一方佳乃も杏奈を引き止めなかった。そこへ向かうのに2時間の道のりだったが、杏奈には、とてつもなく長く感じられた。彼女は顔面蒼白で、体に力が入らず、オード州で車を降りた時、とうとう立っていられなくなるほどだった。もしボディーガードが支えていなかったら、そのまま地面に倒れていたかもしれない。再び、この馴染みのない街に戻って、ある店の前で、杏奈は見覚えのある姿を見かけた。それは、あの日、健吾が自分を裏山から逃がしてくれた時に、助けてくれた人だった。健吾と彼の会話から察するに、二人はきっと親友なのだろう。杏奈はボディーガードの手を振り払い、フラフラしながらコーリンの腕を掴んだ。コーリンは驚いて振り返った。杏奈の姿を見ると、「どうしてあなたがここにいるんですか?」と目を見開いた。「健吾さんどこですか?」杏奈は、コーリンなら佳乃とは違うことを言ってくれるんじゃないかと期待した。しかし、コーリンは彼女を見るうちにどんどん表情を曇らせ、同情のこもった眼差しを向けた。「鈴木さん、健吾は……」「死んでないんでしょう?病院にいますね?お願い、彼に会わせてください!」そう言われて杏奈の目からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。そして、胸のうちが痛んで息が詰まるほどになっていた。その様子を見て、大の男であるコーリンも、思わず目頭が熱くなった。彼は杏奈に頭を下げた。「ごめんなさい。俺が健吾を守りきれなかったからです。柴田に隙を与えてしまい、あいつは狂っています!それで健吾を道連れに……」それを聞いて杏奈は、全身から力が抜けていくのを感じた。彼女はコーリンの手を離し、数歩後ずさった。「信じられません……信じられるわけありません……」ついこの間まで、健吾は優しく話しかけてくれて、自分のために全てを準備してくれたのに。その笑顔も、抱きしめられた時の温もりも、まだはっきりと覚えている。彼は言った。「すぐに戻るから、待っていて」と。だから、健吾が死ぬはずがない。そう思って杏奈は再びコーリンの腕を掴み、「彼に会わせてください!」と叫んだ。そこまで言われるとコーリンも仕方なく、健吾が事故に遭った場所へ杏奈を連れて行った。そこのまっすぐな道路の脇は、木々が焼け焦げて黒い土がむき出しになっていた。地面には血
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