جميع فصول : الفصل -الفصل 50

52 فصول

【最終章・第4話】身分証

 レオノーラとカラミタの結婚式まで残り二週間に迫ってきた。そんな中でも相変わらずカラミタはレオノーラを愛でてばかりで、婚前のバタバタした感じは微塵も無い。それもこれも、全て自分が手出し出来る範囲の準備に関してはキッチリ終わらせてから帰省したからである。「——あ、そうだ。ねぇねぇ、レラァ。挙式の日が近づいてきたし、そろそろ兄さん達が拠点にしている街に戻ろうかと思うんだけど、レラはどう思う?」「…………っ」 甘い声で突如訊かれ、『今、訊く?』とでも言いたげな瞳をしながら、レオノーラがゆっくり振り返る。彼女は現在、息も絶え絶えといった様子で、頬も赤く、瞳もどこか虚ろだ。小さな体をビクビクと小刻みに震わせ、もじもじと脚を擦り寄せる仕草は、まるでカラミタを誘っている様でもある。そんな姿の彼女を見て、カラミタがゾクッと体を歓喜で震わせた。この表情が見たかったのだと、彼はとても満足気だ。「あぁぁぁっ。イキたいのにイケないから苦しいねぇ、辛いねぇ。あ、でもね、あと二週間もしたら、たっぷりと、ココ、弄ってあげられるよ?楽しみだねぇ……奥とか、敏感なところを硬ったいのでスリスリゴリゴリされたら、一気に飛んじゃうかもね」 自分の膝の上に座るレオノーラの脚の間にそっと指を添え、下着越しにくりくりっと優しく撫でた。レースだけで作られた卑猥なショーツ越しであろうが、小さな肉芽が快楽を欲して勃起しているのがわかり、カラミタの顔が卑猥にニヤける。 奥からとろとろと愛液が溢れ出ているせいで、濡れたショーツがずっと気持ち悪いのだが、カラミタの指先がその上で動くと、すぐに『気持ちいい』と思ってしまうのが何だか悔しい。なのに嬉しそうな顔をされると、胎の奥から嬉しくなってしまい、レオノーラは随分と複雑な心境の様だ。(すっかり絆されるっ) そんなヌルい言葉ではなく、もう完全に『調教済みである』と言った方が正しいくらいの状況なのだが、そういった単語をそもそも知らない為、レオノーラはそのくらいの感覚で現状を受け止めているみたいだ。「……あんまり弄るとイッちゃうかもだから、今日もこのくらいにしておこうか」 すっと指先の熱が遠退き、ホッとするよりも先に切なくなった。だが『今日も根比べには勝てたぞ』と、どうにかこうにか気持ちを切り替えていく。 着崩れ過ぎて、もう腕や足首に引っかかっているだけの状
اقرأ المزيد

【最終章・第5話】聖獣の同行

 レオノーラの長い人生の中で初めて得た身分証が無事に完成し、彼らはもう午後にはセリン達が拠点にしている『シルト王国』に向かう事を決めた。身分証が手に入ったのだ、折角なので使ってみたいという気持ち半分。残りは『子供達に会いたい』だけじゃなく、『聖獣達の見せ物になるのは恥ずかしいから』も理由の一つであった。(普段の生活を見られる事は全然構わないけど、流石に、カラとのアレは……) ちょっとそんな事を考えるだけでもじわりと体が熱くなってしまう。見られているかもと思うだけで感じてしまうとかじゃなくて、純粋にひたすら恥ずかしい。 流石に聖獣達も空気を読んでいてそこまでは観察されていないとは知らないレオノーラが顔を真っ赤にしたまま荷造りをしていると、「——そっちの準備はどう?」とカラミタが雑多に荷物の入る籠を抱えながらリビングに戻って来た。「もうすぐ終わる、かな?」 「『かな?』って」と言い、カラミタが笑う。 「だ、だって、泊まりでの外出なんかこれが初めてみたいなものだし、何を持っていけばいいとか、全然わからないから」 「身一つで大丈夫だよ、足りない物は買えばいい。あ、お金の心配はしないでね。兄さん達もボクも、討伐とかでかなりの額の報奨金をもらっているからさ」 そうは言われても、『……現状でも沢山物をもらい過ぎているから、これ以上は流石に』とどうしたって考えてしまう。“子供”に出させてしまうのも、“母親”としてはどうしたって気になるし、足りないからと向こうで買って、戻って来た時に『それらをどこに仕舞えと?』と自室の小さなクローゼットのサイズを頭に浮かべながらレオノーラは思った。「次に家に戻って来る時は、レラのクローゼットにも鞄みたいに収納魔法か空間系の魔法を付与しようか。それか将来の為にも家の増設をしてもいいかもね!」 いつか生まれるであろう自分達の子供の事を考えつつ、カラミタが提案する。だがレオノーラの方には、そういった様子は全くなく、「そうだね、それもありかも」と普通に返した。残念ながらカラミタの言葉の意図は全然伝わらなかったみたいだ。       ◇ 庭仕事や部屋の管理などはゴーレム達に全て任せ、『出発前に世界樹を見納めしておこう』という話になり、レオノーラとカラミタが小さな鞄を持って外に出る。すると—— 何故か家の前に二体の聖獣達がドンッと座り
اقرأ المزيد

【最終章・第6話】優越感

 お互いを補いつつ発動させた転移魔法により、数秒後にはもう、シルト王国の首都であるラウシュベルの主要な門から程近い地点に到着した。 街を取り囲む高い外壁や守衛達が守る門の近くではありながらも、木々などによる物陰が多いおかげで、転移してきた者が居る事に気付く者はない。 本来ならば転移魔法は気軽に使える様な魔法ではない。だが、魔力の豊富さからそれをメインの移動手段にしているレオノーラの為に、カラミタが事前調査しておいた最適な出現地点である。レオノーラの為ならば何だってする彼の行動に抜かりは無かった。 レオノーラは既に着ているローブのフードを、聖獣達ごと目深く被っているせいで、頭のラインが歪な形になっている。長年使い倒した拾い物のローブではなく、子供達から贈ってもらった物だ。折角の洒落たデザインなのに、これでは色々と台無しだ。  ——そんな姿のまま、そっと物陰から顔を覗かせて周囲の様子を伺った。流石は城下町に繋がる一番大きな門だ。行き交う人が多いせいで少し尻込みしてしまう。「ほら、行くよ」 カラミタに手を引かれ、「あ、うん」と返しつつレオノーラが彼の後に続いた。 彼はフードを被るどころか、『魔族』である事を隠す魔導具すら身に付けずに堂々としている。だからか、すれ違う人々が次々に好奇の目を二人に向けてくる。だがその視線に恐怖や怒りなどは殆ど無く、すっかり『魔族』は『畏怖の対象』と言うよりも『新たな隣人』という地位を得始めているのだなとレオノーラは体感した。「……すごいね。以前とは、『魔族』に対する認識が全然違う」「あぁ、兄さん達が四方八方色々と手を打ってくれたからね。有能な商人達からは軒並み『賢い』とか『互いにとって有益な種族である』ってじわじわ広がっていっているし、『魔王の討伐』の一件を演劇にして上演したりもして、少なくとも『種族単位で害意ある存在』じゃない事をアピールし続けているんだ」(きっと、アイシャの考えだ!)「な!何それ!私も観たいんですけど!」 「盛りに盛ってるから、ダァメ」と言いつつ振り返り、カラミタがレオノーラの頭をぐりっと撫でた。余程恥ずかしいのか、ちょっと頬が赤い。自分が舞台に立っている訳ではないのだが、舞台向けに随分と崇高な目的の為に先代の“魔王”を討伐したみたいに語られているから、どうにも見るに耐えないみたいだ。「そっか
اقرأ المزيد

【最終章・第7話】デート(レオノーラ・談)

 『デート』は、私の中では『好意を持っている者同士が一緒に出掛ける事』って認識だ。だから最初はすごく身構えていたのだけど、いざ始まってみると案外いつも通りで、正直少し拍子抜けしてしまった。(街の中の見応えがすごくて、もうどこから回ればいいのか迷うくらいだし……むしろこれくらいの方が良かったのかも。初めて来た街なのに、『デート』なんだって意識し過ぎて楽しめないなんて勿体ないもんね) この街は各国の中でも最上位に当たる広さだ。一日で観光ポイントの全てを巡るなんて現実的じゃない。だからまずは手近な所から見ていこうと決め、焼き串やサンドイッチを露店で買って半分こにしたり、雑貨や装飾品を売っている店を見て回ったりした。 その間、いつもの様に手を繋ぐのはともかく、周囲の状況次第では何度も縦抱きされたりもする。人通りが多いから逸れない為だと分かってはいるけれど、一応『大人』としてはやっぱり少し気恥ずかしい。これでは『(書類上の)妻』というより『子供』扱いされている気がしなくもない。 それでも、距離が近い時ほどカラミタが嬉しそうにしているのを見ると、結局何も言えなくなってしまう。 にしても、これが『デート』ならいくらでもどんとこいって感じだ。いつものお買い物の延長みたいなものだから、この先も緊張せずに済みそうだ。「『いつものお出掛けと何が違うの?』って思ってるでしょ」 先ほど買ってもらった世界樹をモチーフにした飴細工を割り、聖獣達と分け合いながら食べていると、カラミタにそう訊かれた。「そうね」と正直に返すと、彼は気分を害する事なく微笑んだ。「ボクはいつだって、レラとのお出掛けはデート気分だったからね。そう大差が無いのは当然だよ」 そう言われて、すぐ腑に落ちた。幼い頃から毎日の様に『結婚しようね』と言われていたのだ。家族との買い出しですら、彼の中ではずっと特別だったのだろう。(……よく考えたら、買い物の時はいつもカラが隣に居て、セリン達はそれぞれ別の事をしていた気がするな) 思い返してみると、セリン達とカラミタでは行動がまるで違う。私への距離も、態度も。みんな人懐っこくて優しかったけれど、カラミタだけは昔からずっと変わらない。(って事は……昔から、ずっと?) 改めてそう認識すると、じわじわと彼の好意が実感として染みてくる。触れている箇所から伝わる体温、近い
اقرأ المزيد

【最終章・第8話】王城にて

 先程まではデート中だった二人だが、アリスター・クラウ・シルト王太子殿下からの招待により、レオノーラとカラミタは急遽王城に出向く事となった。「早く帰りたいし、もう転移魔法でパッと行こうか。レラの魔力借りるね」 いつ何時であろうともレオノーラといちゃこらしていたいカラミタがそう提案したが、レオノーラは即座に「待って!」と返した。「転移魔法でパッと移動しちゃったら、さっきの人達がまだ何処にも到着してないよね?聖獣の事が周知される前に、この子らと一緒に登城したらビックリさせちゃうんじゃないかな」 本心としては、『またごっそり魔力を持っていかれたら、その後が大変だ!』とレオノーラは思っている。だが言葉にするつもりは無い様だ。「……そっか。確かにそうだよね」 建前の言葉に納得したカラミタが一度頷き、「じゃあ、まずはさっきの続きを——」とレオノーラの頬に優しく触れる。同時に、とろんと瞳が蕩けだしたが、「そこまでの時間は無いと思うし、そもそも、此処は外だよ⁉︎」と慌てながら少し大きめの声でレオノーラがカラミタの行動を止めた。 彼は少しだけ拗ねた様な顔になり、「半分冗談だよ」と言って作り笑いを浮かべる。『じゃあ半分は本気だったって事か』と思ったが、レオノーラはそれも口には出さずにおいた。「さて、じゃあ、どうやって向かおうかな。徒歩じゃ流石にちょっと距離があるし、仕事終わりで人通りも増えてきたし。もうさくっと屋根でも伝って行く?」 「私はそこまで運動能力高くないよ?」 「やだなぁ、このままボクが抱えて行くに決まってるじゃないか」 カラミタがそう言うと同時に、レオノーラの肩の上を陣取っていた白猿が石床にトンッと飛び降り、次の瞬間には元のサイズにドンッと戻った。そして、まるで『じゃあ、背中に乗ってけよ』とでも言うみたいに彼らに背後を見せつつ体勢を低くする。そんな姿を見て二人は『……聖獣って、完全にこっちの言語を理解しているんじゃ?』と思った。 顔を見合わせ、「乗せてもらおうか」とカラミタが言う。「大丈夫かな、かなり目立つんじゃ?」と返したレオノーラは少し不安そうだ。 「ボクが運ぼうが目立つには目立つだろうから、そんなの誤差だよ。今後の事を考えると、むしろ沢山目立っておいた方がいいかもだし」 「何で?」とレオノーラが訊いたが、「その辺はまた後でね」と、この場
اقرأ المزيد

【最終章・第9話】応接室にて①

 若干パフォーマンス感のあったひとときを終え、レオノーラとカラミタの二人は無事王城内の王太子殿下の執務室に隣接している応接室に到着した。 王族御用達の薬師であるブラル達とはあの場で別れた。過去にレオノーラの薬の恩恵を受けた身ではないものの、箔付けの一環で彼らの輪の中にいたライゼが王太子殿下の応接室までの同行を買って出てくれた。 そんな彼を筆頭に、ほぼ身内ばかりの集まりだという事もあって、挨拶もそこそこに一同がソファーに座る。もちろんレオノーラの隣には隙間無くカラミタが占領している。『レラはボクの膝にすわっ——』と言いかけたカラミタの言葉は、顔も真っ赤にしたレオノーラにより即座に断られたせいか、少し不満そうだ。 テーブルを挟んだ対面の席には、彼らを招待したアリスター・クラウ・シルト王太子殿下と冒険者ギルドのギルドマスターであるライゼが腰掛けている。もちろん聖獣達はレオノーラの肩の上だ。「セリン達ももうすぐ来るよ。末弟が、育ての親を連れて街まで戻って来るってんで、今日の午後の分と明日の仕事は全てキャンセルしやがったからねぇ」と説明したのはライゼだった。 「各所にある転移魔法陣の使用申請まで出して、文字通り『飛んで帰ってくる』って話だったよ。まぁ……彼等は長年働き過ぎだったからね、このくらいは大目に見ないと、全員が無断で実家に帰ってしまいそうな勢いだったらしいから、即許可が降りたらしい。——にしても、いやぁ、まさか此処まで若い風貌の女性だとは思っていなかったから驚きだよ」 セリン達の近況をアリスターが追加し、続いて驚きの声をあげた。「立場上、レオノーラさんの御子息達とは全員面識があって、出会った当初からよく、育ての親の話を聞いてはいたけど、有能な面々を拾い、立派に育て上げた御人だから正直歴戦の猛者みたいな御仁か、もっとこう……風貌自体も御高齢の女性を想像していたんでね。『さすらいの薬売り』として一部では有名な子連れの女性は、常に目深にフードをかぶっていて年齢不詳でもあったからね。だからカラミタが育ての親でもある女性と『結婚する』と言い出した時には、そりゃもうどう反応していいのか迷ったんだが、この対面で色々納得したよ」と言ってアリスターが楽しそうに笑う。「こんなにも愛らしい雰囲気の女性なら、百五十以上もの年の差すら、どうでも良くなってしまうよね」 彼女が
اقرأ المزيد

【最終章・第10話】応接室にて②

「——さて、今後の方針をもう一つ話し合っておこうか」と言い、アリスターが軽く手を叩く。すると別室に控えていた者が一名、書類の束を持って彼の元へやって来た。それを受け取ったアリスターを見て、アイシャが眉間に皺を寄せて「……あぁー」とこぼしている。「側妃の話かぁ」 レオノーラには聞き慣れない言葉だ。「……そくひ?」と彼女が首を軽く傾げると、カラミタが「ボクが要求したものじゃないよ⁉︎」と慌てて即座に否定した。『カラは、私以外とも結婚するの?』と、一瞬でも思われたくないからだ。「その通り。なので、早とちりをして、勘違いしないで下さいね」(されようもんなら、このリストの女性達とその家族全員殺されてしまうからね) 以前アイシャ達が話していた事と丸々同じ事を考えながら、アリスターが苦笑いを浮かべてそう言い、書類をテーブルの上に置いて咳払いをした。「知っての通り、新たに『魔王』となった『カラミタ』の要求により、『和平の証』として『樹界のヒューマ族』である『レオノーラ』さんと、式はまだだけど、書類上では既にもう婚姻関係を結んだだろう? すると、前々から『和平の証だと言うのなら、各国からも妃を娶るべきだ』という巫山戯た意見が多くあがっているんだ。そもそもカラミタが激しく拒絶しているという大前提は当然全世界の要人達に伝えてはいるんだが、ヒトによっては複数の伴侶を持つ魔族もいたもんだから、『制度的な問題は無い』と判断した一部の者達が勝手に暴走して、側妃の候補者一覧表を我が国に送り付けてくるんだよ。……困った事に一部の女性達はもう、この城にまで来ている。挙式の日も近いから『正妃』を一目見ようという感じかな。そして『コレが相手ならば自分でもいける』と踏めば、彼女らが何をするやら……」 そう告げ、アリスターがそっと額を押さえる。 脳裏に先程レオノーラに心無い言葉を吐いていた女性達の姿が浮かび、カラミタが「あの女共か」とこぼし、猫被りを忘れてチッと舌打ちをした。「当然、ウチらは『カラミタはそんなもん同意しないよ』って何度も突っぱねたんだけどね、利権狙いの奴らは引かず、このまま強引に押し進めていこうとしてるんだよねぇ。既成事実を作ろうと部屋に侵入したり、私物を掻っ攫って魔法による精神操作を狙ったりと、あの手この手ともうウザ過ぎーっ!」 カラミタの横に陣取ったアイシャが、きち
اقرأ المزيد

【最終章・第11話】応接室にて③

「アイツ等が、いくら断っても全然引いてくれないのってさぁ、貴族には、血統主義の奴等が多いせいだよねぇ」 アイシャの発言を受け、アリスターも「そうなんだ。往々にして、生まれへの不満があがりそうな場合は、まず貴族の養子になってもらってから婚姻を結ぶ場合が多い。だが今回の場合は天文学的な収益を伴う利権を狙っての話だから、その手を使おうが『その血統だけでは、“王”の伴侶には相応しくない』と不満を言う事が目に見えているんだよね」と私見を述べた。「そう、なんですね」 スラム街出身である事を恥じた事はないが、足枷にしかならない事は理解出来る。だけど長年浮世離れした生活を送ってきたせいか、血筋云々を個々の気持ち以上に優先せよと、他人に言われるのは納得がいかない。 でも、それを言ってもいいのか悪いのか。子供らだけの状況であれば平気で口にしただろうが、王族であるアリスターを前にすると、レオノーラはわからなくなって口をつぐんだ。「でね、向こうが、『色狂い』だなんだと噂を立てて、普通なら有り得ない人数の『側妃』を迎え入れる流れを意地でも作ろうってんなら、こっちも攻勢に打って出ようかと思うんだが、どう思う?」 「まぁ、このまま断り続けるだけじゃ何も変わんないもんね。挙式への乱入は日程的に防げるだろうけど、世論や民衆を操作された事で発生する数の暴力的な流れってのも、そうそう無視出来ないし」 アリスターに訊かれ、アイシャがそう返した。「さっきの、薬師を筆頭とした一団は、どうせそれの一環だったんだろう?」 「流石、カラミタはとっくに気付いていたか。まぁ、結構あからさまだったもんね。だけど私は、『恩人に会えそうだけど、どうする?』程度しか伝えてないよ。あれだけの人数が集まったのも、全員本人達の希望さ。まぁ、一応、かなりの人数には諦めてもらったんだけどね」とアリスターが言う。 レオノーラの作った回復薬の効果は絶大だ。 その製法は無駄だらけな自己流ではあるものの、世界樹の恩恵を受けた素材のみで作っているのだから納得である。 彼女が作った薬の存在は、薬師達や支配階級の者達の間では相当有名ではある。だが希少が故に、王族や
اقرأ المزيد

【最終章・第12話】二人の結婚式・前編

 最終的な準備に追われつつ、日々は流れてカラミタとレオノーラの結婚式を挙げる日となった。 カラミタからの強い要望により、この結婚は『樹界』と『外界(外輪界)』との『和平の証』の意味合いを持つ結婚でもある為、彼等の挙式は国をあげての大規模なものとなる。 主要各国の教会にはマリオネット型の魔導具が配置され、その人形達には二人の挙式の様子が投影される予定だ。人形は投影された動きに合わせ、まるでその場に居るかの様に振る舞う。 だが教会の数も広さも限界があるので、参列出来ない多くの者達の為に広場や目抜通りなどには巨大な投影鏡を設置して式の様子を映し出す事になった。それらの魔導具を開発、そして有り余る財産を惜しみなく使って各国に寄贈したのはもちろんアイシャだ。以前から彼の名は『錬金術師』として広く知られていたが、この一件で今度は『稀代の魔導具師』としてもその名を轟かす事になるだろう。 どの国でも教会や投影鏡の設置付近はどこもお祭り騒ぎで、シルト王国の王都・ラウシュベルも花やリボン、風船などといった物で街中が飾られ、雪の結晶や紙吹雪の様に見える光が魔法によって舞い散り続け、愛らしい雰囲気に染まっている。 挙式には『聖獣も式に参列する』という噂があるからか、商魂逞しい商人達が販売している『聖獣ぬいぐるみ』や聖獣を形取った白い飴などといった聖獣関連商品は、ただ白く作っているだけにもかかわらず、飛ぶように売れているそうだ。 実際に結婚式を挙げる教会は王城内にあるものを使用する事になった。本来ならば王族関連の式典でしか使用出来ないのだが、この挙式が『和平の証』でもあり、カラミタが『魔王』である点や、レオノーラが『世界樹の後継者』である可能性をより匂わせるには、特別待遇をした方が良いとの判断で国王があっさりと許可した。 引退後であっても、当然頻度はかなり激減するが、今後もセリンが協力するという約束を取り付けたおかげで、聖女信仰と世界樹信仰、双方の高位神官達を全て味方に付け、『自称・側妃候補』達が教会側を買収して紛れ込む可能性を完全に排除した。そしてより守りを完璧にする為にテオノードルの伝手で騎士団や冒険者達による警備も各所に並んでいる。 そもそも本会場となる
اقرأ المزيد

【最終章・第13話】二人の結婚式・後編(レオノーラ・談)

 今、私の目の前には現実味の無い光景が広がっている。 ——いつも薄暗くて、常に危険で、個々の尊厳なんか少しも無く、寒いしボロボロだし汚らしい場所で生まれ育って。奴隷商人達に売られるのが怖くなって生まれ育った場所から逃げて。偶然行き着いた世界樹なんてモノの側でずっと暮らしてきた自分が、王城の敷地内にある教会の中を歩いているだなんて……当事者のくせして、全然ピンとこない。 白を基調とした上品な室内はどこもかしこも綺麗に磨き上がっていて、聖域然と美しく、世界樹を模して造られたステンドグラスから差し込んでくる光は宝石みたいにキラキラと優しく輝いている。中央に敷かれた真っ赤な絨毯の両サイドに並ぶ木製のベンチには、どう見たって高位貴族ばかりが並び座り、皆が揃ってこちらに顔を向けてきているが、その視線が何を語っているのかは白いベールと緊張のせいか全く読めない。 室内仕様で程よいサイズになっている聖獣・白猿、白ヤモリの二体が私達を先導し、その中央には誘導&監視役としてテオドールが。挙式では、基本的に父親が花婿に花嫁を手ずから引き渡すのが通例らしいのだが、私には父がいない。なので、父親代わりとして長男・セリンが私の手を取ってくれ、頭を覆っている長いレースのベールの裾は、後ろに続いているリトスとアイシャが持ってくれている。 ゆっくりゆっくりと、一歩ずつ。ドレスを踏まないよう気を付けつつ、一歩一歩を噛み締めながら、正面で待つカラミタの元に向かう。その間に各国の代表として来ている王族や皇族達まで私の視界に入り、緊張度がより高まってきた。(こ、ここここ、こんな、全然見知らぬ平民の挙式に参列させてしまって申し訳ないですっ!) 自尊心を満たしたり、感謝感激するよりも、こっちの気持ちの方が遥かに強い。そのせいか申し訳なさでちょっと泣きそうになってきた。「……大丈夫ですか? 母さん」 人様の感情に敏感なセリンに心配されてしまった。「大丈夫」とすぐに小声で返したが、多分聴力に優れているカラミタにはこのやり取りが聞こえたのだろう。今にもこちらに駆け寄って来てしまいそうな顔でこちらをじっと見ている。(実は体調が悪いとか、カラとの挙式が嫌だとか
اقرأ المزيد
السابق
123456
امسح الكود للقراءة على التطبيق
DMCA.com Protection Status