どうやら自分が健吾と付き合いだしたことで、澪の敵意はさらにむき出しになったみたい。そう思うと杏奈は、心の中で鼻で笑った。自分の恋愛には、いつも「昔のよしみ」っていう存在がつきまとうようだ。前は自分の妹で、それを断ち切ったと思えば今度は相手の昔よしみが現れるようになった。本当に鬱陶しいったらありゃしない。一方、健吾が何も言わないのを見て、澪は眉間にしわを寄せた。「鈴木さん、これは私と健吾さんの仕事の話です。口を挟まないでください」すると、杏奈は黙ってしまい、そして、だんだん不愉快になってきた。一方それを聞いて、健吾は冷めた視線を上げると、澪の方を向いた。「プライベートな時間に仕事の話はしない主義なんだ。それに、来期の主力商品のデザインコンセプトは、お前たちデザイン部の仕事だろう。具体的なプランもなしに、俺に話を振らないでくれるかな?」「健吾さん……」澪は、健吾が人前で自分を咎めるなんて思ってもみなかった。彼女の目はみるみるうちに赤くなり、涙を浮かべて健吾を見つめた。まるで、ひどくいじめられたみたいな悲しそうな顔をして。でも健吾はそんな澪に気づかないふりをして、優しく杏奈の手を握った。「このあたりはもういいかな。ご飯、食べに行こうか」こうして杏奈は、健吾に手を引かれるままその場を離れた。片や、残された澪はきつく拳を握りしめ、二人の後ろ姿を目が赤くなるほど睨みつけていた。どうしてなの?健吾と先に知り合ったのは、自分のほうなのに。自分の兄なんて、健吾を助けるために命を落としたのに。なのにどうして健吾は自分のことを好きになってくれないの?よりにもよって、あんな何の取り柄もないバツイチの女なんかを。納得できない。絶対に、健吾を取り返してみせる。彼女がそうしていると、傍らにいた店長も澪の怒りを感じ取って、そっとその場を離れた。幸い、澪は怒りを爆発させることなく、そのまま店を出て行った。一方、店を出ると、健吾は杏奈の手をきゅっと握り、少し得意げに耳元でささやいた。「どうだ、俺は公私混同しない男だぞ。プライベートでは仕事のことなんて考えない!」そう言われて杏奈は、ちらりと健吾を見た。これって、自分のことを陰ながら指して言っているのだろう。デート中に仕事のことを考えてたのを、
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