遥真はとても落ち着いていた。玲奈がその問いを口にしても、まったく感情の揺れを見せないほどに。その反応に、玲奈は恐怖を覚え始める。「死罪でもない限り、自分の人生を決めるのは俺自身だ」遥真は静かに答えた。低く、ゆっくりとした声で。「たとえ昔、君が俺を助けたとしても、その権利はない」玲奈の手が、少しずつ強く握りしめられていく。胸の奥に、大きな石を押しつけられたように苦しい。遥真という人は、考え方があまりにも冷静すぎて、むしろ狂気すら感じる。「他に用は?」と遥真が尋ねる。「……もうない」玲奈は、たったそれだけの言葉で全身の力を抜かれてしまった。「行っていいよ」遥真は軽くうなずき、「ああ」とだけ言って立ち去った。遠ざかっていく背中を見つめながら、本当ならとっくに死んでいるはずの心が、この瞬間、狂おしいほどに感情を募らせていく。頭の中で、ひとつの声が繰り返し囁く。――柚香が手に入れたものは、あなたにも手に入る。彼があなたを愛さないのは、ただ先に柚香と出会ったから。柚香さえいなくなれば、きっとあなたを見るようになる。そうだ。全部、柚香のせいだ。柚香さえいなくなれば、彼はきっと自分を見てくれる。遥真は病院を出ると、そのまま楓苑マンションへ向かった。まず自分の部屋でシャワーを浴びて着替え、それから柚香の部屋のドアをノックする。顔を見た瞬間、柚香はためらいなくドアを閉めた。けれど力では敵わず、強引に押し入られてしまう。その瞬間、玄関に監視カメラをつけるべきだと痛感した。「これ、不法侵入だよ」柚香が抗議する。遥真はスマホを取り出して差し出した。「通報する?」「……」――ほんと、それしかできないの?陽翔のことがなければ、間違いなく通報していた。「する!」不意に、陽翔のはっきりした声が響いた。続いて、子ども用のスマートウォッチをつけたままの彼が出てくる。「もしもし警察ですか。うちにおじさんが無理やり入ってきました。ママが出てってって言っても出ていきません」柚香「え?」遥真「?」柚香は目を丸くする。遥真も一瞬、言葉を失った。すぐに時計の向こうから声が返ってくる。「今、お母さんと一緒にいて安全ですか?」「はい、安全です。でもこのおじさん、何度も勝手に入ってきて、僕とママがすごく困ってい
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