だが、澪はとっくにその場を去り、自分の部屋に戻って荷物をまとめていた。健吾が問い詰めにくる前に、急いで橋本家を出ないと。その間、橋本家の寝室の優れた防音性のおかげで、杏奈は外の物音に気づくことはなかった。健吾が部屋に入ってきて、彼女はようやく彼が一度外に出ていたことに気がついた。「いつの間に外に出てたの?」杏奈は、手にしていたアルバムをもう半分以上めくっていた。アルバムを見るのがよほど楽しかったのか、彼女の瞳はきらきらと輝いていた。その笑顔は、まるで何も知らない少女のように、純真でとてもかわいらしかった。健吾は杏奈の隣に歩いていくと、そっと腰を下ろした。「そんなに楽しい?」彼は何気なくそう言うと、杏奈の手からアルバムを取ろうとした。でも、杏奈はそれを手で制した。杏奈は健吾が外で何をしていたのか、特に気にする様子もなく、人差し指でアルバムの端をぎゅっと掴んだ。「だめ!」杏奈は健吾の手をぱしんと叩くと、こてんと彼の肩に頭を乗せた。「すごく楽しい!あなたって、小さい頃すっごくかわいかったんだね」かわいい、か。自分に使う言葉じゃないだろ。そう思って、健吾は少し不機嫌そうな顔をした。杏奈はその表情に気づかず、ページをめくった。そして、くすくすと笑いながら、健吾にその写真を見せた。「これ見てよ。おばさんは女の子が欲しかったんじゃないかな?」健吾は写真に目を落とした。彼の表情は、もはや不機嫌どころではなくなり、一瞬にして険しく強張った。そこに写っているのは、5歳くらいの自分だった。健吾は子供の頃、まるで人形のように可愛らしかった。幼いながらも顔立ちがはっきりしていて、かわいさと格好よさをあわせ持っていた。香織は、そんな息子をおしゃれさせるのが大好きで、男の子の服だけでなく、女の子の服も着せていたのだ。この写真は、香織が彼にプリンセスのドレスを着せた時のものだった。頭にはウィッグまで被せられ、その上にはティアラがきらめいているのだ。その姿は、まるでテーマパークの小さなプリンセスそのものだ。かわいらしくて、不思議と似合っていた。杏奈は、この写真が最高にかわいいと思った。もし、将来自分と健吾の間に女の子が生まれたら、こんなふうにかわいくなるのかな、とまで想像してしまうくらいだった。う
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