All Chapters of 独立した末っ子が執愛属性持ち『魔王』になって帰って来た: Chapter 31 - Chapter 40

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【第3章・第4話】ダンジョン攻略(レオノーラ・談)

 ……『冒険』って、何だっけ? そんな事を考える日が来るとは数十分前までは全然思ってもいなかった。未婚のまま五人の子持ちになった頃よりも深く考えてしまうのは、全て目の前の光景のせいだ。 ——四人で未踏破ダンジョンの攻略に挑もうと、『深淵の森』にある古代遺跡の入り口から揃って潜った。 一、二階層目はもう聖獣達と攻略済みだった為敵が少なく、出ても何処にでもいる様なクマネズミくらいなものだったおかげで比較的安全に通過する事が出来た。 完全なる未踏破エリアである三階層目まで潜ったと同時にアイシャが私と手を繋ぎ、周囲にドーム型の結界を展開したのを合図にして、カラミタとリトスの二人が先陣を切って走り始めた。行動開始と同時に彼らがおこなった行為はもう一方的な殺戮としか言えず、敵が襲い掛かってくる隙も無い。無慈悲に、一方的に、先んじて。こちらの存在に気が付く隙すら与えずに次々と敵が撃破されていく。前衛を担っているカラミタが鉤爪の如く鋭い爪で敵を切り裂き、闘舞の様な動きの蹴り技で頭部を破壊し、竜を連想させる尻尾の長さを自在に変化させて心臓を突き刺して息の根を止めて複数体を同時に仕留める。後衛であるリトスは風属性や雷属性の魔法を中心に使いこなし、天井や壁に一切傷を残さず、最適かつ最低限の火力で遠方の敵を撃破していく。きちんとカラミタの分も残るように計算しつつ倒している辺りに弟への気遣いが見て取れた。 オーク、オーガどころかハイエナにも似たノールまでもがバッタバタと死んでいく。聖獣達との戦闘も凄いなと思って感心しながら見守っていたが、多少の手出しをする余地はあった。(今思うと、リトスみたいに残してくれていただけかも……) でも今は皆無だ。何もする事がない。遺跡が故に不安定なはずの足元はアイシャが修復魔法で綺麗に舗装してくれてまでいる。もう色々と意味不明だ。『子供達にとって“ダンジョン”という場所は安全か否かを知る為に、自分でも挑戦する』という当初の目的が完全に破綻している。『いいのか?これで』とは思うも……「ヒャッハー!」と面白い叫び声をあげながら敵を撃滅していくリアンや、演舞の様な動きで魔物を切り裂き続けるカラミタの姿を見ていると、『子供達が楽しければいいのかな?』と思えてくるんだから、親心とは不思議なものだ。(子供らだけじゃなく、血飛沫までもが空中に舞い踊る光景に対
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【第3章・第5話】壁画に書かれた物語・前編

 恐る恐るといった感じで、最奥にあった部屋の前に四人で立つと、室内の四方に設置されていたらしき魔導具が自動的に明かりを灯し始めた。光属性の魔法を付与された魔水晶を使用でもしているのか、蝋燭どころか松明よりもずっと明るく、その四ヶ所だけで部屋の全貌がほぼほぼわかる程度には明るい。「……罠は、無いみたいだね。隠し扉とかもなさそうな感じだよ」 魔法による索敵や罠の有無を確認し終えたアイシャが我先にと前に進む。がらんとした室内にはこれといって何もなく、四人共少し拍子抜けしてしまった。「この部屋には床面以外の全方向に壁画があるだけ、みたいだね」 そう言ってカラミタが周囲の壁をぐるりと見渡す。レオノーラも釣られて見上げてみると、天井がかなり高く、天井画には流星や瞬く星々、他には太陽と月が彫られていた。石製の壁にはカラミタが告げた通りに巨大な壁画と、古代文字がそこかしこに書かれている。「世界樹が描かれているね。あっちには……男女の絵、かな?」 「ウチらは他のを見た訳じゃないけど、別のダンジョンで発見されたのと同一の物っぽいな、これは」 「そうだね。報告書に書かれていた下手くそな絵や文字と、それなりには似てるもんな」とカラミタもアイシャに同意した。(『下手くそ』って……辛辣だなぁ) アイシャはそう口にしかけたが、心の中だけに留めた。カラミタ所有の『猫被り』用の猫が何匹か家出したみたいだが本人は気にしていない様だ。 絵の隣に彫られている古代文字は経年劣化のせいなのか少し読み取りにくい。だけど一文字ずつ慎重に進めていけばどうにか読み解けそうだなとレオノーラは思った。「——おい、こっちも見てみろよ」とリトスに言われ、別の壁画を見上げていた彼の元に三人が集まる。するとリトスが立っていた壁には、一面に『世界の終焉』でも表現したかの様な悲惨な光景と、その左右それぞれに泣き叫ぶ男と女の絵が描かれていた。「何だろう?これ。……何だって、隠されていた部屋に、こんな絵が?」 口元に手を当ててレオノーラがぽつりと呟く。他のダンジョンと同じく、此処も先代魔王が討伐される前まではずっと閉鎖状態だった可能性が非常に高く、大事に大事に保管されていたらしき場所でもあるので、この絵や文字にはきっと深い意味がある様な気がした。「……書かれている文章は、『物語』っぽい、ね」 壁画に近づき
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【第3章・第6話】壁画に書かれた物語・後編

「——えっと、つまりは、だ。これが正しい『伝承』なら、この世界は一回滅亡してるって事?」 「ただの妄想じゃないんだったら、そういう事になるよな」と、アイシャの推測にリトスが言葉を添えた。 「小説めいた空想を、わざわざ何カ所ものダンジョンの最奥にある壁に書いて、厳重に保管はしないんじゃないかなぁ。魔王討伐前までは、この壁画の部屋は、サーチ系の魔法ですら感知出来ていなかったみたいなんだし」 「うん。レラの言う通り、間違いなく、これはこの星の歴史の一部だよ」と、いつの間にかレオノーラを膝の上に座らせてご満悦状態にあるカラミタが頷いた。 「それって、魔族達が『継承してる記憶』のおかげで得た確信ってやつ?」 アイシャに訊かれ、「あぁ」とカラミタが返す。 真剣な雰囲気の中。彼は腕の中に居るレオノーラをぎゅっと強めに抱いて柔らかな感触を存分に堪能している。その事にリトスもアイシャも気が付いてはいたが、慣れたものでさらりと流した。「なら余計に、この続きもきっちり翻訳して、報告しねぇとな」 「そうだね」 リトスの言葉にレオノーラが同意すると、また彼らは壁画に書かれている文章の続きを読み解き始めた。       ◇ 死の星となった世界の中で、辛うじて残った大陸の中央部に女の魂が降り立った。 女の魂は大地に根を下ろし、小さな芽吹きは瞬く間に大樹と化し—— 祈りと共に『世界樹』へと姿を変えた。 大陸の何処からでも見える程に壮大で巨大な世界樹を起点とし、大地は息を吹き返した。 以前とは様変わりした大地には新たな植物も無数に根付き、多種多様な容姿の『新たな器』の中には浮遊したままになっていた数多の魂が宿った。 『完全なる復活』は無理でも、新たな『生』を女は皆々に返してあげたのだ。 その光景は、無数の流星が大地に降り注ぐ様だった。   この日を境に世界樹は『再生』の象徴となった。 生み、育み、見守る『全ての母』の誕生である。 母なる者へ感謝を捧げ、力ある者が聖獣となり、世界樹を護ろう。 次世代へと引き継がれるまで、永遠に。 二度と誰にも、傷付けられぬ様に。       ◇「——なるほどねぇ。『世界樹・ユグドラシル』は、こうして生まれたって訳か」 翻訳した文章を紙に書き終えたアイシャがペンを置き、そう口にしながら息を吐き出した。「これらの絵か
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【第3章・第7話】推察(レオノーラ・談)

 スラムで生まれ育ち、物心ついた時にはもう私に親はいなかった。顔も名前も、抱き上げてくれたであろう腕の温もりさえも記憶に無く、生まれた日だって知らない。着古したブカブカのボロ服を纏い、汚泥を啜り、痩せたネズミを齧って生きていた頃さえある自分が、カラミタ達が思うような立場の者だとは到底思えない。 だけども……意思疎通は出来ずとも、聖獣達に日々助けられ、世界樹の麓での生活を許されているのは確かな事実だ。 故に完全には否定出来ない。 しかも魔力量が人一倍多く、一人だけでも転移魔法が使える。本来ならば魔導師を複数人数集めるか、各地に点在している魔力溜まりを活用した転移用の魔導具を使わねば自在には操れぬ程の高度な魔法であるにも関わらずだ。 だからって壁画で語られていた『世界樹』となった女性の様に新たな生命の器を生み出せる気はしない。育て、見守れる人数だって今の五人が限界だ。とてもじゃないが『後継者』的な立ち位置に自分が置かれているとは到底思えず、ただただ唸り声をあげてしまった。「そんなに気にする必要はないんじゃない?別に、誰かから『後を継げ』とか、『何かしろ』って言われた訳じゃないんだし、そもそも確定事項でもないんだから」「そう、だよね」 カラミタにそう言われ、ほっと息を吐いた。 確かにその通りだ。突如すんごいヒトから『次世代はお前』って告げられたでもなく、何かしらの天啓があったとかでもないのだ。何も深く考える必要なんか無いのかとすぐに納得した。 ——でも、だ。 『魔族』が『黒珊瑚』の生み出した者である事が妙に引っ掛かる。深海の奥底で『黒珊瑚』となった『男』が『世界樹』と化した『女』の存在に気が付き、恋求めて少しでも傍にと願う気持ちが溢れ出たモノが『魔族』なのでは?と仮定すると、『魔族』は『世界樹』により近い存在に焦がれてしまってもおかしくはないんじゃないだろうか。そして今現在最も世界樹に近い存在は?となると『私』である可能性は非常に高い。(……って事は、カラミタの『恋心』って、やっぱり刷り込みのせいなのでは?) その方が腑に落ちるし、しっくりくる。五人育てたうち、カラミタだけが私に恋愛感情を抱くという事自体がそもそも可笑しな話なのだ。だけど『魔族だったから』だともなれば、『成る程ね!』と容易く納得出来た。「……何考えてるの?」とカラミタが私の顔を
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【第3章・第8話】予想外の結果(レオノーラ・談)

 いや、無い無い無い!『既にもう御年百八十歳の超御高齢なお婆ちゃんだったぞ(テヘッ)』なんて冗談じゃない。もしこの鑑定結果が本当に正しいとすると、私は『鑑定』の結果的にも『ヒューマ族』で間違いないらしいから、普通ならもうとっくに死んじゃっているはずじゃないか。最高齢寿命がせいぜい百歳の種族で、存分に世界樹の恩恵を受けたとはいえ、流石に数字を盛り過ぎていると思いたい。 何よりも一番『有り得ない』と思うのは、今までずっと、百歳もサバを読んでしまっていた事実の方だ。 随分前にしたセリンとの会話で何となく自分の推定年齢を叩き出し、『いつまでも若いフリをしている痛々しい人』にならぬ様、ちょっと多めに見積もって『今の私は八十歳くらい』だと思い続けてきたのに、百年もサバを読んでいたとか!恥ずかし過ぎて死んでしまいそうだ。 そのせいで、身長、体重、スリーサイズなどの情報も脳裏に浮かんだのに、記憶にはちゃんと残ってはいるけど読み逃したみたいな状態になってしまっている。『魔王・カラミタの嫁』とも浮かんだ気がするが、こっちは自分から見なかった事にした。「どうだった?何か新しい事がわかった?」 カラミタにそう訊かれたが、唸り声しか返せない。すると察したみたいにアイシャが「あ、もしかして、思ったよりも年齢いってたとか?」と大正解な指摘をされてしまった。「え?何?何歳だったんだ?母さん」とリトスが無邪気な顔で訊いてくる。大きいくせに、表情も尻尾もケモミミも可愛いけど、何ともまあ容赦無い問い掛けだ。「……百、八十、歳……だった、みたい」 視線を三人から逸らしたまま、ボソッと呟く。 すると「あ、思ったより上だったんだね」とカラミタまで無遠慮に私の心を抉った。「一人きりの時期に沢山寝ちゃってて、年月の感覚があやふやだったんだね」 そう言って、カラミタに頭を撫でられてしまった。全くもってその通りなのだけど、子供に子供扱いされているみたいでちょっと拗ねてしまいそうだ。「でも百歳程度なんて誤差の範囲だろ。別に気にする必要なくね?」 「だよねぇ、リトスの言う通り、誤差誤差。ちゃんとした年齢わかって良かったじゃん」 「そうだよ。レラが可愛いって事実は不動なままなんだし」 三人共揃いも揃って御長寿種族なせいか全然私の気持ちをわかってくれていない。しかもさらりとカラミタが私を褒めて
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【第3章・第9話】ダンジョンの中ではしちゃいけない事(レオノーラ・談)

 ダンジョンの隠し部屋という異質な場所でカラミタがニタリと笑っている。地上よりはどうしたって光源が少ないせいか正直ちょっと怖く感じた。多分、慣れ親しんだ雰囲気とは随分と違うせいもあるだろう。私の名前を呼んで、脚や体にしがみついて、可愛く甘えてくれていた頃が懐かしくなってしまう。「……えっと」 この状況をどうにかしたくて声を発したまではいいが、続きの言葉が思いつかない。何か、何かないかと必死に考え、「——私達も、家に戻ろうか?」の一言をなんとか捻り出した。「えぇー」と不満そうにしながら私の頬をキュッと押す。そのせいで変な顔になったと思うのだが、カラミタは嬉しそうに額にキスしてきた。照れてしまい、カッと顔が赤くなった気がする。こっちは全然耐性が無いんだからやめて欲しい。「もうちょっとだけ、此処に居よう?……どうせ誰も来ないんだし、さ」 カラミタの言う通り、まだしばらくの間は此処には誰も来ないだろう。街に戻ったリトスかアイシャが新ダンジョンの発見報告をし、冒険者ギルドをあげての探索準備を終えてからだろうから、随分先の話になりそうだ。今後はきっと近傍の町(とは言っても、相当距離があるけど)が今よりは活気付くに違いない。(でも、もう攻略済みでもあるから、冒険者の人達はガッカリだろうなぁ) 古代遺跡系のダンジョンは財宝の詰まった部屋以外での実入りが少ないから、圧倒的に人気なのは道中で鉱石などの採取も出来る洞窟系だって、買い物目的で町中を歩いている時に何となく聞いた事がある。遺跡系は魔物のリポップ的な現象も無いせいで色々な魔物素材の入手にも向いていないから、冒険者達には一層魅力が半減してしまうそうだ。 逆に古代文明などの歴史研究者達に人気なのは圧倒的に遺跡の方なので、きっとここにも人々が訪れる様になるだろう。 ——何て事を考えているうちに、いつの間にか敷物の上に寄り掛かれそうな程に大きなクッションがドドンッと出現していた。半端ない存在感だ。どうやらカラミタが収納魔法が付与された鞄の中から引っ張り出したようだ。「……まさか、いつも持ち歩いているの?」「流石に違うよ。帰省前に、ここ数年ボクが使わせてもらっていた部屋の物を全部回収しておいたから、それの一部さ」 「ぜ、全部?何でまた。この先、まだ街に戻る予定があるんだよね?」 「そりゃあるけど、部屋に私物を放
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【第3章・第10話】チョロイン(レオノーラ・談)

 十分程ぼんやりとしているうちに何とか持ち直してきた。 思考回路もまぁまぁ正常だと思う。ただ、またあんな行為をこの先何度もされるのかと思うと気が重くなる。無いものとしようと蓋をして目を背けただけで、奥の奥ではまだ燻っている熱は軽い刺激でも戻ってきてしまいそうでちょっと怖い。挙式をあげるまではと『最後まで』からだけ逃げるんじゃなく、この行為もやめてもらうのが一番だろう。『親愛』と『恋情』の履き違えや、壁画の『男』が残した無念からくる刷り込みか何かでカラミタの未来を潰したくない。 この先、本当に愛せる人と出会った時に、今のこの行為を後悔して欲しくもないから。「大丈夫?もう動けそう?」 敷物以外の荷物は片付き、服装も整え終わった。さっきまで履いていたズボンもちゃんと違う物に着替え終わったし(カラの私物からまた借りた)、あとは敷物さえ鞄に仕舞えばダンジョンからいつ出ても大丈夫そうだ。「うん」と返事をし、まだ少し力の入らぬ体を両手で支えながらその場で立とうとした時、ふと左手の薬指に目がいった。黒い物がぽつんとある事が前にも気になった箇所だ。「……あれ?形状が変わってる」 立ち上がり、まじまじと指を見る。 以前は黒子か瘡蓋みたいなものがただ少しあるだけだったはずなのに、何というか、今は種子から蔓か芽が少しだけ出てきたみたいな雰囲気に変わっていた。「どうかした?」 「あ、えっとね、指に何かあるの」 じっと指を観察している事が気になったのか、カラミタも一緒になって私の指を見始めた。「あぁ、『黒珊瑚の欠片』か。それがどうかした?」「え?コレが何か、カラは知ってるの?」 「そりゃね。誰でも知ってると思うけど。——あ。そっか、『魔族なら』の話だったな。レラ達が知るはずがないのか」とカラミタが言い、失念していたなといった表情になった。「えっとね、それはね、『愛情の種』みたいなものなんだ」「『愛』……じょ?」 「ちなみにね、本当に『黒珊瑚』そのものが埋まっているって訳じゃなく、ただ黒いからそう呼称しているだけだよ」と追加で説明しつつ私の手を掴み、軽く腰を屈めて私の左手の薬指にバードキスをする。貴族とかなら挨拶みたいな行為なんだろうけど、こちとら生粋の平民なので勘弁して下さい。どうしようもなく口元が戦慄くじゃないか。 「今にして思うと、その『欠片』は壁画で
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【最終章・第1話】ふざけた要望

 一ヶ月程前。 『魔族』であるカラミタが発起人となり、三年近い準備期間を経て、世界的な規模で有志を募っての『魔王討伐隊』が結成された。 彼の実父でもあった『前・魔王』が根城にしていた外界の古代遺跡にはカラミタとその義兄達を合わせた五人で侵入。血縁のある家族側でも末っ子であったカラミタによる実父への下剋上に、納得の出来ない実兄姉達などの妨害がありつつも、彼らは圧倒的な実力差で見事勝利を果たした。 その間、根城の周辺に生息していた魔王の配下でもあった魔物達は、シルト王国・王太子殿下の婚約者でもあるラウエル・アルカナ・モルジャーヌ公爵を筆頭とした各国の実力者、高ランク冒険者や騎士団などに所属している者達が対応。根城までの道中ではそれぞれの国や樹界に住む全種族の中から選抜された者達で構成した大規模な討伐隊の協力も得て、『世界的な協力を得ての魔王討伐と次世代への交代劇』という体を見事に保った。 討伐隊は早々に外界から一旦は完全撤退し、『魔族である』という理由だけでの無差別的な殺生を徹底して回避。その甲斐あってか今回の騒動に対して他の魔族からの批判や抵抗も無く、今では樹界と外界の境界線付近にて交易を開始している者達も出始めているそうだ。       ◇ ——時はカラミタが三年ぶりに帰省した日に遡る。 討伐に関して、各国や部隊等からの報告書などがほぼ集まったのを機として、五人兄弟の中でカラミタだけが一足早く実家への帰省を果たした。そのせいで冒険者ギルドの一角にある作業部屋ではアイシャが不満そうな顔をしている。「いいなぁぁぁぁ、カラだけ先に帰れてぇぇ」 大量の書類や製作途中の魔導具、設計図などが雑多に置かれたままになっている机に突っ伏し、アイシャが大きな声で文句を言った。 四男であるアイシャは八年間、長男であるセリンに至っては十五年間も帰省出来ていないので、心底カラミタが羨ましくてしょうがないみたいだ。 五人兄弟のうち、誰か一人だけが帰省出来るとかいう状況だったのならアイシャも迷わず挙手した所だったが、残念ながらそういう訳でもなかったので、今回の帰省に同行すら出来なかった。セリンは単純に普段の仕事量のせいで手が空かず、テオドールは魔王討伐の一件のせいで貴族間とのやり取りにまだ追われ、リトスとアイシャも遠征の後処理などが残っているせいで引き続き帰れな
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【最終章・第2話】盗難事件

 アイシャとリトスがレオノーラ達と共にダンジョンに潜った日から一週間程経ったある日の事。  レオノーラとカラミタの結婚式の準備に日々尽力しているアイシャの逆鱗に触れる出来事が突如発生した。「——ふっざけんなし!」 作業室兼執務室でもある彼の部屋が震えんばかりの大声が響いた。そのせいで、同室内に居る緊急報告を伝えに来た男の体がビクッと跳ねる。美形の多いエルフ族であり、年若い事で種族特性的にまだまだ愛らしい外見をした彼が上げた大声に、かなり驚いてしまったみたいだ。「あと七週間しかないのに、何だってこのタイミングで!」 髪の毛を無造作に掻きむしり、アイシャが定位置でもある椅子にドサッと体を預けた。「すぐに被害届を警護本部に出して、盗難品を取り戻して来て。縁起が悪いからもう使えないけど、そのままって訳にもいかないからね」 「で、ですが、相手は伯爵家ですよ?しかも隣国の」 「テオドールに同行を頼めば良いよ。事情を話せば、他の要件を全て投げ出してでも絶対について来てくれるから。今ならまだ裏でトレーニング中だろうし、まずは行ってみて」 動揺する男性に対してアイシャがそう言うと、彼は頷き応えて、すぐに部屋を後にした。 その様子を見送り、アイシャが先程の報告内容を振り返りながら、魔導具でもある羊皮紙を自分の方へ引き寄せる。そしてインクの補充の必要が無い羽ペンを手に取った。が、何も書けずに手が止まる。「……どうしよぉぉ。カラに、何て報告したら良いのさぁ」 先程の報告によると、現在アイシャを悩ませる羽目になっている『盗難事件』は本日の午前中に起こったそうだ。 シルト王国内にある有名な高級衣装店に隣国の伯爵令嬢が来店した。 その店は半年先まで常に予約で埋まっている程の人気で、急な依頼は王族か、店主とは親友関係にあるアイシャからでもないと絶対に引き受けない事でも有名な店である。その事がアイシャにとってはちょっとした自慢でもあり、技術の高さとセンスの良さもあって、レオノーラとカラミタの結婚式衣装を二年も前から依頼していた。 五人兄弟全員で意見を出し合い、練りに練ったデザイン案を店主の腕で現実的な物へと落とし込み、ようやく完成した期待と待望の逸品が店内の作業部屋に飾られていたらしいのだが、問題の伯爵令嬢がそのドレスに一目惚れをして持って行ってしまったそうだ。 そ
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【最終章・第3話】贈り物

 翌日の早朝。 レオノーラが目を覚ますと、今日も、背後からギュッと『拘束』としか言い様のない程の腕と脚の回し方をカラミタからされていた。子供達が家を出てはいても部屋は全てちゃんと残しているし、不定期ではあるものの掃除もしてあるのだが、最近ではずっと『ボクらはもう夫婦なんだから』とレオノーラの狭いベッドで一緒に寝たがるのだから困ったものだ。(……今日も今日とて、動けないっ) 起きたからには着替えや朝食の用意などをしたいのだが、まだ薄暗い部屋の中で全然動けないままだ。体格差のせいもあってちっとも抜け出せない。『困ったなぁ』とは思いつつも、レオノーラの口元は嬉しそうにふにゃりと緩んでいる。本音では“子供”に甘えてもらえている事が嬉しいのだろう。……だがすぐに、レオノーラの目が段々と見開かれ始めた。お尻の辺りに違和感を抱いたからだ。「おはよう、レラァ♡」 レオノーラの耳元でカラミタが甘い甘い声で囁いた。吐息混じりだったものだから、彼女の体がカラミタの腕の中でビクッと跳ねる。そのせいでカラミタのモノが彼女の体で少し擦れ、一層甘い声を彼がこぼした。「そんなに動いたらもっと大きくなっちゃうよ?——あ、もしかして、その方が嬉しいとか?」「ち、違っ」 即座に否定はしたが体の方は正直だ。きゅんっと腹の奥が疼き、じわりとショーツが濡れた。「……ねぇ、このままもう挿れちゃう?朝だってだけで自然と勃っちゃったモノだけど、挿れるには充分な硬さだよ♡」 「そんな事はしないよ⁉︎」と咄嗟に返したレオノーラの声は焦りのせいか裏返っている。 「残念だなぁ。もうほぼ下着みたいな寝衣だから、めちゃくちゃ色っぽいのに」 熱っぽい声を耳元で吐き出しながら、レオノーラの着ている寝衣にカラミタが体を擦り付ける。彼が言う様に、彼女が今着ている寝衣は、着替えの時に『ここまでくると、コレを着る意味はあるんだろうか?』と思った程に布面積が狭く、随分と肌が透けて見えている。身長の割に大きめな胸を支えているものもなく、穿いているショーツもレースだけで作られた物のせいで双丘のラインが丸わかりだ。「好きで着ている訳じゃ……」「まぁそうだね、ボクが着せたんだもんね。可愛くおねだりしたら何でも着てくれる優しいレラがだぁい好きだよ♡」「他の寝衣がもう無いからなだけだもん」 ちょっと拗ねた感じの声も可愛
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