「あなたこそ、お義母さんの心の支えよ」「でしたら、お義母さんのお嫁さんではなく、娘にしていただけませんか?」「だめよ。あなたには、私のお嫁さんになってもらわないと。じゃないと、うちの宗司が、綾瀬清華なんかに取られちゃうわ」雰囲気はずいぶんと和やかになった。宗司の両親が先に船に乗り込む。宗司は若菜の荷物を持ってやり、彼女が船に乗り込む際にふらつくのを見て、慌ててその体を抱きかかえ、船上へと導いた。船に乗ってからも、若菜は宗司から離れがたく、甘えるように彼の腰に抱きついた。宗司は顔に困惑を浮かべたものの、結局、若菜を突き放すことはなかった。船が動き出した時には、彼女が体をぶつけないよう、いっそ自分の膝の上へと引き寄せて座らせた。二人のその親密な様子を見て、宗司の両親も満足そうな表情を浮かべた。一家は息がぴったり。一時的に清華の存在をすっかり頭から追い出していた。船が出航してから、清華はようやく物陰から姿を現した。自分の結婚記念日の準備を手伝う、などと言っておきながら、実は、この機会に高遠家の家族旅行に便乗することだったとは。若菜の腹黒さと計算高さには、感服せざるを得ない。清華は次の便で島に渡った。そのリゾート島は小さく、コテージは一つしかなかったため、彼らを見つけるのは容易だった。清華は宗司の部屋の窓の、真向かいの部屋を取りたかった。だが、フロント係は、その部屋のバスタブが壊れており、まだ修理が終わっていないと言う。「構わないわ。その部屋がいいの」フロント係は理解に苦しみながらも、客室部と連絡を取り、その部屋を清華に割り当てた。彼女が部屋に入ると、ちょうど向かいの部屋で、宗司と若菜が何かをしているのが見えた。若菜が身振り手振りで何かを説明している。恐らく、記念日のことだろう。宗司は彼女の話に満足した様子で、機嫌が良さそうだ。若菜はさらに何かを言いながら宗司に近づき、彼の上着の裾を指でちょんと引っ掛けた。宗司がそれを止めないのを見て、若菜はさらに体を寄せ、とうとう彼の胸に頭を押し付けた。宗司の顔には一瞬、葛藤が浮かんだが、すぐに腕が若菜の腰に回された。それに勇気づけられたように、若菜はすぐに顔を上げ、宗司の顎にキスをした。身長差のせいで、彼女は何度もそこへキスを繰り返すしかない。やがて、それが少し
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