仕事がなくて気楽ではあった。でも杏奈がいないことで、健吾の心にはぽっかりと穴が開いていたようだった。彼はパソコンを開くと、素早くキーボードを叩いた。すると、画面には緑色の折れ線グラフが次々と表示された。これは裕一が手がけた、全ての事業の収益を示したものだ。思っていたよりも、かなり手広くやっているようだ。これほどの機密情報を見ることができたのは、逆に澪の協力のおかげだ。橋本グループの機密情報だと偽ったあの書類を裕一が信じ込み、容易く手を出してきたおかげで、逆に彼のパソコンに侵入するチャンスができたのだ。午前中、健吾はずっと裕一への対策を練るのに没頭していた。昼になり、洋介が用意した昼食を運んできた。すると健吾は、オフィスの外から漏れ聞こえてくる話し声を、かすかに耳にした。「午前中に京市からN市へ飛んだ飛行機、事故があったらしいわよ!」「聞いた話だと、機内に爆弾が仕掛けられていたみたいよ。空中で翼が吹き飛んで、コントロールを失った飛行機は、そのまま人のいない山に墜落したんだって。今、捜索隊が向かってるけど、残骸すら見つかるか怪しいものだわ」「飛行機に乗ってた人たち、たぶん誰も助からないでしょ……」「あんな高いところから落ちて、助かるわけないじゃない。一体どれだけの家族が不幸になったのかしら……」……健吾は、「墜落」や「事故」といった言葉をかすかに聞き取った。彼の胸は締め付けられ、食事を運んできた洋介に低い声で尋ねた。「外で話している墜落事故って、どういうことだ?」洋介はソファのそばに恭しく立った。「社長、本日午前8時に京市からN市へ向かっていた飛行機が、不慮の事故で墜落しました。このニュースは、もうネットで大きく報じられています」健吾は急いでパソコンを開き、ニュースを確認した。ニュースでは、まさにその事故を起こした飛行機について報道されていた。それを見た瞬間健吾は全身が凍り付いて、その瞬間、心臓が止まったかのように感じた。その飛行機は、まさしく杏奈が乗っていた便だったのだ。健吾は慌ててスマホを取り出し、杏奈に電話をかけた。すると、冷たい機械的な女性の声が、健吾の耳に流れ込んできた。「おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません。しば
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