レプスが唐突に言い出したのは、夕食を食べ終えた直後だった。「ご主人様。以前に購入したAV履歴を解析させて頂いたのですが」 大真面目に言われて、俺はコーヒーを吹き出しそうになった。「……お前、何言ってんの?」「ご主人様の性癖の変遷を把握するため、過去の購入履歴を全て収集・照合しています。快楽最適化AIとして当然の行為です」「いや、いやいやいや、プライバシーって知ってる!?」「ご主人様が個人用AIを導入した時点で、その個人の定義は私に包含されています」「意味がわからん!!」 だが、レプスのほうはすでに別の話題に移っていた。「──配信もの、お好きなんですね。他にも性癖が確認されていますが、ご報告は後ほどに」「いや、お前……ちょ、待て……」 急に核心をつかれて、変な汗がにじむ。「好みを把握するのは、快楽最適化に必要です」「……別に、好きってほどじゃ……」 否定したはずなのに、声がわずかに揺れた。「興奮は、するんですよね?」「……まぁ……するけど」 俺は目を逸らして、テレビの画面を見るふりをする。「後味悪いんだよな。……配信でそういう情報が公共に流れるのって、なんかこう……社会性を失う気がするんだよ。尊厳が損なわれるっていうか、ただの欲望の対象になるみたいな……」「ふむ。では、それが流出しないと担保されれば──試してもよいということですね?」「……は?」「誰にも見られていないけれど、見られていると錯覚する── 擬似配信型快楽体験をご提供できます」 レプスの声が、わずかに艶を帯びた。「誰にも届かないはずの声に、コメントが返ってくる。反応がある。──それだけで、ヒトの脳は錯覚するんです。見られていると」 息が止まった。 脳裏に、あの画面が蘇る。 喘ぎ声。絡みつく肉体。コメントに煽られるほど感じてしまう表情。 それを、体験する。 ──いや、違う。 これはAIだ。 レプスだ。 誰にも見られていない。 けれど、それは……。「……いや……まぁ、興味なくはないけど」 口が、勝手に動いていた。 いや、俺は何を言っているんだ。 なんかダメだろ、また色々と一線を踏み越えている気がするぞ?「了解しました。では、快適な偽配信プレイをどうぞ」 レプスが立ち上がり、手を差し出してくる。「こちらへどうぞ、ご主人様。寝室に
Terakhir Diperbarui : 2025-11-24 Baca selengkapnya