「早紀さんが犯人だという証拠は見つけられなかったわ。でも、彩乃さんが怪我をした日、早紀さんが彼女に会いに来たと言っていたの。それに、彩乃さんの怪我があなたに見破られた後、早紀さんは確かに少し興奮した様子でね。私のところにきて、自分は彩乃さんの代わりに主役を完璧にやり遂げられると言ってきたのよ」杏奈には、南が生徒一人ひとりを大切に思っていることが分かっていた。確かな証拠でもない限り、生徒のことを悪く考えたくないのだろう。しかし、主役の座を奪うために彩乃を傷つけたという早紀の動機はあまりにも明白で、南も疑わざるを得なかったのだ。杏奈は、南をなだめるように、その手の甲をぽんぽんと軽く叩いた。「先生、柳田さんに会わせてください」南はうなずくと、今度は心配そうな顔で杏奈を見た。「ネットのことは聞いているわ。あなたの性格は私がよく分かってる。嫉妬で真奈美をはね飛ばすなんて、絶対にありえないもの。早紀さんに会わせること以外に、私に手伝えることがあったら、なんでも言ってちょうだい」そう言われ杏奈は胸が熱くなった。「ありがとうございます、先生」そして、女子寮に着くと、杏奈と南は早紀を探しに中へ入った。健吾は寮の下で杏奈を待つことにした。早紀は荷造りをしているところだった。足音が聞こえると、彼女は誰が来たのか察したようだった。一瞬手が止まったが、すぐにまた何事もなかったかのように荷造りを続けた。南が二回ノックすると、早紀がドアを開けた。二人を見ても、彼女は少しも驚いた様子を見せなかった。「先生、鈴木さん」「こんにちは」杏奈は穏やかに微笑んだ。「私も山崎先生の生徒なの。だから先輩って呼んでくれていいわ」そう言われ、早紀は一瞬きょとんとした。自分は杏奈が真奈美をはねたと証言したことは、他の人は知らないかもしれないけど、杏奈本人はそれが嘘だと分かっているはずだ。それなのに、どうして杏奈は自分にこんな風に微笑みかけてこられるのだろう?先輩なんて呼ばせてどうするつもり?普通なら、いきなりビンタの一発でも食らわされるところじゃないの?ここに来る前、杏奈は南に、後で先に席を外してほしいと頼んでいた。早紀と二人きりで話がしたかったからだ。だから南は杏奈を部屋まで案内すると、用事があるからとすぐにその場を去った。
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