Tous les chapitres de : Chapitre 61 - Chapitre 70

70

客引き

「やはり、空を飛ぶのは疲れるのか?」「そこそこね、常に早歩きしているぐらいの感覚よ」「そんなもんなのか」 そんな会話をしていると、マルクエンが声を掛けられた。「そこのお兄さん!! 美味しいパスタとデザートのお店はいかがですか?」 声の主は猫耳の小柄な亜人だ。「えっ、私ですか?」「そうです、お兄さんと彼女さんですにゃ!!」 ラミッタは自分を彼女扱いされたことに赤面し、プンプンと怒り出した。「私がこんな奴の彼女!? ないない、ありえないから」「あら、そうだったのですか? これは失礼。仲が良さそうなのでてっきり」「はぁー? どこをどう見たら仲良く見えるのよ!!」「まぁまぁ、ウチのお店どうですか? 美味しいパスタとデザートのお店です!」 パスタと言われマルクエンは、ふむと考える。「良いんじゃないのか? ちょうどパスタにしようかと話していたんです」「それは奇遇! なんとも奇遇!! 是非ぜひ当店へ!」 彼女と勘違いされたラミッタはむくれて渋々だったが、二人は店に入ることにした。 ファンシーでにぎやかな店内を見て、マルクエンは防具をギルドに預けておいて良かったなと思う。「二名様ご案内ですにゃー!!」 席に通され、メニューを見る。様々な種類のパスタがあり、マルクエンは悩む。「うーん。どれにしようか」「早く決めなさいよ」「ラミッタはもう決まっているのか?」「私はイカスミパスタがあるから、これにするわ」 イカスミと聞いてマルクエンは驚く。「イカ? イカって触手がもじゃもじゃのあの?」「それしかないでしょう」 ラミッタは呆れ顔で返す。「確かイカのスミってインクに使うんじゃ無かったか? 食べられるのか!?」「食べられるわよ……」 そうなのかと不思議そうな顔をするマルクエン。「食べてみたら?」「い、いや、私はカニのクリームパスタにする。大盛りも出来るみたいだな」「そう。デザートはどうするの?」 そう言えばデザートもオススメだったなと思い。メニュー裏面のデザートを見る。 イチオシは写し絵がでかでかと載っている『いちごパフェ』だ。「私はこのパフェを頼む」「私もデザートはそれでいいわ」 早速、マルクエンは近くに居た店員に注文をし、一息つく。「お客様、失礼します」 ウェイトレスが紅茶を持ってきたので、マルクエンはキョト
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しんみりと

 マルクエンは夢中でパクパクとパフェを食べ進めていた。「私の国でも氷魔法を使用したアイスクリームはあったが、これはまた別格に美味いな」「ルーサのアイスはもっと美味しいわよ」 ラミッタが言うと、マルクエンは興味津々だ。「ルーサのアイスか。食べてみたいものだな」「無理に決まっているじゃない、戦争中よ?」 この二人はイーヌ王国とルーサが終戦したことを知らない。「あぁ、そうかもしれんが……」 攻撃を仕掛けたのはイーヌ王国だ。マルクエンは思わず俯く。「……まぁ、今の私達には関係ないことよ」「ラミッタ。私達が死んだ後、戦争はどうなったと思う?」「ちょっ、誰かに聞かれたらどうすんのよ!!」 今更になってラミッタは会話を誰かに聞かれていないかと焦るが、賑やかな店内では誰もこの会話を聞いていないみたいだ。「あっ、あぁ、すまない」「戦争なんていつかは終わるわ」「そうだな。そうだと……良いな」 あからさまにテンションが下がるマルクエン。「もう、せっかく美味しく食べていたのに。台無しよ」「いや、すまん……」「……、私も話題にしたから悪かったわ」 気まずい空気が流れ、黙々とパフェを食べる二人。「お客さーん。お味の方はいかがですかにゃ? って、何か元気なさそうだにゃ! 美味しくなかったのかにゃ!?」 やって来た猫のウェイトレスが、しんみりとする二人を見て慌てていた。「いえ、料理は美味しかったです。ちょっと昔のいざこざを思い出してしまいまして……」「ありゃ、そうだったのですかにゃ。まぁ、美味しいパフェ食べて忘れてほしいですにゃ」「えぇ、そうですね」 マルクエンは笑ってそう返す。ウェイトレスも安心したようで別の客の所へと向かっていった。 食べ終えた二人は席で会計をして店を後にする。「またのお越しをお待ちしていますにゃー」 またも、目的もなく街を歩く二人。少し気まずさがあるが、お互い気持ちを切り替えようとしている。 そんな時、マルクエンはある提案をした。「そうだラミッタ! 服でも買わないか?」 突拍子もない言葉にラミッタは一瞬理解が追いつかない。「は? 服?」 聞き返すと、マルクエンは「あぁ」と言った。「ほら、前に買った青いワンピースは火事で燃えてしまっただろ? また、改まった場で着る服があると良いんじゃないかって…
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乾杯しておこう

「まだホテルに戻るには早いか?」「そうかしら? 私は帰って休みたいけど」 ラミッタは腕を上にあげて背伸びをし、あくびが出ていた。「そうか? それじゃ戻って休むか」 二人はホテルに戻ろうと、もと来た道を歩く。 ロビーに入ると、剣士のゴーダが一人椅子に座っていた。 二人に気が付くと、立ち上がって急ぎ足でやって来る。「マルクエンさん、ラミッタさん!! ご無事でしたか!?」「えっ?」 キョトンとするマルクエン。「外で魔人の襲撃があったと聞き、探していました」「あっ、あぁ!! それはご心配おかけしました。ですが、この通り無事です」「そうですか」 ゴーダはふぅっとため息を吐く。「私達、魔人に襲われすぎて慣れちゃったけど、普通に考えたら大事よね」「確かにそうだな……」「その通りです」 もっと何か言いたげなゴーダだったが、短い言葉で済ます。「すみません。本当はマスカルさん達に伝えた方が良かったのでしょうが、居場所が分からなくて……」「それはこちらの落ち度です。私とアレラはギルドに、マスカル様は城に居ました」「あら、意外と近くに居たのですね」 ラミッタが言うとゴーダは頷く。「はい。受付のスタッフから話を聞き、すぐに飛び出たのですが、お二人が居なかったものでして……」「それはもう……。申し訳ない。昼を食べに行ってしまいました」 マルクエンはバツが悪そうに頭をかいた。「魔人と戦った後に……。流石というか、なんと言いますか」 ゴーダは少し笑っていた。彼が笑う所を見るのは滅多にない。「ともかく、魔人が近くまで来ているのでしたら、お二人だけで外を歩かせるわけにはいきません。アムールトの中で待機して頂きます」「えぇ、そうですね」 マルクエンは頷く。「私も疲れたので、大人しく休んでいますよ」 ラミッタも眠たげにしながら同意した。「それでは、私はギルドでまだ仕事がありますので」 ゴーダはホテルを出ていく。「そう言えば、このホテル。バーもあったわよね?」「そうか?」「私は寝酒でもするわ。付き合いなさい宿敵」「そうは言っても、私は酒を飲めんぞ」 マルクエンが言うと、ラミッタは笑う。「そんなの知ってるわよ。私はお酒。おこちゃまはホットミルクよ」「ホットミルクか……。確かにアリだな!」 皮肉が効いていなくてラミ
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国王陛下!

「それで、今度はお二人にお伺いしたい。先程の魔人の襲撃についてです」 マスカルが言い、マルクエンが答えた。「試練の塔でも出くわした、奇術師の格好をした女の魔人です。『ミネス』と名乗っています」「マルクエンさんとラミッタさんとは因縁が深いみたいですね」「えぇ、こちらの世界に来てからずっと狙われていますね」 それを聞いて、マスカルは、ふーむと考える。「その魔人の目的は、何なのでしょうね」「そうですね、奴は私達に『魔王軍の仲間になれ』と迫ってきていますね」「魔王軍の仲間にですか……」 マスカルは腕を組んで更に考え込んだ。「マスカル様、魔人の考えなど理解が出来ませんよー」 アレラに言われ、「それもそうだが」とマスカルは言う。「まぁ、アレラの言う通りですね。ともかく、お二人は明日、戦いに備えてください」「わかりました」 マルクエンとラミッタは返事をし、その日は夕食を摂り、眠った。 翌日、ホテルのロビーで落ち合うマスカル達とマルクエン達。「それでは、城へと向かいましょう」 礼服でなく、戦う用の武器防具を身につけて、マルクエンとラミッタは城へ行く。 一番大きな道路を歩き、城までは一本道だ。 城門へ着く。衛兵はマスカルの顔を見ると、敬礼をし、中に通される。 元の世界でも、よく城には通っていたマルクエンはさほど緊張をしなかったが、ラミッタは借りてきた猫のようだ。「緊張しているのか? ラミッタ」「はぁ!? 別に?」 マルクエンに悪態をつく以外はだが。 このアムールトの城は、イーヌ王国の城に負けず劣らず大きい。 階段を登り、大きな扉の前までやって来た。「それでは、これより国王陛下の御前です」 マスカルに言われて、マルクエンは大きく頷く。 近衛兵が扉を開けると、長く赤い絨毯の敷かれた立派な玉座が広がる。 その先には椅子に座る人物が居た。おそらく国王陛下だろう。 マスカルが先頭だって歩き、その後ろを皆が付いていく。 部屋の半ばより少し先まで歩くと、勇者パーティーが跪き、マルクエンとラミッタも習って跪く。「国王陛下、異世界からの勇者をお連れしました」「うむ」 国王は白髪と立派なヒゲを生やした人物だった。「異世界からの勇者よ、よくおいでなさった。私は『コニヤン』の王、メイクーン。あなた方の名を教えて欲しい」「
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ヴィシソワ

「その通りでございます」 宙を飛ぶ男はニヤリと笑って二人に言った。「どうして魔人がここに!?」 色々な思考がマルクエンの頭を飛び交う。ラミッタも同じく考えていた。「私から説明させて頂きます」 そこでマスカルが声を上げる。「この魔人『ヴィシソワ』は我々と同盟を結んでおります」「ど、同盟ですか!?」 頭が回りきらないマルクエンは驚くことしか出来なかった。「えぇ、詳しい話をすると長くなるので割愛させて頂きますが、我々の敵ではありません」 ラミッタは訝しげな目でマスカルを、国王を見る。「どうしてそう言い切れるのですか?」「私は、そこにいらっしゃる王女様、ミヌエット様に忠誠を誓っているのですよ」「王女様!?」 ヴィシソワの目線の先、国王の隣に居る高貴な女性をラミッタは見た。「異世界からの勇者様、はじめまして。私はこの国の王女、ミヌエットと申します」「あぁ、お美しいお声だ」 ラミッタは大体の事を察したが、マルクエンは何が何だか分からずにいる。「初めてお会いした時から感じました。これは運命だと」「宿敵、つまりあの魔人は王女様に惚れてんのよ」「なっ!?」 ラミッタの言葉に驚くマルクエン。「その通りでございます」 魔人はまた同じセリフを吐いて、フフッと笑う。「し、しかし、そんな、信用できるのですか!? 魔人ですよ!?」「人に仇なす人間もいるのです。人の味方の魔人が居ても良いではないですか」「ともかく。マルクエンさん、我々はヴィシソワを信用しています」 マスカルにも言われ、黙るマルクエン。「そして、今回の試験では、ヴィシソワと戦って頂きます」「なるほど、魔人と戦うなら、それこそ本物の魔人と戦って実力を見せた方が早いって訳ですか」 ラミッタが言いながらヴィシソワを見ると、マスカルが答える。「えぇ、仰るとおりです」「それでは始めましょうか」 ヴィシソワがそう言うと、マスカル達も観客席へと退避する。 国王と王女、マスカル達は分厚い魔法の防御壁の後ろで座っていた。「いつでもどうぞ」 宙を飛びながらヴィシソワはマルクエンとラミッタに言い放つ。「そうですか、それでは」 マルクエンは剣を強く握り、引き抜いた。それを見てラミッタも抜剣する。「私が行くわ!!」 ラミッタが空を飛ぶと、国王と王女は目を丸くした。「
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敗北

 マルクエンはラミッタの上体を抱えながらヴィシソワを見つめている。 何も言い返せなかった。完全に自分たちの負けだ。「うぅ……」「ラ、ラミッタ!!」 起き上がろうとするラミッタをマルクエンは支えながら立ち上がらせる。「私達の負け、完敗ね……」 負けず嫌いのラミッタが、あっさりと負けを認めていた。「残念でしたね、ラミッタさん。マルクエンさん」 マスカルが闘技場の壁を飛び降りて、二人の元へとやって来る。「……。すみません、醜態を晒しました」 マルクエンは自分自身に情けなさを感じながら唇を噛みしめた。「私は何度でも挑戦を受けましょう。実戦だったらもうお二人の命はありませんでしたがね」 皮肉交じりに言われるが、その言葉をただ身に受けるしかできない。「マルクエン殿、ラミッタ殿、残念ですが、これでは勇者として認めるわけにはいきません」 国王からもそう宣告され、俯く二人。「今日の所はここで終いにしましょう。ラミッタさんも体を診てもらった方が良い」 マルクエンとラミッタは、マスカルの後を着いて闘技場からとぼとぼと出ていくが、その背中に国王が声をかける。「ここでの事はくれぐれも他言無用で、頼みましたぞ」 マルクエン達が去った後、国王はヴィシソワに話しかけた。「ヴィシソワよ、異世界の勇者の実力はどうだった?」「えぇ、彼等は確かに実力者です。ですが、まだまだですね」 そこで王女が話に加わる。「ヴィシソワが強すぎるのよ。だって、原始の魔人の一人ですもの」「私にすら手こずるようでは、原始の魔人に勝てるわけがありませんので」「それと、原始の魔人とお呼びになるのはおやめ下さいミヌエット様。自分の年を感じたくないので……」 ヴィシソワがそう言うと、ミヌエットはフフッと笑った。 城の一室、ラミッタはベッドに横になり、アレラが光る手をかざしていた。「大丈夫、健康そのものですよー」 ニッコリとアレラは笑ったが、ラミッタは浮かない顔をしている。 何かを察したマスカルは仲間達に言う。「少しの間、我々も用事があるので失礼します」 部屋に二人残されたマルクエンとラミッタ。 会話は無い。お互い暗い顔をして誰かの通夜のようだ。「ねぇ、宿敵……」 数分の沈黙の後、ラミッタが口を開く。「なんだ、ラミッタ」「何か、さっきさ、私達ら
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敗因を考えよう

 ラミッタはベッドに腰掛け、マルクエンはソファに座り、互いに向かい合う。 今回の敗因についてマルクエンがうーんと唸って考えた。「そうだな、やはり私が出した光の刃が邪魔をしたかもしれないな」「私も、あんな盾に捕まると思わなかったわ」 ラミッタも額に手を当てて自分の醜態を思い出す。「何ていうか、私達、ちょっと調子に乗っていたわね……」 言われてマルクエンも頷く。「あぁ、今まで魔人を倒し続けていたからな」 その返答に、ラミッタは半分同意していたが、それ以外の事もあった。「相手の能力を知る前に積極的な攻撃を仕掛けた。それもあるけど、私達は新しい能力に頼りすぎていたわ」 マルクエンはその言葉にハッとして行動を思い出す。「確かに……。私は空を飛ぶ相手を倒そうと、光の刃を出し続けていた」「私は空飛んで戦いを挑んでいたわ。相手の方が空中戦では上手なのにね」 二人はため息をつく。何でそんな戦い方をしたのだろうかと。完全に調子に乗っていたと言わざるを得ない。「魔人相手には地上で戦った方が良いのか?」「いや、空から一方的に攻撃をされるだけよ。遠距離の戦いでは高所を取った方が基本的に強いわ。忘れたのかしら? 騎士様」「わ、忘れてはいないが……」 忘れていたマルクエンだったが、とっさに嘘をついてしまった。それを誤魔化すように続ける。「地上に挑発して下ろすか、地上から攻撃するか」「どちらにしろ、魔人に対して人間は不利ね」 ラミッタは目を瞑って考えた後に、言った。「私、もっと上手く飛べるようになるわ」「そうか、私も何かしら戦う策を考えよう」「今日はもう休もうかしら、色々とあって疲れたわ」「あぁ、そうだな」 二人は夕食時まで各々の部屋で休むことにする。「マルクエン様、お食事の用意が出来ました」「えぇ、今行きます」 部屋をノックされ、マルクエンは外に出る。ラミッタは先に居たようだ。「よく眠れたかラミッタ?」「寝てるわけないでしょ。考え事だらけよ」「あっ、そうか、すまん……」 てっきりいつの間にか寝てしまっていた自分と同じく、ラミッタも眠っていたものだと思っていたマルクエンは少し恥ずかしそうにする。 客用の食堂にはマスカル達も先に座って待っていた。「こんばんは。ラミッタさんはお体は大丈夫ですか?」「えぇ、平気です。ご心配
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強がり

「ともかく、魔人も魔王も人類の敵です。一刻も早く討伐せねばならない」 マスカルは真面目な顔で、自分自身にも言い聞かせるように言った。 その後は取り留めもない会話をし、食事は終わる。 マルクエンの部屋へと戻り、二人は会話をした。「魔人と魔王、宿敵。アンタはどう思う?」「どうって言われてもな……。正体すら分からない相手にどうやって辿り着いたものか……」「そうよねぇ」 ラミッタは片目を閉じてため息をつく。「まぁ、考えてたって仕方ないわよね。今はあのヴィシソワって奴を倒すことだけ考えましょう」「そうだな」「それじゃおやすみ」「あぁ、おやすみラミッタ」 ラミッタは部屋に戻り、マルクエンは備え付けのシャワーを浴びて、明かりを消して寝た。 翌日、定刻になると音がなる石によってマルクエンは目覚める。「うーん、朝か」 ラミッタと共に、やって来たメイドに食堂へ案内されると、昨日と同じく既にマスカル達が居た。「おはようございます」 マルクエンが挨拶し、返事が返ってくる。 朝食が終わり、茶を飲んでいる時。唐突にマスカルが言う。「さて、お二人とは少しの間お別れになります」「お別れですか?」 ラミッタが聞き返すと、マスカルは頷いた。「えぇ、我々は各地に魔人の残していった箱を破壊せねばなりません」「そうですか……。そうですよね……」 マルクエンは魔人の残した箱のことを思い返す。「それでは、お二人のご武運を願います」「えぇ、マスカルさん達も。どうかお元気で」 マスカルから差し出された手を握り、ラミッタは言った。 アレラが内心喜んでいるマスカルを察してクスクスと笑う。「さて、準備は良いかラミッタ」「えぇ、大丈夫よ」 二人はヴィシソワが待つ地下の闘技場入り口まで来ていた。 微かな明かりが照らすその先に彼は待つ。「おや、おはようございます」 ヴィシソワは長い黒髪を掻き上げて挨拶をする。「おはようございます、ヴィシソワ……さん?」 マルクエンはヴィシソワに敬語を使うか迷ったが、人類の味方というので一応さん付けしてみた。「名前を覚えて頂いて光栄です」 ニヤリと不敵な笑みを浮かべてヴィシソワは空に飛び上がる。「さて、早速やりますか」 それを見てマルクエンもラミッタも剣を引き抜くが。「と、言っても。このままでは同じ事
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ぶっ倒れマルクエン

 ヴィシソワも槍と盾を呼び寄せ、地上戦が始まる。「さぁ、どこからでもどうぞ」「えぇ、では早速!!」 マルクエンは青いオーラを身に纏い、ラミッタの戦いを真似て、光の刃を飛ばしてから、同時に自分も突っ込んだ。 しかし、ヴィシソワは。なんと光の刃を指先で摘んで投げ返してきた。「なっ!?」 慌てて避けるマルクエン。そんな彼にヴィシソワは言う。「あなたのこの技も魔法の一種。光魔法のようなものですね」 マルクエンが驚き、固まる。「まさかとは思いますが、自分で使っていて知らなかったとでも?」 図星だ。マルクエンは言い返せずにバツの悪そうな顔をする。「まぁ良いでしょう。魔法ということは、反射も出来る」「肝に銘じます……」「さぁ、お話はここまで。掛かってきなさい!!」 新調したばかりの剣を振り上げ、マルクエンが駆け出す。 頭上に剣を構え、振り下ろす一撃に全てを掛けた。 マルクエンの剣技の一つ、盾割りだ。 その刃はヴィシソワの盾を確実に捉えていた。だが。「ほう、これは中々ですね」 戦場でいくつもの盾を破壊してきたこの技でも、魔力で強化された盾は壊れることもなく。ヴィシソワの手から弾かれる事もなかった。 驚くことも、落ち込む時間もなく、ヴィシソワが槍を振り回してくる。 マルクエンは急いで剣を引き寄せ、槍から身を守った。 ヴィシソワが間合いを取ると、今度は槍で連続突きを繰り出す。「ぐっ」 マルクエンはまずいと思った。完全に槍の間合いであり、剣では攻撃が届かない。 ここで踏み込まずに、あえて更に距離を取り、連続して剣を振るって光の刃を飛ばした。 何度も弾かれ、避けられするが、マルクエンは螺旋状に走りながら光の刃を出す。 ぐるぐると周りながら、少しずつ距離を詰めるマルクエン。 剣の届く距離まで近付くと、一気に一歩踏み出して斜めに斬り上げた。 その一撃も軽々と盾で弾くヴィシソワ。 だが、マルクエンは諦めずに何度も攻撃を入れた。 人を遥かに凌駕したスピードで斬って突いて叩きつけて。 ヴィシソワも弾き避けて盾で防ぐ。 一瞬の隙もない攻防戦だ。それを10分ほど続けていた時に、急にマルクエンの動きが遅くなり、体に力が入らなくなった。「なんだ!?」 カクッと膝が言うことを聞かずに曲がり、地面に突っ伏
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歌声

 ラミッタは構わず歌い続けた。「その目で何を見て その手で何を掴むのか やがてその足で 地を踏みしめ 子は何を望む 刹那の夢よ 神よ どうか祝福を」 マルクエンはラミッタの歌を初めて聞く。優しい歌声だった。「ルーサの子守唄よ。おこちゃまにはお似合いね」 ラミッタはニコリと笑う。「あぁ、とても良かった」 マルクエンがまっすぐ見据えて言うので、ちょっと目線を逸らして顔を赤らめた。「……ド変態卑猥野郎」 しばらく会話もなく、マルクエンは膝枕されたまま横になっていた。「ラミッタ、もう動けそうだ」「ホント、頑丈さだけは取り柄ね」 マルクエンは上半身を起こして、足に力を入れた。 何とか立ち上がるが、まだフラついている。「ほら、行くわよ」 ラミッタがマルクエンの左腕を肩に回して歩き出す。 やっとの思いで部屋に戻ったマルクエンは、ベッドに座る。「ほら、その鎧を脱がなくちゃ」「すまんが、手伝ってくれるか?」「分かっているわよ」 マルクエンは防具を脱ぐと、ベッドへ仰向けに倒れ込んだ。「あぁ、満身創痍だ」「でしょうね」 ラミッタは片目を閉じてため息を吐く。「何だか、久しぶりにこんな修行をした。疲れたが悪い気分ではないな」「え、アンタはマゾヒスト?」「違う!!」 ラミッタにからかわれるマルクエン。「アンタこういう修行とか好きそうだもんね」「ラミッタは嫌か?」「私は修行なんて好きじゃないわ。でも、強くなるため、仕方なくよ」「そうか……」 マルクエンはそう返事をしたかと思うと、目を閉じた。「ラミッタ。頼みがあるんだが」「内容次第ね」「また、歌を歌ってくれないか?」 言われ、ラミッタは赤面する。「い、嫌よ!! 私の歌なんて聞いてもつまらないでしょ!?」「そんな事はない。良い歌声だった」「なっ!!」 マルクエンは目を閉じていたが、顔を赤くしてプルプルと震えるラミッタの顔が目に見えるようだった。「と、特別ね、特別だからね!!」 目を閉じているマルクエンにラミッタは歌を披露する。夢見心地のまま、眠ってしまった。 マルクエンはモソモソと目を覚ます。少し仮眠をするだけのつもりが、窓から差す日差しが朝であることを告げていた。 いつぶりか分からないが、全身筋肉痛に見舞われている。「マルクエン様、朝
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