寄り、見上げる。「この箱がどうやっても破壊できないのです」 ラミッタは剣で斬りつけるが、カァンと弾かれた。「なるほどな」 そう言ってスフィンが箱に手を触れる。 その瞬間だった。 スフィンが触れた部分を中心に、ガラス細工を壊すかのようにヒビが入り、箱が割れ、音を立てて崩れだす。「なっ!?」 驚くマルクエン。ラミッタも信じられないと口をポカーンと開けていた。「なっ、ちょっ、えぇ!? 何したんだスフィンさん!? 何かの魔法か!?」 マッサも目を丸くして驚く。「い、いや、私は何もしていないぞ!?」 スフィン自身も何をしたのか分からないでいた。 周りに居た箱の監視をしている衛兵もざわつき始める。 うーんと悩んだ後に、マッサは思いつき、スフィンに伝えた。「スフィンさん。他の箱も触ってみてくれないか?」「あ、あぁ」 何が起きているのか分からないスフィンであったが、他の箱に移動してまた手を触れてみる。 すると、先ほどと同じ現象が起きた。ヒビが入り、ガラガラと箱が崩れていく。「何だこりゃ!? 一体何が起きているんだ!?」 崩れた破片は氷が溶けるように、ゆっくりと消えていった。 残った六つある箱、全てに触れてみたが、例外なく砕ける。「アレだけ何をしても壊れなかった箱が、スフィン将軍が触れただけで壊れるなんて……」 ラミッタも信じられなかったが、目の前で起こってしまった事だ。信じるほかあるまい。「まさか、異世界から来た勇者だからってか!?」 マッサは興奮して言うが、スフィンは戸惑っている。「だが、ラミッタやイーヌの騎士は破壊できないのだろう?」「えぇ、私が身体強化を使い押してもビクともしませんでした」「スフィン将軍だけが持つ能力って事も考えられますが」 そう言った後。ラミッタは腕を組み、片目を閉じて考えた。「まっ、ともかくだ。これでこの街の脅威は去ったな!!」 マッサが笑
Read more

恋バナ!

「それじゃカンパーイ!」 マッサが酒の入ったグラスを上に掲げると、ギルドに居た冒険者からも乾杯の音頭が返ってきた。「まぁまぁ、スフィンさんもそんな難しい顔しないで。美人が台無しだぜ?」「ふん、うるさい」 そっぽを向いてスフィンはワインを口にする。「……中々、美味いワインだな」 素直な感想を言ったスフィン。気を良くしたマッサは更に笑顔になった。「そうでしょそうでしょ? 料理も沢山あるからドンドンどーぞ!」 冒険者向けの味の濃い料理にマルクエン以外の三人は酒が進む。 やがて、ラミッタは頬を紅潮させ、スフィンも長い金髪を少し乱して酔っていた。「そうだ! いい感じに酔ってきましたし、王様ゲームでもやりませんか?」 マッサがニヤリと笑って言うと、スフィンは顔をガバっと上げる。「王国? イーヌ王国は潰す!!!」「いやいや、王国じゃなくて、王様」「王の首は取る!!」 こりゃダメそうだなと、マッサは笑っていたが、マルクエンは複雑な気持ちだ。「それじゃアレですか? 恋バナでもします?」 マッサがニヤニヤと笑いながら口にする。マルクエンは牛乳を吹きそうになり、ラミッタは顔を更に赤くした。「なーにが恋バナだー? 私は軍人になった時から女としての幸せは捨てた」 スフィンがフラフラになりながらも言うと、ラミッタも頷いた。「それに……。私の手はもう血に染まっている。こんな手で赤子を抱くことは出来ない」「そうっすか? 俺、そういうの気にしないっすけどね」 そう言われ、スフィンはマッサをジッと見つめる。「何すか? 何すか? もしかして脈あり? いやー、モテる男はつら」「いや、仮に軍人でなくともお前は無いな」「あびゃー!!!」 マッサは撃沈し、ショックを受けて大声を出した。 そんなスフィンの隣で、ラミッタは何だかシュンとしている。「どうしたラミッタ?」「な、何でもないわよ!!」 察したマッサが助け舟を出してやることにした。「マルクエン様は、好きになった相手が軍人だったら気にします?」「えっ、わ、私ですか? 私も気にしないですけど……」「ふ、ふーん」 ラミッタはそっぽを向いてマルクエンの言葉を聞く。「ふにゃー、もう飲めない……」 ラミッタは酔ってふにゃふにゃになり、その隣でスフィンはグビグビワインを飲んでいた。「何だ、だらしな
Read more
PREV
1
...
5678910
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status