柚香の目に、わずかな驚きがよぎった。まさか、陽翔がそんなことを言い出すとは思わなかった。これまでずっと彼女が一番気にしていたのは、離婚が陽翔の心に影響を与えることだった。けれど、だからといって無理に我慢して遥真と夫婦関係を続けることもできない。だからこそ、陽翔の願いは基本的に何でも聞くつもりでいた。遥真に会いたいと言えば止めないし、休みになれば京原に帰りたいと言っても反対しない。とにかく、元気で楽しく育ってくれれば、それでいい。そう思っているから、こういうことは全部受け入れられる。「たぶん来ないと思う」遥真がまだ入院中だと考えて、柚香はそう答えた。陽翔は納得したようにうなずいた。ところがその日の夜、陽翔はスマートウォッチで遥真にボイスメッセージを送った。「さすが遥真おじさん、やっぱりそうだよね」遥真「?」遥真はボイスメッセージで返した。「俺に会いたくなった?」陽翔は素直じゃない。「新しいパパ探しで忙しいから、そんな暇ないよ」遥真はゆっくりと、からかうような口調で言う。「どうやら君はママへの愛も、その程度みたいだな」陽翔は小さく眉をひそめた。どういう意味?「重婚罪っていう罪があるの、知ってるか」遥真の声は低くて落ち着いていて、いつも通り穏やかだった。「君のママはまだ俺と離婚してない。このタイミングで相手を探すって、逆に困らせてることにならないか?」陽翔は少し得意げに言い返す。「新しいパパって、結婚しなきゃダメだって誰が決めたの?」遥真はわずかに目を細めた。陽翔はわざと彼を苛立たせるように続ける。「ママが籍さえ入れなければ、たとえ十人と付き合っても問題ないでしょ。僕、その十人みんなパパって呼ぶし」遥真「……」陽翔はさらにボイスメッセージを送る。「こういうの、遥真おじさんの方が詳しいんじゃない?だってあの玲奈おばさんも、そうやってずっとそばにいるじゃん」「俺と彼女は、君が思ってる関係じゃない」遥真は子どもに誤解されたくなかった。それで価値観まで歪んでほしくないと思っている。「彼女には恩があるだけだ。だから、その恩を返してるだけだ」そのボイスメッセージを送ってから、陽翔は返事をしなかった。あの玲奈おばさんとの関係がどうであれ、あのことでママとケンカになったのは事実。ママが傷ついたのも
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