「別にこそこそしてないわよ。あなたが鈴木さんと恋愛リアリティ番組に出るって聞いて、ちょっと驚いただけ」杏奈の言葉を聞いて、女性は目を丸くした。彼女はさっきまでの高飛車な態度とはうってかわって、杏奈の手を掴み、可哀想な子犬のような目で見つめてきた。「ねえ、お願い。恋愛リアリティ番組のことは絶対に誰にも言わないで。もし言ったら、絶対に許さないから」それを言われ、杏奈は呆れてしまった。この人、可哀想なフリをしてるわりには、脅し方がチンピラみたいだ。だがそれもあって、杏奈はこれから、兄と話題作りをすることになるこの女優に、少し興味がわいてきたのだ。「言いふらしたりしないわ」「じゃあ、今回は信じてあげる」そして、女性はそれ以上何も言わず、ポケットからサングラスを取り出してかけると、さっさとレストランを出て行った。それを見て杏奈は肩をすくめ、自分も睦月のところへ向かった。それから睦月がアトリエに加わり、杏奈はずいぶん仕事が楽になっていた。アトリエの内装工事には2週間かかるけど、その間、杏奈と睦月はすでに営業活動を始めていた。二人はまず知名度を上げるため、ショート動画を投稿してアカウントを立ち上げたのだった。そして、オーダーメイドや団体での注文を受けられるように準備を進めた。そして、睦月はデザイン業界ではそこそこ顔が広かったから、彼女は知り合いや友人たちにも宣伝に協力するようにとお願いしていたのだ。おかげで、すぐに最初の仕事が舞い込んできた。依頼主は、まだあまり売れていない女優だった。チャリティーパーティーに参加するための、華やかなドレスが欲しいという注文だ。杏奈が依頼を受けた時、電話をかけてきたのはその女優のアシスタントだった。電話で要望を聞いたけど、杏奈は直接会えないかと尋ねた。ご本人に会った方が、その人の雰囲気に合った服をデザインできるからだ。すると、アシスタントが本人に確認したところ、海辺で行われているイベントに来てほしいと返事してきたのだ。どうやら、今はバラエティ番組の収録中で、どうしても身動きが取れないようだ。そう言われて、杏奈は特に気にすることなく、タクシーで海辺へと向かった。その女優の名前は山口瑠依(やまぐち るい)といい、睦月の友人から紹介された人だった。瑠依は芸能界に入って
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