さすがの彰も、プライドの高い文化人だ。ナフィサの露骨な要求にすぐには頭を下げられず、その場に立ち尽くしていた。他の同席者たちが慌てて彼女に助け舟を出した。「張本先生、そう固くならないでください。ナフィサさんはただ『同じようなジャンルの脚本が欲しい』と言っているだけで、丸々コピーしろなんて一言も言ってませんよ。それに、向こうの脚本もまだたった二話分の設定が漏れてきただけじゃないですか。仮に盗作しようにも、材料が足りませんよ」同席者が彰の腕を引いて無理やり席に座らせた。「まずは彼女の話だけでも聞いてみましょうよ」彰は咳払いをした。「……オマージュやインスパイアであればお受けしますが、盗作は絶対にいたしませんよ」ナフィサは満足げに笑った。「ええ、もちろん。それに実のところ、仮に向こうと少し似たような部分があったとしても、私たちが先にドラマを公開してしまえば、視聴者は向こうが私たちのドラマを盗作したのだと思い込むはずですからね」「しかし、向こうはすでに本格的な制作準備に入っているんですよ。今から私たちが追いかけて、果たして間に合うでしょうか?」信彦は少し懐疑的だった。なにしろ、こちらはまだ脚本の第一文字すら書かれていない状態なのだ。「張本先生に特急で脚本を仕上げていただき、真崎監督には少しピッチを上げて撮影していただきます。そして、向こうのプロジェクトに『いくつか予期せぬトラブル』が起きて足踏みしてくれれば、確実に私たちのドラマの方が先に公開できますわ」信彦や同席者たちは顔を見合わせた。彼女の言う予期せぬトラブルの意味が分からないはずがない。実のところ、彼女が企んでいることは極めて悪質で卑劣だ。しかし……彼女が提示した報酬は、あまりにも破格だった。「さて、皆様。もしこの魅力的なプロジェクトに少しでもご興味があるなら、具体的なお話を続けましょうか?」ナフィサがテーブルのメンバーをゆっくりと見回すと、先ほどまで腰を浮かせかけていた彼らは、今やしっかりと椅子に座り直していた。彼女は勝ち誇ったように拓斗の方へ視線を送った。やはり、世の中金さえ積めば動かせない人間などいないのだ。拓斗は終始一言も発していなかったが、彼がそこに座っているという事実自体が、ナフィサの最大の切り札であり後ろ盾だった。同席者たちも、彼の存在が
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