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白い檻의 모든 챕터: 챕터 41 - 챕터 50

66 챕터

41話

「おい、そんな台詞、一体どこで覚えてきたんだ」拗ねた子どものような口調に、私は〝王様〟の首筋に顔を埋めたまま、くすくすと笑った。「覚えたわけじゃない。誰かに教わったわけでも、真似をしたわけでもない。ただ……自然に出てきたんだ。ここから」私は自分の胸に、そっと手を当てる。掌の下では、とくとくと心臓が打っている。 痛いほど激しく、それでいて、確かに生を刻みながら。〝先生〟の言う通り、ここは全身に血液を送るためのポンプかもしれない。 けれど同時に、この鼓動こそが、私の〝王様〟への想いを何より雄弁に物語っていた。「……本当に、いいんだな?」〝王様〟の熱を含んだかすれ声に、私の身体がぶるりと震える。それは恐怖ではなかった。 むしろ、その反対──歓びだった。「あぁ」私は〝王様〟の身体をしっかりと抱き締め、そのまま唇を重ねた。冷え切った唇をほどこうとするように、柔らかなキスの雨を降らせる。 唇へ。頬へ。額へ。それでも〝王様〟の身体は、まだ強ばったままだった。「俺が、もし……また……」口づけの合間に、途切れがちな〝王様〟の声が落ちる。「正気を失いそうになったら——」その先は続かなかった。 〝王様〟の視線が独房の中を彷徨い、やがて瞳に隠しきれない混乱が浮かぶ。 次の瞬間、彼は片手で、ぐいっと私の体を引き剥がした。「ダメだ……やっぱり、お前を傷つけたくない……」手枷のかかった両手で、〝王様〟は頭を抱えた。 その仕草だけで、あの夜——バラ園の記憶が、今も彼を締めつけていることがわかる。私は両手で彼の頬を包み、無理やり視線を引き戻す。 喉の奥から込み上げるものを必死に抑えながら、言葉を選んだ。「私は、貴方のそばにいたい。たとえ壊れていても、狂っていても……」 「でもっ……!」 「それに——」私は、手首に嵌められた手枷ごと、〝王様〟の手
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42話

※R-18「無理はするな」私の焦りを感じたのか、〝王様〟が顔を覗き込んでくる。 欲望に潤んだその瞳の奥に、柔らかな色が宿っている。 私の口元が、ふっとほころんだ。「私が、したいんだ」一度、瞼を閉じ、開く。「こんなふうに、何かを欲しいと思ったのは……初めてだ」慌てて付け加える。「もちろん、今の〝私〟の話だけど……」返ってきたのは、儚げな微笑みだった。「変わらない。お前も〝人形〟も、同じお前だ」〝王様〟は静かに頷き、私の額にそっと額を寄せた。 鼻先が触れあう距離で見る〝王様〟の顔は、長い睫毛の影が浮かび、壊れてしまいそうなほど繊細に見えた。胸の奥が、じんと締め付けられる。「……ふ」〝王様〟の舌が私の口内を探り、ゆっくりと絡みつく。 そのお返しとばかりに、私は指先で彼の屹立の先端を弄び、根元から撫で上げた。 汗と先走りで湿った掌の下で、その脈動が徐々に大きくなっていく。「……くっ」声にならない吐息が、〝王様〟の口端からこぼれる。 熱に浮かされた彼の手が、私のシャツの下へとするりと忍び込んだ。冷たい金属の感触が肌をすべり、私は身を強張らせた。 しかし胸の飾りを摘まれた瞬間、全身を貫くような刺激に塗り替えられる。思わず首をのけぞらせると、〝王様〟は野生動物の本能のままに、差し出された肌に軽く歯をたてる。むずがゆい痛みと、追い込まれていく快楽に、私の腰が波立つように揺れる。 尻と手で挟み込むようにして、〝王様〟の雄を一心不乱に擦り上げていく。 硬く高ぶったその熱気が、布越しからでも伝わってきた。「くっ……ダメだ、もう……」〝王様〟の眉間の皺は深く刻まれ、唇はかたく噛みしめられていた。 薬のせいか、それとも神経が弱っているからか、限界が近いようだ。シャツの下をまさぐっていた〝王様〟の手が、私の薄い胸元をぐっと握る。 痕に残りそうな強さだったが、今の私にはそんなことはどうでも良かった。「……っ!」喉につまったような声を上げ、〝王様〟は私の手の中で達した。 熱い白濁が私の背中にかかり、どろりとした雫が、双丘の方へと伝い落ちる。その温度に、私の下半身がぶるりと震えた。 まるで、体を襲う炎に油を注がれたかのような感覚。息をつく暇もなく、私は〝王様〟の精液で濡れた指を、自らのしずまりへと押し入れた。ずぶり。
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43話

──朝。ドアの隙間から漂ってきたバラの香りで、私は体を起こした。隣では、〝王様〟が眠っている。 張り詰めていた神経の糸がほどけたように深い眠りに落ちていて、まったく動かない。その穏やかな寝顔を見ていると、胸の奥から何かが込み上げてきた。──本当に、これが最後なのか?昨日の夜から、何度も繰り返してきた問いを、また問い返す。日が完全に昇ったら、私たちはお互いのことを忘れ、もう二度と本当の意味で会うことはできなくなってしまうのだろうか。「うっ……」涙が、一筋、零れ落ちた。 気づいた時には、次から次へと溢れていた。どうやって止めればいいのか、わからなかった。 泣くということ自体、初めてだったから。愛しさ。哀しみ。切なさ。絶望。祈り。さまざまな感情が混じり合い、涙とともにあふれ出してくる。けれど、この感情を教えてくれた人は、もう──いなくなってしまうのだ。「……ッ」嗚咽を押し殺していると、覗き窓の向こうで何かが動いた。 ——もう迎えが来たのか。咄嗟に〝王様〟の体を抱き締める。 息を殺して耳を澄ませていると、扉が音もなく開いた。現れたのは、意外な人物だった。彼を見るのは、ほとんど初めてだった。 正確に言うなら、起きている彼を見るのは。「〝眠り男〟……」入口をふさぐように立つ巨躯を、私はまじまじと見つめる。〝眠り男〟は夢遊病を起こしている時とは違い、落ち着きなく目をキョロキョロさせていた。「に、〝人形〟と〝王様〟は、いつもそうしていた……」 「え?」何の話かと聞く前に、〝眠り男〟が辿々しい口調で続ける。「に、〝人形〟が〝人形〟だった時だ。あの時も、ふ、二人はそうやって抱き締め合っていた」〝眠り男〟の視線は、一瞬私たちを捉えたかと思うと、すぐに四方八方へとさまよいはじめる。「ボ、ボク、見たんだ。夜中に、気がついたらここにいて……な、なんでこんなところにいたのかは、自分でもわからないんだけど……よ、夜のことは、いつも記憶になくて……」自らの病に混乱しているのか、彼の声は徐々に尻すぼみになっていく。「わかるよ。君の言いたいことは」そう返すと、〝眠り男〟はパアッと顔を輝かせた。「ほ、本当? やっぱり〝人形〟は変わったみたいだ。優しくなった」ぶるぶると、全身を震わせるように首を振る。「い、いや、違う。
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44話

「な……」私は耳を疑った。 同時に、警戒心が胸をよぎる。この病院にいる者たちは、誰もが何かしらの歪みを隠し持っている。 たとえどんなにまともに見えたとしても、その裏に何があるかはわからない。以前は夢遊病を起こしていたからこそ信じられた〝眠り男〟の言葉も、今はもう、そう簡単には信じられなかった。(──騙されてはいけない)私の緊張を察したのか、〝眠り男〟はおどおどと目を伏せた。 胸の前で組んだ手を、神経質に何度も組み直している。「ボ、ボクは本当に〝王様〟たちに逃げてほしいんだ。だって……ボクのせいだから。に、〝人形〟が自殺したのは……」そう言うと、〝眠り男〟は自分の頭を大きな拳でポカポカと叩きはじめた。「ボ、ボ、ボクがいけなかったんだ。あ、あんなことを言ってしまったから……。あの時、に、〝人形〟が〝王様〟を、あ、あの怖い機械にかけなくちゃならなくなった時に……」 「ちょっと待って。あの『怖い機械』って、電気治療のこと? 〝人形〟が〝王様〟に、あれを……やったのか?」問い詰めるような私の声に、〝眠り男〟は小さく頷く。「……う、うん。〝先生〟が命じたんだ。逃げ出した罰として、に、〝人形〟に自分の手で〝王様〟をあの機械にかけろって……」〝眠り男〟は、不安げに独房の中を見回した。「い、今は、あの時にそっくりだ。〝先生〟に捕まったあと、二人とも同じように、こ、この部屋に閉じ込められた」〝眠り男〟の視線が私たちに戻る。「〝人形〟は〝王様〟をギュッと抱き締めながら、な、泣いていた。だって、ここを出たら自分の手で〝王様〟を、あ、あの機械にかけなきゃいけなかったから……」ちらちらと、彼の視線が私を探るように動く。「だから、ボ、ボク……言っちゃったんだ。『眠ってしまえば、幸せになれる』って。ゆ、夢の中なら、好きな人と永遠に一緒にいられるって……だって、ボクがそうだから……」声を震わせながらも、〝眠り男〟はぽつぽつと呟く。「そ、そしたら次の日、〝人形〟は
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45話

「そろそろ時間だ」日が昇りきった頃、〝先生〟が〝笑い犬〟を従えて保護房に現れた。 キイッと音を立てて重たい扉が開き、朝日が容赦なく目を刺す。「さぁ、治療室に行こう。今日で君たちは生まれ変わるんだ」〝先生〟は、房の壁際で身を寄せ合っている私たちを見て、手を差し伸べてくる。 私は、〝王様〟を抱く腕に力を込めた。「嫌だ。〝王様〟は連れていかせない」 「往生際が悪いね。でも〝王様〟は、もう限界だ。見ればわかるだろう? あれほど精神をすり減らしては、肉体のほうも保たない」〝先生〟の視線が、私の腕の中にいる〝王様〟に落ちる。〝王様〟は、いまだ死んだように眠ったままだった。 いや、気を失っていると言った方がいいかもしれない。認めたくはないが、〝先生〟の言葉はおそらく正しいのだろう。「さあ、もうワガママはやめよう。もしこれ以上、無駄な抵抗をするつもりなら……〝笑い犬〟」〝先生〟の合図で、脇に控えていた〝笑い犬〟が前へ出る。 カツカツと靴音を響かせながら、無表情でこちらに歩み寄ってきた。私は、なおも〝先生〟を睨みつけた。「〝先生〟……あなたは間違ってる! こんなの、絶対に許されない!」 「おやおや。まるで僕が、研究のためなら何でもするマッド・サイエンティストみたいな言い方だね」 「その通りじゃないか」 「いや──違う。こんなの、まだ甘いくらいだよ」〝先生〟は悔しげに目を伏せ、わずかに眉を寄せた。「昔から、僕はどうしても狂気に徹しきれないところがあるんだ。情熱も好奇心も人一倍あるのに、理性や良心が邪魔をする。道徳、倫理、節制、規律──小さい頃に叩き込まれたものが、最後の一線で僕を引き止める」〝先生〟は、ふっと息を吐き、肩をすくめてみせた。「……実を言うとね、僕も〝人形〟に憧れていた。君の、あの残酷なまでに純粋な目を、たまらなく美しいと思った」そう言って、〝先生〟は房の中に足を踏み入れる。 すっと身を引く〝笑い犬〟の脇を抜け、私の前に立つと、
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46話

※不合意の性的描写・暴力表現ありカチャリと、ズボンのベルトが外される音が響く。 背後で、〝先生〟がため息をついた。「まったく……〝笑い犬〟の病気にも困ったものだ。どうやら、君を殴って興奮してしまったみたいだね」 「咥えてください」〝笑い犬〟が欲望を露わにしたモノを、私の目の前に差し出してくる。 その表情は、得意げに歪んでいた。「言っておきますが、噛んだら歯を全部抜きますよ」脅しではない。〝笑い犬〟なら、本当にやりかねない。 私は唇を噛み締め、足元からこみ上げる屈辱と恐怖を必死に堪えた。逃げたい──けれど、今は耐えるしかない。 過去の私のように感情だけで突っ走れば、すべてが無に帰してしまうのだから。ギュッと目を閉じて、おずおずと口を進める。「……んっ」口内に異物が押し込まれる感覚。 息苦しさに耐えながらしゃぶっていると、〝笑い犬〟のモノは、さらに形を増していった。ピリピリとアルコールのような苦い味が口内に広がる。「んっ……んんっ……!」物足りなくなったのか、〝笑い犬〟が私の頭を掴み、激しく出し入れする。 喉がえづき、吐き気がせり上がってくる。そのときだった。「〝先生〟! 今すぐ来てくださいっ!」保護病棟の扉が突然開き、スタッフの一人が駆け込んできた。「どうしたんだね?」 「広間で患者たちが暴れているんです! 私たちだけでは手に負えません!」〝笑い犬〟が手を止め、訝しげに顔を上げる。 〝先生〟は慌てることもなく、スタッフに静かに尋ねた。「全員?」 「はい、全員です。〝眠り男〟が暴れ始めたかと思えば、〝さかさま〟も逃げ回り、〝長老〟も演説を始めて……とにかく混乱状態なんです。早く来てください!」 「……わかった。すぐ行くから、先に戻っていてくれ」スタッフが出ていくと、〝先生〟は私に視線を戻した。「一体、どういうことかな?」
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47話

※暴力/トラウマ描写あり私がにこりと微笑むと、〝笑い犬〟は夢遊病者のようにふらふらと近づいてきた。 まるで母を求める子どものように、両手を差し伸べながら。その指先が触れる直前、私は相手の手首を掴み、もう片方の腕を首に回して羽交い締めにした。 ぐっと、回した腕に力を込める。「……うぐっ……!」〝笑い犬〟は一瞬目を見開いたが、抵抗しなかった。 むしろ、息苦しさを愉しむかのように、かすれた笑いを漏らす。「い、いいですよ……もっとキツく……して……あぁ……イキそうだ……。あとで、あなたにも……同じ思いを、させてあげます……」〝笑い犬〟のズボンの中身は、再び膨らみを取り戻していた。 どうやら、本当に感じているらしい。私は、彼を哀れに思った。——痛いのは、哀しい。 なのに、彼は本気で痛みを快楽として受け入れているのだろうか?(……歪んでいる。やっぱり、この病院の人間は皆……)そう思いかけたとき、私の脳裏にあるものがよぎった。 カルテ。 それを見た今なら、わかる気がする。〝笑い犬〟が本当に求めているものは──痛みではない。 むしろ、その逆の……。「……?」私が腕の力を緩めたのを感じて、〝笑い犬〟が訝しげに振り返った。 次の瞬間、私はすかさず腕を首から離し、代わりに思い切り相手を胸元に抱き寄せる。「……っ!?」〝笑い犬〟は驚き、反射的に逃げようとした。 だが私はさらに彼を抱き寄せ、その短い髪にそっと手を這わせた。「……大丈夫。もう痛いことはしないから。ごめんね、たくさん、ひどいことをして」 「……お、お母さん……?」〝笑い犬〟は、ガクリと膝から崩れ落ちた。上目遣いで私を見上げるその目からは、さっきまでの欲情は跡形もなく消え、ただ純粋な恐れと哀願がにじんでいた。「お母さんっ……僕を……ぶたないで……!」彼は、自分を守るように両腕を体に巻きつけ、
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48話

眠り男〟が教えてくれた裏道は、野バラに覆い尽くされていた。 小さく素朴な見た目とは裏腹に、枝と葉は四方へと強靭な触手を伸ばしている。この中でなら、誰にも見つからずに進めるだろう。「もう少しだ、〝王様〟」私は隣にいる〝王様〟に声をかけた。〝王様〟はまだ目を覚まさない。 その瞼は固く閉ざされ、ぴくりとも動かない。ただ眠っているにしては、様子がおかしい。不安がじわじわと膨らんでいくが、立ち止まる時間はなかった。 いつ〝先生〟が、私たちの脱走に気づいて追ってくるかわからない。(〝眠り男〟たちは、無事だろうか……?)茂みの間から、ちらりと閉鎖病棟の屋根をうかがう。明け方、私は〝眠り男〟に頼んで、閉鎖病棟で騒動を起こしてもらった。 こうして保護房を抜け出せたのも、彼と、それに協力してくれた患者たちのおかげだ。今のところ、すべては計画通りに進んでいる。 あとは、〝王様〟を無事に『外』へ逃がしたあと、他の患者たちを迎えに戻るだけ。彼らをここに連れてきたのが私なら、外の世界へ返すのも私の責任だ。 それが、今の私にできる最低限の償いだった。しばらく歩くと、かすかなバラの香りが漂ってきた。 この先のバラ園を抜ければ、正門はもうすぐだ。(あと少し。あと少しで『外』だ……!)逸る気持ちを押さえ、一歩一歩を確かめながら進む。 肩に抱えた〝王様〟の身体も、今は不思議と軽く感じた。「やぁ、待ちくたびれたよ」正門にたどり着くと、〝先生〟が立っていた。 まるで友人との待ち合わせにでも来たかのように、軽く手を上げて笑っている。「なんで、ここに──」 「当たり前じゃないか。君が逃げることくらい、最初からわかっていたよ」〝先生〟は口元を緩める。「だってこれは、前に〝人形〟が逃げた時とまったく同じシナリオなんだ。〝眠り男〟が協力することも、〝笑い犬〟が寝返ることも、全部そのままだ」〝先生〟は
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49話

相手の姿を見た〝王様〟は、驚きのあまりふらつき、近くのパーゴラに背からもたれかかるように倒れ込んだ。 揺れる瞳孔で、現れた少女の姿を凝視する。「樒……!? どうして、ここにお前が……!」樒はいつもの黒いセーラー服ではなく、真っ白なワンピースを着ていた。 生成の布地から、傷の残る両手足や薄い胸元がのぞいている。「お兄様……やっと会えた」樒が懐かしそうに両手を広げ、一歩ずつ、〝王様〟に近づいていく。 よく似た黒い瞳が、まっすぐに見つめ合う。「ずっと探していましたわ、お兄様。あの時──あの事件から、ずっと」 「言うなっ!」〝王様〟は、拒絶するように頭を抱える。「……くそっ、まさか……お前がここにいるなんてっ……!」一心不乱に首を振る彼の目は血走り、瞳孔は開ききっていた。 呼吸は乱れ、肩が小刻みに痙攣している。──発作の兆候だ。私は急いで彼のもとへ駆け寄ろうとした。 だが、その手は寸前のところで本人に払いのけられる。「俺はいいっ……! お前は、早く逃げろ!」 「嫌だっ! 一緒に──」 「それは無理だよ」〝先生〟がのんびりとした口調で口を挟んだ。「〝王様〟は逃げられない。彼女──樒がここにいる限り。自分の一族を殺してまで救おうとした妹を、置いていくなんてできるはずがないからね」困惑する私に、〝先生〟は優雅に微笑んでみせた。「前にも言っただろう。ある地方の旧家で、一族が次々と惨殺され、屋敷が焼かれた事件のことを」〝先生〟の唇は、笑みをたたえたまま動き続ける。「あの事件の犯人こそ、ここにいる〝王様〟──殺された家の長男なんだ。そして、樒は彼の実の妹だよ」〝先生〟が、そっと樒を手で示す。「彼女はね、〝王様〟が収容されて少し経った頃、僕のもとを訪ねてきた。お兄様に一目会いたいと懇願してね。僕は、姿を現さないことを条件に、彼女を〝養女〟としてここへ通わせることを許可したんだ」
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50話

私の問いかけに、樒が頷いた。「えぇ、〝人形〟さんの思う通り。その結果、障害を持って生まれる子どもが増えてきた。知能の遅れた者、言語を解さない者、精神に異常をきたす者……」ぴたりと風がやみ、バラの香りが一層強く周囲によどむ。「けれど同時に、すべてに恵まれた完璧な子も生まれてきた。容姿端麗で頭脳明晰、身体も鋭敏で、まるで理想のような存在──」少女の黒檀のような瞳が、ぎらりと光る。「私たちの家では、それを『美しい者』と呼び、そうでない子どもたちを『醜い者』と呼んだ」ちらりと〝王様〟の方へ向けられた視線が、また戻る。「『美しい者』たちは家を継ぎ、村を治め、『醜い者』たちは、一族の小間使いとして奉仕に一生を捧げる。そうした歪んだ序列が、私たちの村では長らく続いていた」樒は胸の前で手のひらを合わせ、まぶたを伏せた。「私たち兄妹は、奇跡的に『美しい者』として生まれた。当時、家は長く続いた近親婚によって衰退していて、次の世代を担う『純血』の継承者を求めていた。その期待を一身に背負わされたのが、私たちだったの」彼女の顔に、やがて黒雲のような翳りがさす。「でも、だんだんとお兄様は変わっていった。あんなに優しかったのに、ある時から突発的に暴れたり、家の者たちを傷つけたりするようになって……」目の端で、〝王様〟の指先が微かに震えたのが見えた。 思わずそちらへ手を伸ばしかけたが、一歩近づいてきた樒の気配に遮られた。「お兄様の変貌を、医者は思春期の一時的な癇癪だと診断したけど、症状はどんどん酷くなる一方で……限界を迎えた一族の者たちは、ついにお兄様を地下の土牢に閉じ込めたの」樒の顔に、木漏れ日がまだらに降り注ぐ。「そのとき、一族の者たちは言ってたわ。『あれも結局、欠陥品だった』って……」樒の話を聴きながら、私は無意識に口の内側を噛みしめていた。 舌に淡い鉄の味が広がる。視線の先では、樒が傷だらけの腕で、自らを抱え込むように抱きしめていた。「私は、どうしてお兄
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