「鈴木さん、橋本グループの社長とはいつからお付き合いされているんですか?」……そうは言っても、群がってきた記者の数は、それほど多くはなかったが、大半は今回の話題に乗じて、杏奈と健吾との関係について何か聞き出そうとしているみたいだった。橋本グループの御曹司には、長いこと恋愛がらみのニュースがなかった。だから、少しでも情報を得られれば記事になると思ったのだろう。「すみません、取材はお断りしています」それでも記者は杏奈の行く手を阻もうとした。杏奈は冷たい視線を向けて言った。「しつこいようでしたら、警察を呼びますよ」その言葉に、記者たちは足を止めた。こうして杏奈が橋本グループのビルに入っていくのを見届けると、記者の一人が鼻を鳴らした。「小さなアトリエのオーナーのくせに。橋本グループの御曹司に取り入って、成り上がっただけじゃないか。いい気なもんだな!」「まあ、仕方ないさ。バックがついているだけ、威勢はいいものだ!」……一方、杏奈がビルに入ると、ちょうど外出しようとしていた健吾とばったり会った。「杏奈さん、どうしたんだ?」そう言うと健吾の厳しい表情が、ふっと和らいだ。彼は足早に杏奈のもとへ歩み寄りながら、ドアの外でこそこそしている人影に気づいた。さっきの記者たちだ。「何かされたか?」杏奈は首を横に振った。「あなたに相談したいことがあって」健吾は彼女の手を取って、外へ向かった。「ちょうどこれから会食なんだ。あなたも一緒に来てくれ。移動しながら話そう」杏奈は断らず、健吾と一緒に車に乗り込んだ。例の記者たちは、健吾と杏奈が一緒に車に乗り込むところをカメラに収めた。だが、撮った写真を本社に送る前に、橋本グループの社員たちに気づかれてしまう。「失礼ですが、先ほどの写真を削除してください。応じていただけない場合、法的な措置を取らせていただきます」そう言われて記者たちは、返す言葉もなかった。一方、杏奈は健吾に続いて、黒いロールスロイスの後部座席に座った。「どんな会食なの?」「橋本グループの取引先との食事会だよ。簡単なものだから、あなたはただ食べて飲んでいればいい」健吾は杏奈の手を取り、指を絡ませた。そして、彼女の手のひらを指先でくすぐった。「俺に会いに来たのは、ネットで俺が取引
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